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episode.31
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ハアハアハア……
(何が起こってるの!?)
現在ベルベットは森の中を全力で駆けていた。
息を切らしながら必死に足を動かしているが、前日降った雨で地面がぬかるみ思うように走れず中々距離が取れない。
一体何故このような状況になっているのか……
ベルベットらは荷物を運んでくれるヨルグと共に山に入ったが、もうすぐで我が家に着くという所で襲撃者が現れた。
いち早く気が付いたヨルグがベルベットを庇ってくれたので最悪の事態にはならなかったが、その時点で標的がベルベットだと判明。
「ベル!!こいつら素人じゃない!!」
『我らが気を引く!!その隙に逃げろ!!』
珍しく鬼気迫る顔を見せたリアムに只事ではないとすぐに分かったが、足が竦んで動けない。だが、その様子を察したネリーが素早くベルベットの手を取り駆けだした。
「ネリー!!」
「今は余計なことを考えている暇はありません!!逃げる事だけを考えてください!!」
ネリーに手を引かれて森の中を無我夢中で走っていたが、リアムとヨルグをすり抜けた者が追ってきた。
その手のプロが女二人に撒かれるはずもなく、あっという間に距離を詰められた。
(相手の狙いが私なら、私が囮になればネリーを逃がせれる)
ベルベットは自信を囮にしてネリーを逃がそうと考えたが、行動に移す前にベルベットは思いっきり背中を押された。
「お嬢様。絶対に生き延びてください……大好きです!!」
今までで一番いい笑顔を向けたネリーと目が合った。
「え?」と思っていると、体はフワッと言う浮遊感に覆われた。
そこは飛び降りても大きな怪我をしない程度の緩やかな崖になっていて、ネリーはそれを知っていてベルベットを守る為に取った行動だった。
ザザザッと崖を転がり落ちたが、かすり傷程度で済んだ。
ベルベットは涙で滲む目を擦りパンッと頬を叩くと、その場から駆け出した。
本当はネリーを助けに行きたい。けど、ここで戻ったらネリーの決意を無駄にする事になる。それだけはやってはいけない。
それに、リアムがきっとすぐに来てくれる。それなら自分が今出来ることをやるだけ。
ベルベットは一切振り返らず、前だけを見て走った。
◈◈◈
どれぐらい走っただろうか……ベルベットは疲れ果て、大きな木の幹に空いた穴の中にいた。
膝を抱え必死に涙を堪えるが、瞳に溜まった涙はそう簡単には収まらず、みるみるうちに流れ出た。
そうなると、感情までも止まらなくなる。
(ネリー、ネリー、ネリー……)
思うのは自分を庇って囮となった侍女のことばかり。
どうか無事でいてと強く手を握り、祈ることしか出来ない自分の不甲斐なさに、また涙が溢れる。
こんな事になるならシナリオ通りに進めば良かったと今更ながらに後悔していた。そんな時──
カサッ……
人の気配を感じ、今まで溢れていた涙が止まった。
恐怖はある。けれど、このままでまた誰かが傷付くぐらいなら命は惜しくない。
(……ネリー、ごめんね……)
ネリーとの約束は果たせそうにないと心の中の中で謝罪し、近付く気配にギュッと目を閉じた。
「──もしかして、ベルベット嬢か?」
自身の名を呼ばれ顔を上げると、そこにはジェフリーが穴を覗き込んでいた。
「じぇ、ジェフリー団長……?」
ジェフリーの顔を見て安心したのと同時に、涙が崩壊して絶え間なく流れた。
「なっ!?ど、どうした!?」
自然とジェフリーの腕の中に自分から収まっており驚きと戸惑いで、どうしていいのか分からなくなっていた。
「とりあえず落ち着け。ゆっくりでいい、何があったのか教えてくれ」
腕の中のベルベットを優しく包み、宥めるように頭を撫でながら言うジェフリーの暖かな温もりと耳に伝わる心音が不思議と心地よく、次第に落ち着きを取り戻した。
今は攻略対象だからとか悪役令嬢だからとか、どうのこうの言ってられない。この人ならきっとネリーを助けてくれる。
ベルベットは深く息を吐くと、今までの経緯をジェフリーに話して聞かせた。リアムとヨルグはある程度の実力はあるが、ネリーはただの侍女だからと助けを求めた。
「お願いします!!ネリーを……私の大切な人を助けてください!!」
ぬかるんだ地面に額をつけ土下座で頼み込む。顔が汚れようが、洋服が汚れようが関係ない。
ジェフリーは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに顔を上げるように言った。
「話は分かった。……だが、こちらから出向かわなくともあちらから来てくれたようだ」
ベルベットの額に付いた泥を拭い抱き起こすと、自信の背に庇い鋭い視線で前を見据えている。
すると、カサッと木の陰から一人の男が現れた。
全身黒の装いで口元も黒い布で覆われているが、右頬に大きな傷が特長的だった。
「……お前は何者だ?」
「………………」
ジェフリーが剣を抜きながら問いかけるが、男からの返事は無い。ただ、分かっているのは明確な殺意のみ。
「力ずくで聞くしかないようだな」
その言葉が合図のように、二人は同時に飛びかかった。
(何が起こってるの!?)
