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SuperHero準「乳首が感じるSuperHero物語」 第44話

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伊川と西山は就労ビザを持っていた。
伊川の母良子が見送りにきていた。
西山が

「先日はご挨拶もできず、失礼いたしました」

と頭を下げた。

「そんなこと気にしないで。西山君、息子をよろしくね」

「は、命を懸けてお守りいたします」

「いやだ、大袈裟だこと」

「母さん、人目につくから、もう行きます。
今日まで色々ありがとうございました」

「お礼なら、帰ってからお父さまにきちんと言いなさい。
全てお父さまが準備して下さったのよ」

「はい、そうします」

「あ、その時、お付き合いしてる女の人に会わせてくれるのよね。
楽しみだわ」

西山は

「え?」

と訝し気に伊川を見た。伊川は気まずそうだった。


二人はVIP室に案内された。
そこでチェックインも何もかも、外務省の職員が行っていた。
西山は目を丸くして

「弘二、何なの?これ」

「西山は黙って俺について来ればいい」

「それとさっきの弘二のお母さんの話は何?
付き合ってる女の人って誰?」

西山は一番引っ掛かっていることを伊川弘二に聞いた。

「付き合っている人?女じゃないよ。
準、お前のことだ」

「俺?弘二、何考えてるの?さっぱり分からないよ」

VIPラウンジには豪華な料理が並んでいた。

「うわ。弘二、食べてきてもいい?」

「いいけど、機内食もあるから、程々にな」

西山は嬉しそうにテーブルに並んだ料理の数々を見ながら楽しんでいた。

「これが、本当にお前とのハネムーンだったら俺もはしゃいでいただろうな」

伊川は心の中でそう呟いた。


搭乗した飛行機はタイの航空会社のファーストクラス席だった。
二人用の個室になっていた。

「すっげえ、俺、大学時代にレスリングの試合の時に国内線のエコノミークラスにしか乗ったことないから、ファーストクラスってスゲえ。」

はしゃぎっ放しの西山を見ながら、伊川は

「お前は間違いなく俺の女だ。誰にも渡さない。
どんなに汚い手を使っても、お前を離したくない」

そう呟いた。
西山は子供のようだった。
席の自動リクライニングやゲームができるモニターで遊んだり、ワインやステーキ、食後のコーヒーなどの機内食が出る度

「すげえ、すげえ」

と言ってはしゃいだ。

バンコク、スワンナプーム空港へは約7時間のフライトだった。
しかし、途中で西山が伊川の肩にもたれかかって眠っている時、伊川はマッチョ星人にケツを犯された、あのおぞましい悪夢を思い出していた。

「俺が逃げているのは本当は西山のためなんかじゃない。
俺自身が臆病で逃げているんだ。
情けない」

そう言って伊川は自分を責めた。


飛行機はベトナムのダナン、ラオス南部から、タイのイサーン(東北部)地方の上空を通り、次第に高度を下げた。
タイ語、英語、日本語で機内放送があり、まもなくスワンナプーム空港着陸だ。
眠りから覚めた西山は

「え?もう着くの?」

と寝ぼけていた。
スワンナプーム空港では、二人はVIP専用通路を通り、VIPチェックイン室に案内された。
中ではタイ日本大使館の職員が待機していて、二人の入国手続きを全て行っていた。
西山は

「実は弘二って、すごい偉い人なんじゃないの?」

と伊川に聞いてきた。

「バカ言うな。偉いのは俺の親だけだ」

「いやいや、弘二って実は財閥の御曹司だったりして。
俺って孤児院で育ったから、これって身分違いの恋だよね。
テレビドラマみたいだなあ」

伊川は、そう言えば、西山の履歴書の保護者は施設長の名前だったことを思い出した。

「西山、お前の本当の両親はどこにいるんだ?」

「知らない。生まれてすぐ、孤児院の前に捨てられてたんだって。
だから会ったこともないし、名前も知らない」

南条は、ここが入国審査室でなければ、今すぐ西山を抱きしめてやりたかった。
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