後悔 「あるゲイの回想」短編集

ryuuza

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第1話「宇宙館」

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僕は田舎から大学に通うため、東京に出てきた。

僕自身がゲイであることは、高校生の頃、自覚した。
相手はノンケだったけど、とにかく好きになった同級生がいた。
テニス部に入っていて、日に焼けた体と可愛い顔が魅力的だった。
誰も行かないテニスの試合に、彼を見るためだけに行ったこともあった。
だけど、彼はノンケだったし、内向的な僕は、友達にはなれたけど、彼の多くの友達の一人にしか過ぎなかった。
もちろん告白することなど、到底できなかった。

東京での一人暮らしが始まった。18歳だった。
大学に通いながら、僕もテニス部に入部したりして(結局すぐやめたが)、まだ高校時代の片思いの彼を追っていた。
まだSNSもなかった頃だった。
大学生活は楽しかったけど、まだ僕は男性経験もなく、悶々とした毎日を送っていた。

大学2年生になった頃、本屋で、ゲイの雑誌があることを知った。
この頃の僕は、男性同士のSEXの仕方も、良く知らなかった。
雑誌を本屋で買う時もドキドキしたし、買ってから家で雑誌を開いてみて、そのグラビアの男性のセミヌードの写真を見るだけで興奮してチンポが勃起した。

この頃の僕は性処理としてオナニーをしていた。
僕はオナニー自体は覚えるのが早く小学校5年生くらいには覚えていた。
でも、高校時代に好きだったテニス部の彼を思い出してオナニーすることは絶対なかった。
僕の中でオナニーは卑しいもので、彼をおかずにしてオナニーすることは、彼に対する僕の気持ちを侮辱するような気がして、絶対しなかったのである。
何も知らない、いわゆるムッツリすけべだった。

ゲイ雑誌に今の出会い系アプリに相当する雑誌に投稿して相手を見つけると言うコーナー(投稿欄)もあったが、僕は怖くて手が出せなかった。
それに自分に自信がなかった。
僕は、いわゆる文科系で体もスリムだった。顔は人それぞれ好みが違うから何とも言えないが、とにかく当時は自分に自信が全くなかった。

後で考えれば、そう言えば中学、高校と、結構好きだと言ってくれる女の子はいたし、ゲイの世界に入って見て、もちろん皆自分のタイプがあるから一概には言えないけど、スリムな青年が好みの人には自分で言うのもなんだが、結構モテた。
でも当時は本当に何も知らないと言うか、知ろうとする勇気もなかった。

そんな折、ゲイ雑誌の一つの広告が目に入った。

「宇宙館」

『○月○日○時から「宇宙館」でゲイ映画の上映会をします。入場料は○○円です。皆さんのお越しをお待ちしています』

場所は世田谷区のある場所だった。

「行ってみようか?」

僕は生まれて初めて、ゲイ関係で、少し前向きになった。

当日、僕は「宇宙館」の近くまで来た。
入ろうか、やっぱりやめようか、怖い気もするし、どうしようか。
「宇宙館」の近くで隠れて見ていると、それらしき男性が次々と入っていくのが見えた。

「入ろう」

そう思っては、実際足が動かない、これを何回も繰り返した。
とうに上映時間を過ぎていた。

内気な僕は、ついに中に入る勇気を出せなかった。
結局「宇宙館」には入らず、電車に乗って誰もいない一人暮らしの部屋に帰った。

もし、あの時、勇気を出して「宇宙館」に入っていたら、まだ10代で可愛かった僕(若い時は誰だって輝いている)には、きっと今と違った人生が待っていたかもしれない。

それは、今となっては、どうすることもできない、僕の後悔の一つとなった。
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