現在ベルベットは森の中を全力で駆けていた。
息を切らしながら必死に足を動かしているが、前日降った雨で地面がぬかるみ思うように走れず中々距離が取れない。
一体何故このような状況になっているのか……
ベルベットらは荷物を運んでくれるヨルグと共に山に入ったが、もうすぐで我が家に着くという所で襲撃者が現れた。
いち早く気が付いたヨルグがベルベットを庇ってくれたので最悪の事態にはならなかったが、その時点で標的がベルベットだと判明。
「ベル!!こいつら素人じゃない!!」
『我らが気を引く!!その隙に逃げろ!!』
珍しく鬼気迫る顔を見せたリアムに只事ではないとすぐに分かったが、足が竦んで動けない。だが、その様子を察したネリーが素早くベルベットの手を取り駆けだした。
「ネリー!!」
「今は余計なことを考えている暇はありません!!逃げる事だけを考えてください!!」
ネリーに手を引かれて森の中を無我夢中で走っていたが、リアムとヨルグをすり抜けた者が追ってきた。
その手のプロが女二人に撒かれるはずもなく、あっという間に距離を詰められた。
(相手の狙いが私なら、私が囮になればネリーを逃がせれる)
ベルベットは自信を囮にしてネリーを逃がそうと考えたが、行動に移す前にベルベットは思いっきり背中を押された。
「お嬢様。絶対に生き延びてください……大好きです!!」
今までで一番いい笑顔を向けたネリーと目が合った。
「え?」と思っていると、体はフワッと言う浮遊感に覆われた。
そこは飛び降りても大きな怪我をしない程度の緩やかな崖になっていて、ネリーはそれを知っていてベルベットを守る為に取った行動だった。
ザザザッと崖を転がり落ちたが、かすり傷程度で済んだ。
ベルベットは涙で滲む目を擦りパンッと頬を叩くと、その場から駆け出した。
本当はネリーを助けに行きたい。けど、ここで戻ったらネリーの決意を無駄にする事になる。それだけはやってはいけない。
それに、リアムがきっとすぐに来てくれる。それなら自分が今出来ることをやるだけ。
ベルベットは一切振り返らず、前だけを見て走った。
◈◈◈
どれぐらい走っただろうか……ベルベットは疲れ果て、大きな木の幹に空いた穴の中にいた。
膝を抱え必死に涙を堪えるが、瞳に溜まった涙はそう簡単には収まらず、みるみるうちに流れ出た。
そうなると、感情までも止まらなくなる。
(ネリー、ネリー、ネリー……)
思うのは自分を庇って囮となった侍女のことばかり。
どうか無事でいてと強く手を握り、祈ることしか出来ない自分の不甲斐なさに、また涙が溢れる。
こんな事になるならシナリオ通りに進めば良かったと今更ながらに後悔していた。そんな時──
カサッ……
人の気配を感じ、今まで溢れていた涙が止まった。
恐怖はある。けれど、このままでまた誰かが傷付くぐらいなら命は惜しくない。
(……ネリー、ごめんね……)
ネリーとの約束は果たせそうにないと心の中の中で謝罪し、近付く気配にギュッと目を閉じた。
「──もしかして、ベルベット嬢か?」
自身の名を呼ばれ顔を上げると、そこにはジェフリーが穴を覗き込んでいた。
「じぇ、ジェフリー団長……?」
ジェフリーの顔を見て安心したのと同時に、涙が崩壊して絶え間なく流れた。
「なっ!?ど、どうした!?」
自然とジェフリーの腕の中に自分から収まっており驚きと戸惑いで、どうしていいのか分からなくなっていた。
「とりあえず落ち着け。ゆっくりでいい、何があったのか教えてくれ」
腕の中のベルベットを優しく包み、宥めるように頭を撫でながら言うジェフリーの暖かな温もりと耳に伝わる心音が不思議と心地よく、次第に落ち着きを取り戻した。
今は攻略対象だからとか悪役令嬢だからとか、どうのこうの言ってられない。この人ならきっとネリーを助けてくれる。
ベルベットは深く息を吐くと、今までの経緯をジェフリーに話して聞かせた。リアムとヨルグはある程度の実力はあるが、ネリーはただの侍女だからと助けを求めた。
「お願いします!!ネリーを……私の大切な人を助けてください!!」
ぬかるんだ地面に額をつけ土下座で頼み込む。顔が汚れようが、洋服が汚れようが関係ない。
ジェフリーは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに顔を上げるように言った。
「話は分かった。……だが、こちらから出向かわなくともあちらから来てくれたようだ」
ベルベットの額に付いた泥を拭い抱き起こすと、自信の背に庇い鋭い視線で前を見据えている。
すると、カサッと木の陰から一人の男が現れた。
全身黒の装いで口元も黒い布で覆われているが、右頬に大きな傷が特長的だった。
「……お前は何者だ?」
「………………」
ジェフリーが剣を抜きながら問いかけるが、男からの返事は無い。ただ、分かっているのは明確な殺意のみ。
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その言葉が合図のように、二人は同時に飛びかかった。
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