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第12話 制圧
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訓練を重ねたルフガルのゴブリンたち。
「いよいよだ」
「はい、長」
「それでは出発する」
「はい」
「ゴブゴブ」
指揮を執るのは俺、ドルだ。
ゴブリンが全部で十五名。
槍部隊、火魔法の棒の魔法部隊、弓兵部隊に分かれている。
火魔法の棒は予備も持たせてあった。
それからリーリアとグレアだ。この二人は「ヒール」と「祝福」が使えるのだ。
万が一戦闘になったときには、生存率にかかわる。
リーリアは魔法部隊と弓兵部隊のリーダーである副隊長もしてもらうことになった。
戦闘経験はそれほどないが普通のゴブリンより冷静だし頭がいい。
それでどこで何をするかというと、北のゴブリンの集落を襲う。
襲うといっても、実際に攻撃するわけではない。
北の村の規模はすでに偵察してあって、十五人程度の家族だと分かっている。
どう考えてもこちらのほうが強い。
向こうは藁の服に木槍だ。以前の俺たちと同じような装備だと考えていい。
全力で「脅して」傘下に入ってもらう。
同規模の戦力なら戦闘になるが、ゴブリンがいくらバカでも絶対に負けるのが分かっているくらいなら、さっさと降伏するはずだ。
ゴブリンは肉体的には弱いので、すぐ逃げるし、臆病でもある。
その間、ルフガル洞窟のほうが危険ではあるが、今回の作戦は賭けでもあった。
謎の脅威に立ち向かいたい。
それはオークの可能性が高い。俺たちだけでは勝てそうにないのだ。
一気に戦力を増やすには、他のゴブリン一家を傘下に引き入れ、数で攻める。
もちろん俺たち同様まで武器や防具のアップデートはする。
適当な列になって、目的の北の洞窟へ向かう。
こういうときに綺麗に列にならないのがゴブリンらしい。
ここ以外にもいくつか洞窟があり、何家族か住んでいることが分かっている。
文明シミュレーションゲームとかでも初期に平和な村で遊んでいたら、いきなり民兵の軍隊に襲われて壊滅するなんてことがある。
あれの襲う側だ、今回は。
場合によっては自分が襲われる側だった場合もあるのだ。
気を引き締めたい。
「たのもー」
洞窟の前に到着すると声を上げる。
「ゴブゴブ」
「なんだ、なんだべ!」
中から何匹ものゴブリンが出てくる。
今は昼間なので、半分程度は狩りに出ているのだろう。
「俺たちは南側のゴブリン、ルフガル洞窟のものだ」
「あぁ、南側の……」
何人かのゴブリンはやはり木槍で武装しており、それを空に向けて突き出し威嚇してくる。
「見ればわかるように、俺たちのほうが強い」
「ぐぬぬ」
「負けを認めて、俺たちの傘下に入らないか?」
「な、なんだと」
「別に取って食おうってわけじゃない。みんなで平和に暮らしたいだけだ」
「ふむ」
「支配はさせてもらう。今よりいい生活ができるぞ」
「な、なんだと」
「ほら、餞別のジャーキーだ。食うか?」
「ゴブゴブ」
しかし俺たちの服装が明らかに人間レベルであるのを見れば、納得したように頷いた。
「わ、分かった」
向こうの長が前に出てくる。
だいぶ歳だ。深いシワがある。
「北の洞窟の長、グバ」
「南の洞窟の長ベダの息子。今度、新しく長になった。ドルだ」
俺たちが握手をする。
すると後ろで、なんだかんだで歓声が上がる。
とまあ緊張していたが、なんとかなった。
ふう、バカなゴブリンでも、本当にバカ丸出しではなくてよかった。
戦力差を無視して攻撃してくる可能性もあっただけに、心配していたのだ。
戦闘になれば双方に被害が出る。
戦力の低下はすぐに、さらなる脅威への抵抗力低下に直結するため大問題だった。
北の洞窟はバッダグというらしい。
翌日、さっそく槍と防具の予備を持っていく。
「ほい、槍と防具」
「い、いいのか?」
「ああ、説明したが俺たちより強い敵がいるんだ。協力したい」
「わかった。助かる」
まだ戦士全員分ではないが、これで戦力増加にはつながる。
「それから、移住者を募りたい」
「移住?」
「住民の交換をしよう。血が濃くなるとよくない」
「そうなのか」
「ああ」
ゴブリンは家族単位なので、かなり血が濃くなりやすい。
四、五人入れ替えをすることになった。
出奔して別の家族のゴブリンのところへ行く放浪ゴブリンもごく稀にいる。
家族の人数が増えれば、違う洞窟へ分家することはあるが、元は同じ家なので血の濃さはそのままだ。
ルフガル、バッダグ合同の訓練もかねて、今日はあるものを採りに来ていた。
「よし、やれ!」
「うわああああ」
「ぎゃああ」
「グルグル」
「ゴブゴブ」
「グアッ」
ゴブリンたちが慌てふためいて逃げ惑う。
何をしているかというと、ハチの巣を採りに来たのだ。
今は秋を過ぎた頃、冬越しのためにたっぷりの蜂蜜がある。
ゴブリンは甘いものも大好きだ。
煙を焚いてハチを弱らせながら、巣から蜂蜜を回収する。
違う家族といっても、人間語が話せるので意思の疎通はできる。
ハチに刺されたりしつつ、なんとか甘い蜜が採れた。
二家族で分け合って、それぞれ持ち帰った。
「パパ、甘い!」
「ああ、これが蜂蜜だ」
「蜂蜜、ちゅき!」
グレアは今回お留守番だったので、不機嫌だった。
でもちゃんと蜂蜜を持って帰って食べたら、ご覧の通り、みごとに機嫌が直った。
