1 / 2
中立の朝
しおりを挟む
高校生活を平穏にすごしたい。それは誰もが思うことであり願うことでもある。
しかし、平穏にすごすのはなかなかどうして難しい。
大人しすぎるとスクールカーストの底辺、陰キャラの烙印をおされ、オタクやぼっち、苛められっ子に。
騒がしすぎたり、オラオラ系になるとスクールカーストの上位、陽キャラになってしまい、世間から不良のレッテルを貼られる。
そんな厳しい学園生活を平穏にすごす方法はただ一つ。中立の存在であることだ。
中立、陽キャや陰キャのどちらにも偏らない立ち位置。
スクールカーストの位置で言うと真ん中になるだろうか?
いや違う。スクールカーストの真ん中は陽キャの取り巻きになる。それは僕が求める中立ではない。
僕、中野昴が目指す中立とは陽キャに媚びへつらうわけでも、陰キャを見下すわけでもない第三の立ち位置。
スクールカーストでは表せない立ち位置、それこそが僕が望む中立なのだ。
◆
朝七時ちょうど。目覚まし時計に頼らず、起床した。
ぐーと体を伸ばし、部屋のカーテンを開ける。寝惚け眼に朝日は眩しい。
「今日も晴天、晴れ晴れとしたいい天気」
目を細め、僕はお天道様に一拍手一礼する。
「今日も平穏にすごせますように」
.... 別にお願いしたからといって平穏に暮らせるとは思っていない。
いや、そもそもこれはお願いではない、何故なら僕は神様なんて非科学的存在を信じていないのだ。
幽霊もしかりユーマもしかり僕は目で見たものしか信じないことにしている。
ではさっきのお参りもどきは何かというと、一種の日課だ。
僕は毎回七時ちょうどに起き、太陽に向かって平穏にすごせますようにと一拍手一礼するようにしている。曇天の日にはだいたいあそこら辺に太陽があるだろうと推測し、一拍手一礼する。
いつからしているのかと聞かれれば、いつからだろう?
気づけばしていた。
「昴、起きなさい。ご飯よ!」
一階から母の声が鮮明に聞こえてくる。朝から大声とは。元気のようでなによりだ。
適当に「降りる」と返事をし、机の上にある学生鞄の中身をチェックする。
これも決まった行動だ。因みにさっきの母の呼び掛けも数分の誤差はあるが、だいたい太陽に一礼した後に聞こえてくる。
通学鞄の色は黒一色。肩から下げるタイプで変なバッチやキーホルダーは貼らないようにしている。
中立であるためには装飾を施してはならない。
アニメキャラのキーホルダーだと陰キャラに。某有名スポーツのロゴシールだとこれまた陰キャラ、もしくは陽キャラに目をつけられかねない。
机の引き出しから、時間割り表を取りだし、教科書を入れていく。
ノートを入れるときは一応パラパラと捲って確認する。
「よし、宿題はやっている」
宿題をやってくることは中立であるために最も必要な事項である。
宿題を忘れると、教師からは悪い評価をつけられ、宿題を忘れた生徒からは妙な親近感を与えてしまう。
親近感を与えるとどうなるか、周りによってくるだろう。
陽キャラが寄ってくるとウェイウェイ的なノリに。陰キャラだと根暗的なノリになる。
中立であるためには宿題は決して忘れてはいけないのだ。
また、宿題の解答にも注意しなければならない。全問正答はガリ勉に見えてしまうし、不正解が多いと不真面目に見えてしまう。
そのため正誤を半々にして不真面目でもガリ勉にも見えないようにして答える必要がある。
やれやれ、中立の道のりも楽じゃない。
忘れ物がないか再度確認して、一階へと降りる。
一階へと降りて決まってすることは母に挨拶することだ。
そういうわけで、キッチンに立つ母におはようと朝の挨拶をする。
母は僕の顔を見るとしかめっ面をし、続けてため息をついた。
息子の顔をみてため息とは失礼な人だ。
「七時二十分。昴、あんたっていつもこの時間に降りて、挨拶するね.... 」
それの何処が悪いのだろうか?
