後悔 「あるゲイの回想」短編集

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第5話 「新宿二丁目」

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大学3年生、僕が20歳になった時、高校時代のゲイ友達K君が僕の部屋に転がり込んできた。
1DKの狭い部屋だったのでプライバシーも何もなかった。

K君が「部屋を見つけるまでお願い」と言うので優柔不断な僕は受け入れた。

結局1年近く、狭い部屋での同居生活が始まった。

K君は1浪していて、大学1年の時は東京以外のキャンパスの寮に入っていたので、同じ20歳だったが大学2年生だった。
まもなく彼は男の話を始めた。
大学1年生の時は寮でノンケの男を誘惑しまくったことや、時々東京に来て遊んでいたことなどだった。

「○○は2年間東京で暮らしてて、何か面白いことあった?」

と聞くので「宇宙館に入ろうと思ったけど勇気がなかった」

等を話した。

K君は「2年間ももったいない。新宿二丁目に連れて行ってあげる」

と僕に言った。

「新宿二丁目では本名を隠したほうが良いよ。僕はKって名前にしてる。○○はどうする?」

と聞くので、何も分からない僕は、当時好きだった歌手の名前を出して

「Tとかどうかな?」

と言うと「いいんじゃない」と言うので

それから2人はプライベートでも「K」「T」と呼び合うようになった。

新宿二丁目と言うゲイタウンがあることは雑誌を見て知っていた。
でも、怖くて行けなかった。
システムも分からなかったし。

当時の二丁目は今より女性が少ないと言うか、殆どいなかった。

土曜日、僕はKに連れられて、初めて新宿二丁目に行った。
同郷の友達のKは高校時代からノンケの同級生を誘惑するほど積極的な子だったので、二丁目でもたくさんの友達がいた。

僕もKに「幼馴染のTって言うの、よろしくね」

と紹介してもらったけど、何もかも初めての世界で、内向的な僕は、ますます内気になった。

友達のKは女の子のように可愛い子だったので、次から次へと違う男が寄ってきていた。
僕は、ぽつんと一人取り残された。
誰も僕には寄ってこなかったし、勿論こっちから誰かに声をかけることもできなかった。

周りのゲイたちは皆、おしゃれをして楽しそうに話をしながら、いい男がいないかどうか目をぎらぎらさせているのが、よく分かった。
Kも僕をほったらかしにして複数の男とおしゃべりしていた。

こんな世界見たことないと思いながらも、僕は女性的な口調でしゃべっている人たちの中に入っていけなかった。
むしろ嫌悪感さえ感じた。
言われる「おねえ言葉」と呼ばれるもので、男のくせになんてなよなよしているんだと当時は思っていた。
でも、目の前で何組かの男たちは意気投合し、どこかへ消えていった。

Kが「待ってるだけじゃ、できるものもできないよ」

と言うが、初めての場所で、そんなことできる訳ねえだろうがと思っていた。
着飾った男たちの中で、きっと僕はダサいと思われているんだろうなとか卑屈になっていった。
これが僕の一番悪いところだ。
人は人、自分は自分と、今考えれば当然のことが20歳の僕には分からなかった。

もう少し上手く立ち回ることができていたら、少しでもこっちから話をすることができていたら、新宿二丁目に初めて行った日に、あんなに惨めに思うこともなかったのにと後悔している。

性格とは言え「あんたを見てると情けなくて腹が立つ」とKから言われて当然だと思った。

高校時代、意地の悪かったKが、せっかく僕をゲイの世界に連れてきてくれたのに、後は自分で行動するのが当然なのに、なかなかできなかった。

後悔と言うより自分に腹が立って呆れ果てた夜だった。
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