やっぱりゴブリンは甘いものが好きなようだ。
「いよいよだ」
「はい、長」
「それでは出発する」
「はい」
「ゴブゴブ」
指揮を執るのは俺、ドルだ。
ゴブリンが全部で十五名。
槍部隊、火魔法の棒の魔法部隊、弓兵部隊に分かれている。
火魔法の棒は予備も持たせてあった。
それからリーリアとグレアだ。この二人は「ヒール」と「祝福」が使えるのだ。
万が一戦闘になったときには、生存率にかかわる。
リーリアは魔法部隊と弓兵部隊のリーダーである副隊長もしてもらうことになった。
戦闘経験はそれほどないが普通のゴブリンより冷静だし頭がいい。
それでどこで何をするかというと、北のゴブリンの集落を襲う。
襲うといっても、実際に攻撃するわけではない。
北の村の規模はすでに偵察してあって、十五人程度の家族だと分かっている。
どう考えてもこちらのほうが強い。
向こうは藁の服に木槍だ。以前の俺たちと同じような装備だと考えていい。
全力で「脅して」傘下に入ってもらう。
同規模の戦力なら戦闘になるが、ゴブリンがいくらバカでも絶対に負けるのが分かっているくらいなら、さっさと降伏するはずだ。
ゴブリンは肉体的には弱いので、すぐ逃げるし、臆病でもある。
その間、ルフガル洞窟のほうが危険ではあるが、今回の作戦は賭けでもあった。
謎の脅威に立ち向かいたい。
それはオークの可能性が高い。俺たちだけでは勝てそうにないのだ。
一気に戦力を増やすには、他のゴブリン一家を傘下に引き入れ、数で攻める。
もちろん俺たち同様まで武器や防具のアップデートはする。
適当な列になって、目的の北の洞窟へ向かう。
こういうときに綺麗に列にならないのがゴブリンらしい。
ここ以外にもいくつか洞窟があり、何家族か住んでいることが分かっている。
文明シミュレーションゲームとかでも初期に平和な村で遊んでいたら、いきなり民兵の軍隊に襲われて壊滅するなんてことがある。
あれの襲う側だ、今回は。
場合によっては自分が襲われる側だった場合もあるのだ。
気を引き締めたい。
「たのもー」
洞窟の前に到着すると声を上げる。
「ゴブゴブ」
「なんだ、なんだべ!」
中から何匹ものゴブリンが出てくる。
今は昼間なので、半分程度は狩りに出ているのだろう。
「俺たちは南側のゴブリン、ルフガル洞窟のものだ」
「あぁ、南側の……」
何人かのゴブリンはやはり木槍で武装しており、それを空に向けて突き出し威嚇してくる。
「見ればわかるように、俺たちのほうが強い」
「ぐぬぬ」
「負けを認めて、俺たちの傘下に入らないか?」
「な、なんだと」
「別に取って食おうってわけじゃない。みんなで平和に暮らしたいだけだ」
「ふむ」
「支配はさせてもらう。今よりいい生活ができるぞ」
「な、なんだと」
「ほら、餞別のジャーキーだ。食うか?」
「ゴブゴブ」
しかし俺たちの服装が明らかに人間レベルであるのを見れば、納得したように頷いた。
「わ、分かった」
向こうの長が前に出てくる。
だいぶ歳だ。深いシワがある。
「北の洞窟の長、グバ」
「南の洞窟の長ベダの息子。今度、新しく長になった。ドルだ」
俺たちが握手をする。
すると後ろで、なんだかんだで歓声が上がる。
とまあ緊張していたが、なんとかなった。
ふう、バカなゴブリンでも、本当にバカ丸出しではなくてよかった。
戦力差を無視して攻撃してくる可能性もあっただけに、心配していたのだ。
戦闘になれば双方に被害が出る。
戦力の低下はすぐに、さらなる脅威への抵抗力低下に直結するため大問題だった。
北の洞窟はバッダグというらしい。
翌日、さっそく槍と防具の予備を持っていく。
「ほい、槍と防具」
「い、いいのか?」
「ああ、説明したが俺たちより強い敵がいるんだ。協力したい」
「わかった。助かる」
まだ戦士全員分ではないが、これで戦力増加にはつながる。
「それから、移住者を募りたい」
「移住?」
「住民の交換をしよう。血が濃くなるとよくない」
「そうなのか」
「ああ」
ゴブリンは家族単位なので、かなり血が濃くなりやすい。
四、五人入れ替えをすることになった。
出奔して別の家族のゴブリンのところへ行く放浪ゴブリンもごく稀にいる。
家族の人数が増えれば、違う洞窟へ分家することはあるが、元は同じ家なので血の濃さはそのままだ。
ルフガル、バッダグ合同の訓練もかねて、今日はあるものを採りに来ていた。
「よし、やれ!」
「うわああああ」
「ぎゃああ」
「グルグル」
「ゴブゴブ」
「グアッ」
ゴブリンたちが慌てふためいて逃げ惑う。
何をしているかというと、ハチの巣を採りに来たのだ。
今は秋を過ぎた頃、冬越しのためにたっぷりの蜂蜜がある。
ゴブリンは甘いものも大好きだ。
煙を焚いてハチを弱らせながら、巣から蜂蜜を回収する。
違う家族といっても、人間語が話せるので意思の疎通はできる。
ハチに刺されたりしつつ、なんとか甘い蜜が採れた。
二家族で分け合って、それぞれ持ち帰った。
「パパ、甘い!」
「ああ、これが蜂蜜だ」
「蜂蜜、ちゅき!」
グレアは今回お留守番だったので、不機嫌だった。
でもちゃんと蜂蜜を持って帰って食べたら、ご覧の通り、みごとに機嫌が直った。
やっぱりゴブリンは甘いものが好きなようだ。
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