「それに弁当も。いつも決まったメニューだよ。私としてはもう少し派手にしてあげたいのに、あんたが中立とかなんとか言うから味気ない彩りになるよ。工夫してウサギさんや牛さん、日の丸とか、ほら今流行ってるキャラクター弁当とかは駄目なのかい?」
高校生男子の弁当にそんな可愛らしい工夫はいらない。後、日の丸はキャラ弁しゃない。
「とにかく何時も通りでお願いするよ。それにほら、キャラ弁じゃお金がかかるでしょ?」
僕はそれだけ言って洗面台に向かう。やれやれ、こんな長話は予定からずれている。
洗面台に向かう際、母の小さな声が聞こえた気がした。
しかし、気がしただけなのでやはり気のせいで母は何も言っていないのだろう。
しかし、平穏にすごすのはなかなかどうして難しい。
大人しすぎるとスクールカーストの底辺、陰キャラの烙印をおされ、オタクやぼっち、苛められっ子に。
騒がしすぎたり、オラオラ系になるとスクールカーストの上位、陽キャラになってしまい、世間から不良のレッテルを貼られる。
そんな厳しい学園生活を平穏にすごす方法はただ一つ。中立の存在であることだ。
中立、陽キャや陰キャのどちらにも偏らない立ち位置。
スクールカーストの位置で言うと真ん中になるだろうか?
いや違う。スクールカーストの真ん中は陽キャの取り巻きになる。それは僕が求める中立ではない。
僕、中野昴が目指す中立とは陽キャに媚びへつらうわけでも、陰キャを見下すわけでもない第三の立ち位置。
スクールカーストでは表せない立ち位置、それこそが僕が望む中立なのだ。
◆
朝七時ちょうど。目覚まし時計に頼らず、起床した。
ぐーと体を伸ばし、部屋のカーテンを開ける。寝惚け眼に朝日は眩しい。
「今日も晴天、晴れ晴れとしたいい天気」
目を細め、僕はお天道様に一拍手一礼する。
「今日も平穏にすごせますように」
.... 別にお願いしたからといって平穏に暮らせるとは思っていない。
いや、そもそもこれはお願いではない、何故なら僕は神様なんて非科学的存在を信じていないのだ。
幽霊もしかりユーマもしかり僕は目で見たものしか信じないことにしている。
ではさっきのお参りもどきは何かというと、一種の日課だ。
僕は毎回七時ちょうどに起き、太陽に向かって平穏にすごせますようにと一拍手一礼するようにしている。曇天の日にはだいたいあそこら辺に太陽があるだろうと推測し、一拍手一礼する。
いつからしているのかと聞かれれば、いつからだろう?
気づけばしていた。
「昴、起きなさい。ご飯よ!」
一階から母の声が鮮明に聞こえてくる。朝から大声とは。元気のようでなによりだ。
適当に「降りる」と返事をし、机の上にある学生鞄の中身をチェックする。
これも決まった行動だ。因みにさっきの母の呼び掛けも数分の誤差はあるが、だいたい太陽に一礼した後に聞こえてくる。
通学鞄の色は黒一色。肩から下げるタイプで変なバッチやキーホルダーは貼らないようにしている。
中立であるためには装飾を施してはならない。
アニメキャラのキーホルダーだと陰キャラに。某有名スポーツのロゴシールだとこれまた陰キャラ、もしくは陽キャラに目をつけられかねない。
机の引き出しから、時間割り表を取りだし、教科書を入れていく。
ノートを入れるときは一応パラパラと捲って確認する。
「よし、宿題はやっている」
宿題をやってくることは中立であるために最も必要な事項である。
宿題を忘れると、教師からは悪い評価をつけられ、宿題を忘れた生徒からは妙な親近感を与えてしまう。
親近感を与えるとどうなるか、周りによってくるだろう。
陽キャラが寄ってくるとウェイウェイ的なノリに。陰キャラだと根暗的なノリになる。
中立であるためには宿題は決して忘れてはいけないのだ。
また、宿題の解答にも注意しなければならない。全問正答はガリ勉に見えてしまうし、不正解が多いと不真面目に見えてしまう。
そのため正誤を半々にして不真面目でもガリ勉にも見えないようにして答える必要がある。
やれやれ、中立の道のりも楽じゃない。
忘れ物がないか再度確認して、一階へと降りる。
一階へと降りて決まってすることは母に挨拶することだ。
そういうわけで、キッチンに立つ母におはようと朝の挨拶をする。
母は僕の顔を見るとしかめっ面をし、続けてため息をついた。
息子の顔をみてため息とは失礼な人だ。
「七時二十分。昴、あんたっていつもこの時間に降りて、挨拶するね.... 」
それの何処が悪いのだろうか?
