後悔 「あるゲイの回想」短編集

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第7話 「初めての男(後半)」

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僕はHと土曜日の夜、新宿二丁目の店で会った後、彼の車に乗って横浜市三ツ境にある彼の家に泊まりにいくようになった。
自然と僕とHは付き合いを始めた格好になった。
僕にとっては何もかも初体験の連続だった。

一緒に住んでいる友達のKからは

「あんた、歳が12歳も離れている男でいいの?」

と言われたが、初体験の相手に嵌ってしまうのは今考えても仕方がないことだった。

HはSEXで僕にバックを求めるようになった。
もちろん、これも初体験である。
彼は僕のケツ穴にワセリンを塗って

『力を抜いて』

と言いながら彼のチンポを挿入してきた。
意外にも割とすんなり僕は彼のチンポを受け入れた。
彼はいつも僕のケツに中出しした。
彼が僕のケツの中で射精する時、その感覚も覚えた。
彼が僕のケツにチンポを入れていると、僕と彼が一つになった感じがして嫌ではなかった。
ロマンも何もないかもしれないが、彼のチンポのサイズが小さめだったので、難なく受け止められたんだと、複数の男と経験する中で気付いた。

その頃の僕は本当に彼しか見えなかった。
キスから始まってアナルSEXまで一気に経験したんだから無理もなかったかなと思う。

そのうち、土曜日だけでなく、平日も僕は三ツ境に通い始めた。
初めて付き合う男。

『T君の両親の所に行ってT君をお嫁さんにくださいって言おうかな』

とか言われたら、純情だった僕は、ますます彼に嵌っていった。

僕が大学の休みに帰省した時は、京都駅で待ち合わせて2人で旅行に行ったりもした。

「みんな、僕の友達のKのことを好きになるけどHはどうして僕なの?」

とHに聞いたことがある。

『僕はTの方が可愛いと思うし好きだよ』

とも言われた。幸せだった。

でもある日、いつものように僕が三ツ境の彼の家に泊まりに行っていた時、彼に電話がかかってきた。
彼は、これから出かけると言う。

「Tはいつでも会えるでしょ?この友達はなかなか会えないから留守番してて」

と言われた。

せっかく泊まりに来てるのに、と思ったが、Hは出かけて行った。
その夜は帰ってこなかった。
次の日、僕は彼の部屋を綺麗に掃除して一人で帰った。

どういう経緯でHが会いに行った相手のことを知ったのか、思い出せないんだけど、Hが僕と同進行で付き合っていた男だと言うことを知った。

すごいショックだった。
Hは僕と、その彼を二股かけてたの?
信じられなかった。
しかも僕が彼に会いに来ている時に、相手の方を選んで、僕を一晩中置き去りにしたことも悲しかった。

僕には、初めての男で、何もかも初体験だったし、恋の駆け引きなんて、そんなもの知らなかった。
僕が彼に没頭し過ぎたのが間違いだったのかもと思った。

もう少し、らしたりとかできれば良かったのかなと思った。

ゲイ友のKがよくやっていることだ。

僕は、大学の長期休暇で帰省して、ゆっくり考えてみた。
そして自分から別れようと決心した。
長期休暇が終わり、東京に戻って、Hに電話した。

「もう会いに行かない」

こうして僕とHは別れた。
これ自体は後悔していない。
ただゲイの世界を知らなかったことを後悔した。
純情過ぎた自分に対して後悔した。
僕は彼に自分の弱みを見せすぎた。
こいつは何をしても俺のことが好きだから大丈夫だと思わせてしまったことに後悔した。

でも、不特定多数の男を求めるゲイの本性を学ばせてもらったいい経験だった。
結局、僕も、その中の一人だったから。
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