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第14話 製塩

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 ガルドとの話で少量だが製塩してみようという話になった。
 使うのは塩と鍋だ。

 鍋の数も今四個あって二つはバッダグに渡してあるので、手元にも二つある。
 昼間の空いている時間に作業する。

 昼飯はあまり食べないが、子どもたちにはジャーキーや未発酵パンを食べさせている。
 ゴブリンの子どもは大食漢ですくすく成長するのだ。

 岩塩を綺麗な湧水に溶かしていき限界まで入れる。
 それを一度、器に移していき、底に溜まった砂を捨てる。

「よし、いい感じだ」
「ぱぱ、製塩してる?」
「そそ。この前話したやつな。塩を作ってるんだ」

 塩水を沸騰させて、結晶化させれば、ほぼ完成となる。
 ポイントは一度、砂を捨てるところだろうか。
 それで最後に残った水分が「にがり」となる。

 岩塩があれば、どこでも誰でもできそうなものだが、知識がないとできないといえばそうかもしれない。
 それから鍋を煮るだけの火も必要だ。
 ここは森があるので、薪はいくらでもある。
 ゴブリンは枝を拾って来るのは、手が長くて無駄に上手だ。

「よしできた。後は革袋に移して終わりっと」

 綺麗な塩を革袋につめて完成だ。
 袋はオオカミをなめしたもので、革の服も余り気味になっている。
 ゴブリンは替えの服とかいう概念がないので、一巡したら余ってしまう。

「上出来だな」

 ガルドに岩塩と一緒に持たせる。

「ということで試作した製塩した塩だ」
「いいですね。売ってみましょう」

 一粒つまんで口に入れて、しょっぱいという顔をする。
 そりゃしょっぱいだろうが。


 シャーリア村の人は岩塩が豊富に使えるようになってニコニコだった。
 ガルドがデデム町の冒険者ギルドに商品を降ろす。

「岩塩、精製した食塩、ジャーキー、スパイダーシルク、宝石各種、牙のアクセサリーですかね」
「そうですね」

 ギルド嬢を見ると目が呆れている。

「こんなに商品を持ってくる人、あなただけですよ」
「でしょうね。ちょっと伝手がありまして。私はタダの行商にすぎません」
「はい、金貨です」
「まいど、どうも」
「ところでガルドさん。その……それだけの商品を出してくださる村の村長にお会いしたいと、マーベルス侯爵がおっしゃっていて」
「あぁ、いいのかな、わかった。連れてくる」

 侯爵クラスの貴族の「お願い」というのは事実上の命令に等しい。
 ただの冒険者の判断で拒否していいことではないことくらいガルドも承知していた。

「ただ、ここだけの秘密なのだが、彼らはゴブリンでして」
「野生のゴブリンなのか?」
「はい」
「ほほう。ますます興味深いですね」
「ゴブリンの長を連れてきますとお伝えください」
「ゴブリンねぇ」

 さてどうしたものかと考えながら、頼まれたものを買い込んだガルドがゴブリン村へと戻っていく。


 ルフガル洞窟にガルドが再び戻ってきた。
 そのころ、また新たに西のゴブリン村を同じように脅迫して同盟を結んでいた。
 まだ人員の入れ替えなどはしていないが、予備の鎧や槍などを提供して、ゴブリンが行きかっていた。
 それから他の村でもジャガイモ畑を作ることになり、いませっせと耕している。
 三つの洞窟の総人口は百人といったところだろうか。
 すでに小さな人間の村と同規模くらいにはなっていたのだ。

「ドル、厄介事だ」
「なんだ、ガルド?」
「マーベルス侯爵が、リーダーに会いたいとご要望だ」
「え、俺?」
「だろう」
「まあ、そう言われればそうだが」
「おとなしく、ついてきてもらうぞ」
「いっそ、ガルドの奴隷にでも擬態していようか」
「やめてくれ」
「いうと思った」

 さて冗談を交わしたので、今度は真面目な話をしなければならない。

「土産に製塩、宝石、それから魔石を出すか。オークの魔石がいいな。オークを倒せると言えば強さを証明できる。まぁ昔の実績で嘘くさいが、嘘は言っていない」
「あはは、まあそれくらいの見栄は張るよな」
「だろ」

 皮鎧を着て、手には単槍を左手には火魔法の棒を装備する。
 ゴブリンにしては重装備に見えるだろう。

 結局、土産にスパイダーシルクも増やしておく。
 シルクスパイダーにまた肉を差し出したところ、またおさがりのグルグル巻きをくれたので有難く使わせてもらう。

 宝石はあまりなかったので、総出でメルセ川へ探しにいく。
 一日の作業で数個、ルビー、サファイアなどが発見された。
 実を言うとどこかに金鉱脈もあるようで、砂金もちょいちょい採れる。

「よし、では行ってくる」
「いってらっしゃい~、ぱぱぁ」
「いい子にしてるんだぞ」
「はーい」

 グレアの頭を撫でて、機嫌をとっておく。

「リーリア、留守を頼む」
「はい」
「ばあちゃん、頼んだよ」
「あいよ」

 リーリアとベリアがいればまあ大丈夫だろう。

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