「それに弁当も。いつも決まったメニューだよ。私としてはもう少し派手にしてあげたいのに、あんたが中立とかなんとか言うから味気ない彩りになるよ。工夫してウサギさんや牛さん、日の丸とか、ほら今流行ってるキャラクター弁当とかは駄目なのかい?」
高校生男子の弁当にそんな可愛らしい工夫はいらない。後、日の丸はキャラ弁しゃない。
「とにかく何時も通りでお願いするよ。それにほら、キャラ弁じゃお金がかかるでしょ?」
僕はそれだけ言って洗面台に向かう。やれやれ、こんな長話は予定からずれている。
洗面台に向かう際、母の小さな声が聞こえた気がした。
しかし、気がしただけなのでやはり気のせいで母は何も言っていないのだろう。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
期末テストで一番になれなかったら死ぬ
村井なお
青春
努力の意味を見失った少女。ひたむきに生きる病弱な少年。
二人はその言葉に一生懸命だった。
鶴崎舞夕は高校二年生である。
昔の彼女は成績優秀だった。
鹿島怜央は高校二年生である。
彼は成績優秀である。
夏も近いある日、舞夕は鹿島と出会う。
そして彼女は彼に惹かれていく。
彼の口にした一言が、どうしても忘れられなくて。
あずさ弓
黒飛翼
青春
有名剣道家の息子として生まれる来人。当然のように剣道を始めさせられるも、才能がなく、親と比較され続けてきた。その辛さから非行を繰り返してきた彼は、いつしか更生したいと思うようになり、中学卒業を機に地元を出て叔母の経営する旅館に下宿することに決める。
下宿先では今までの行いを隠し、平凡な生活を送ろうと決意する来人。
しかし、そこで出会ったのは先天性白皮症(アルビノ)を患う梓だった。彼女もまた、かつての来人と同じように常人と比較されることに嫌気がさしているようで、周囲に棘を振りまくような態度をとっていた。来人はそんな彼女にシンパシーを感じて近づこうとするのだが、彼女はさらに重いものを抱えていたようで……
来人の生き様と梓の秘密が絡み合ったとき。そこに生まれる奇跡の出来事は必見―。
学生恋愛♡短編集
五菜みやみ
青春
収録内容
➀先生、好きです。
☆柚乃は恋愛も勉強も充実させるために今日も奮闘していた──。
受験が控える冬、卒業する春。
女子生徒と養護教諭の淡い恋が実りを告げる……。
②蜂蜜と王子さま
☆蜜蜂は至って普通の家に生まれてながらも、低身長にハニーブロンドの髪と云う容姿に犬や人から良く絡まていた。
ある日、大型犬三匹に吠えられ困っていると、一学年年上の先輩が助けてくれる。
けれど、王子の中身は思ったより可笑しくて……?
➂一匹狼くんの誘惑の仕方
☆全校。学年。クラス。
集団の中に一人くらいはいる浮いた存在の人。
──私、花城 梨鈴も、低身長で悪目立ちをしている一人。
④掛川くんは今日もいる。
☆優等生の天宮百合は、ある秘密を抱えながら学園生活を送っていた。
放課後はお気に入りの図書室で過ごしていると、学年トップのイケメン不良_掛川理人が現れて──。
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
きょう、ママンのパパが死んだ
あおみなみ
青春
「もしかすると、きのうかもしれないが」
両親共働きをいいことに、人のいい父方の祖父母に適当なことを言って丸め込み、
ついつい学校をサボってしまう中学生の「私」。
そんなある日、母の実家からある知らせが…。
某年11月25日に思い付きで書いた、11月25日にまつわる小説です。
普段は短編集の一部ですが、11月25日(26日)午前零時まで限定で単独アップしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる