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SuperHero準「乳首が感じるSuperHero物語」 第50話

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2月も半ばを迎えていた。

突然地球防衛軍の全面スクリーンに冥王星のマッチョ星人隼人が現れた。
動揺する防衛軍内部。
スクリーンを通じてマッチョ星人は、伊川と西山を一週間以内に帰還させないと地球に総攻撃を仕掛けると警告してきた。
この映像は街中のスクリーンにも現れ、一般人の知るところとなった。

「伊川隊長と西山隊員の帰還ってどういうこと?
どこに行ってるの?」

「二人を帰還させれば攻撃しないと言ってるぞ」

これはニュースでもトップで取り上げられた。


近藤危機管理庁長官が伊川秀彦議員を尋ねた。

「伊川先生、ここまで広まってしまっては、二人をタイに滞在させるのは困難です。
たとえこの条件が罠だとしても、二人を日本に戻さないと世論が黙っていません」

秀彦も

「致し方ない。
息子弘二は、これを恐れて身を隠したのだろうが、日本に呼び戻すしか手がないようだ。
すぐに外務省に私から連絡する」

もう父親、秀彦にもどうしようもなかった。
ただ、この隼人王の行動は、宇宙連合からも許可されたもので、単なる脅しだった。
万が一、二人が帰国しなかったとしても、地球に手は出さないと約束しての行動だったが、地球人には、分かるはずもなかった。


タイ、ウドンターニー郊外。

西山準がホースを持って庭の芝生に水やりをしていた。
そこに伊川がやってきたので、西山はふざけて伊川に水をかけた。

「こら、西山、やめろ、あとでお仕置きしてやるぞ」

急に西山がホースから手を離し、震え出した。
伊川は

「あっ」

と思った。

このセリフはマッチョ星人隼人のセリフだった。
ここから西山への拷問が始まったのだった。
伊川は慌てて西山の元へ駆け寄り、西山をきつく抱きしめた。

「ごめん、西山、本当にごめん、俺が悪かった。
こんなに好きなのに、ごめん、西山」


その時、タイ警察の車が数台、家の周りに止まり、警官たちがやってきた。
日本大使館の大使もいた。

「伊川さん、すまないが、二人とも日本に強制送還になった。
抵抗しないでほしい」

伊川は

「え?」

と耳を疑った。

日本に向かう飛行機には大使も同行し、伊川と西山に事情を詳しく説明した。
西山が心配して伊川を見ると、伊川は何も言わず目を閉じて、涙を流していた。

わずか一カ月半の西山との二人だけの生活だった。
西山はセブンとエースが来た日から、今日のような日が来ることを覚悟していた。

「弘二は青天の霹靂だよね。弘二、心配しないで。
俺が最後まで弘二を守るよ」

西山は心に誓っていた。


翌日朝、飛行機は成田空港に到着した。
羽田よりも成田の方が、マスコミを撒き易かったからである。
二人は成田より専用ヘリコプターで地球防衛軍本部に到着した。

防衛軍内に二人に関する緘口令が敷かれ、当分接触も禁止された。
二人は別々の部屋に案内されたが、伊川が暴れ出した。

「西山には何も聞かないでください。お願いします。
全て私が話します。どうしても聞きたいなら同席でお願いします」

言葉は丁寧だったが口調はまるで脅しているような凄味だった。
幹部は同席を許した。
西山が伊川のいる部屋に入ってきた。
二人は並んで座った。

「皆さんはマッチョ星人のことを、まるで分っていません。
星人の言葉は単なる脅しです」

「しかしねえ、伊川隊長。
なぜマッチョ星人は休暇を取っている君たちを現場復帰させよと脅してきたのかね」

西山が発言した。

「俺のせいです」

伊川が大声で

「お前は黙ってろ」

と西山に怒鳴りつけた。

「いや隊長、言わせてください。
マッチョ星人は正確にはSuperHero準に帰って来いと言ったのだと思います。
SuperHero準とマッチョ星人は因縁の仲です」

「西山!黙れと言ってるだろ!」

伊川は西山の顔を殴った。
西山は椅子から転げ落ちた。

「暴力はやめたまえ、伊川隊長」

伊川は、はっと我に返ったように、口を切って血を出して床に呆然と座っている西山に

「西山、すまん」

と言って西山の体を起こし椅子に座らせた。

「実際マッチョ星人と闘っている自分が言うのだから間違いありません。
マッチョ星人は地球を襲う異星人の中でも一番の強敵です。
バリア内ではSuperHero準が劣勢に立つことも多々あります」

「嘘です。信じないでください。
こいつはSuperHeroに変身してからの記憶はありません」

「伊川隊長」

「私が、この伊川が、マッチョ星人に襲われたのです。
それで怖くなって西山隊員を連れて逃げたんです。
申し訳ありませんでした」

伊川は椅子から離れ、床に土下座した。
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