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動きやすい格好に着替え、サラと一緒に演習場まで来た。
この演習場は、王宮の一角にあるのだ。

──さて、どこに行けばいいのやら。

「セルヴィロ嬢!!」

「オルランディ様」

キョロキョロ辺りを見回していると、ジルベルトが走ってきた。

「わざわざ、すまなかったな」

「いいえ、お誘いただきありがとうございます」

「急で悪いとは思ったが、どうしても手合わせしてみたくてな」

本当に急だったな。
まぁ、来てしまったからには、とことんやろうじゃないか。

「いえ、私もオルランディ様とは、手合わせしてみたかったので楽しみです」

「私の事はジルベルトと呼んでくれ。ミレーナと呼んでも?」

「ええ。ジルベルト様」

「では、行こう。あちらだ」

ジルベルトの後をついて行くと、剣の当たる音が響く。

「今ちょうど、騎士達が剣の練習をしている所だ」

ほぉ。生で見ると迫力が違うなぁ。
ん?あの前で指揮してるのは……。

「ミレーナ様!団長様です!」

サラが小声で興奮しながら伝えてきた。

──やっぱり貫禄が違う。

「素敵です!まさかこんな間近で拝見できるなんて……!」

サラはもうほっておこう。

「セルヴィロ嬢、真剣では危険だ。これを使おう」

「うわっ!」

ポイッと投げ渡されたのは木製の剣。
なるほど、木刀のようだ。
これなら馴染みやすい。

「では!参る!」

「ええ。どこからでも」

ジルベルトが構える。
そして、勢いをつけて向かってくる。

ガツンッ!!
ガン!

「やはり、なかなかやるな」

「いえいえ、ジルベルト様が本気を出していないだけです」

やるなら本気で来い!
手を抜かれるのが一番嫌いなんだ!

「ふっ、令嬢にしとくのは勿体ないな」

言いたいことが伝わったのか、動きが変わった。

「はっ!!」

ガツンッ!!

「ほう?これを受け止めるか……」

やばかったな。

「次は私から行かせてもらいますよ?」

ガツッ!!

「こちらですよ」

「なにっ!?」

一振目はジルベルトの背後に回る為のフェイク。

ガツンッ!!!

「あら?残念……」

さすがジルベルト。防いだか。

「結構、焦ったぞ」

「ふふっ、まだ行きますよ?」

「こい!!」

しばらくジルベルトとの打ち合いが続いたが、決着はつかなかった。

「あはははは!思った以上のご令嬢だな!」

「……父上!!」

ジルベルトと一緒に地べたに座り込んでいたら、団長に声をかけられた。

「団長様!!この様な格好で申し訳ありません!」

「構わん構わん!!しかし、驚いた。セルヴィロ嬢の剣の腕前は騎士並だと聞いていたが、それ以上の素質がある」

「そんな事はありません」

「いや、木製の剣だがそれなりの重さはある。それを容易く扱えるとは、なかなかだ」

すまん。木刀は使い慣れているんだ。
剣よりこちらの方が使いやすいぐらいだ。

「セルヴィロ嬢、よければうちの息子の嫁に来ないか?」

「父上!?」

勘弁してくれ!!
ジルベルトはカナリヤに恋心を抱くんだ。
そして、儚くも砕け散る。
その失恋を糧に、騎士の頂上を目指す。
努力の末、団長まで上り詰め王妃となったカナリヤを守ってくのだ。

「大変嬉しいお言葉ですが、ジルベルト様には私よりも相応しい方がいられると思います」

「そうか?残念だ。娘に欲しかったんだがな。まぁ、これからもジルベルトと仲良くしてくれ!」

「はい。こちらこそ」

──ああ、焦った。

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