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第1話 ゴブリン村
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「ゴブゴブ」
ここはルフガル。ゴブリン村だ。
人間の言うところのエルヘレス森の中腹にあるらしい。
近くに人間の集落はないが、森の麓には人間の村が一つだけある。
そんな辺鄙な場所だ。
最初の転生は人間の下級貴族だった。
比較的裕福で色々な知識を身に着け、それとなく過ごしていた。
結婚して子供が出来て、それなりに幸せだった。
そして普通に死んだ。
再び生まれ変わってみたらゴブリンだった。
崖にある洞窟がルフガルだ。
内部は思ったよりは広く入り組んでいる。
行き止まりがいくつもあったので、それぞれ小部屋のように利用している。
ゴブリンはこのような生活に適応しているのか、人間よりも目がいい。
薄暗がりでも、そこそこ見ることができる。
俺が二歳を過ぎるころ、子供も卒業だと言われた。
「ドルだべ。お前も明日から狩りに行くべ」
「はい、長」
長はベダだったかな。
ここのゴブリンの最長老で今年十五だったかと思う。
ゴブリンの寿命は二十歳くらい。
野生のゴブリンはもう少し短いかもしれない。
この世界では野生のゴブリンと、ゴブリン牧場で生まれた町生まれのゴブリンがいる。
町のゴブリンは奴隷として一生働かされる。
俺も人間だったころ子爵家生まれだったから、ゴブリンはこき使われているのをよく目にした。
町中では食堂の皿洗い、雑用。
一番多いのはプランテーションの農奴だ。
それから採掘現場での鉱員。
多くはメス、オス関係なく働かされる。
単純労働には、ゴブリン。これが定説だった。
食堂でも配膳は女の子の仕事だ。ゴブリンに任せたりすることはない。
こうして分担されていた。
基本的にゴブリンに表の仕事をさせることはない。
貴族の館クラスになると全員、人間だったりする。中には少数、獣人がいるくらいだろうか。
言語が同じなのでここが同じ世界であることは明確だった。
野生のゴブリンにも「人間語」が普及して久しい。
はるか昔には、ゴブリン語を話していたとエルフの記録があるのだが、ゴブリンを奴隷として使うようになってから、ゴブリンに人間語を教えるようになり、今では野生のゴブリンにまで人間語が普通に話されている。
野生といっとも細々と人間と交流を持つことがあったのだろう。
野生のゴブリンは、森や山などの洞窟に住む、いわば原住民だ。
世界はとても広く、人間のテリトリー外の森なども多数あるので、野生のゴブリンはそういうところに点々と住み着いて、今まで生き延びてきた。
街のすぐ外に住んでるなんてこともある。
「ドル、こっちだ」
「ああ」
ゴブリンのリーダーが俺や仲間を連れて狩りに出る。
手にはお手製の木槍を装備していた。
先をナイフで削り尖らせてあるが、大した威力はない。
よく先が折れるので面倒だった。その度に削り直しだ。
ナイフは昔、死んだり捕虜にしたりした冒険者から回収したものだと伝わっている。
もうだいぶボロいが、それでもないよりはマシだった。
ゴブリンに鍛冶仕事は難しい。
「角ウサギだ」
「ゴブブウ」
一斉に木槍を突いて角ウサギを追い込む。
ウサギはびっくりして飛び上がり、そのまま走って逃げていく。
「失敗だった、ゴブ」
「だな」
ゴブリンの普通の狩りは成功率が低い。
だから交代で何パーティーか組んで一日中付近の森を探索する。
たまに人間にも遭遇することがある。
人間と俺たちゴブリンは会話できるにもかかわらず、それほど交流がない。
そして冒険者はゴブリンの奴隷狩りをすることがある。
だから俺たちと冒険者は戦闘になることがあった。
そして女冒険者はゴブリンの捕虜になることがある。
どうなるかといえば、ふむ。もちろん子供を産んでもらうことになるわけだが……。
それはまたいずれ話そう。
今日も一日がかりで角ウサギが三匹なんとか確保できた。
それから運がいい。
「ククル、ククル、ゴブ」
「おお、美味そうだ」
「とる、とるべ」
今日はククルの実という赤い果実が豊作だった。
森の中にところどころに生えているのが、今が旬だった。
俺たちのパーティー五人でどんどん採っていく。
いわゆる狩猟採集生活というやつだろう。
まるで原始人だが、しょせんゴブリンである。
まあ、そんなものだろう。
背負い袋にいっぱいにククルの実を収穫すると、ゴブリンが満足気にニヤリと笑った。
緑の皮膚。短髪の灰色の髪に、しわくちゃな顔。
そして口元に伸びる牙。
背は十歳児くらいの身長までしか伸びない。
雑な草を編んだ服と半ズボンを着ている。
それからイノシシやオオカミの牙を吊るしたペンダントをしている。
ゴブリンにも文化らしきものがあり、ペンダントはお洒落なのだ。
イノシシやオオカミを倒すのは命がけであり、その牙を身に着けるのは、名誉であるとされる。
俺も戦士になるということで、今朝方、オオカミの牙が一本だけのペンダントを新しく与えられた。
他のゴブリンたちは複数本の牙をぶら下げていた。
リーダーのペンダントは中央にイノシシの大きな牙が一つに、たくさんのオオカミの牙が並んでいる。
ということでペンダントを見れば、そいつがどれくらいの戦士階級か分かるのだった。
ここはルフガル。ゴブリン村だ。
人間の言うところのエルヘレス森の中腹にあるらしい。
近くに人間の集落はないが、森の麓には人間の村が一つだけある。
そんな辺鄙な場所だ。
最初の転生は人間の下級貴族だった。
比較的裕福で色々な知識を身に着け、それとなく過ごしていた。
結婚して子供が出来て、それなりに幸せだった。
そして普通に死んだ。
再び生まれ変わってみたらゴブリンだった。
崖にある洞窟がルフガルだ。
内部は思ったよりは広く入り組んでいる。
行き止まりがいくつもあったので、それぞれ小部屋のように利用している。
ゴブリンはこのような生活に適応しているのか、人間よりも目がいい。
薄暗がりでも、そこそこ見ることができる。
俺が二歳を過ぎるころ、子供も卒業だと言われた。
「ドルだべ。お前も明日から狩りに行くべ」
「はい、長」
長はベダだったかな。
ここのゴブリンの最長老で今年十五だったかと思う。
ゴブリンの寿命は二十歳くらい。
野生のゴブリンはもう少し短いかもしれない。
この世界では野生のゴブリンと、ゴブリン牧場で生まれた町生まれのゴブリンがいる。
町のゴブリンは奴隷として一生働かされる。
俺も人間だったころ子爵家生まれだったから、ゴブリンはこき使われているのをよく目にした。
町中では食堂の皿洗い、雑用。
一番多いのはプランテーションの農奴だ。
それから採掘現場での鉱員。
多くはメス、オス関係なく働かされる。
単純労働には、ゴブリン。これが定説だった。
食堂でも配膳は女の子の仕事だ。ゴブリンに任せたりすることはない。
こうして分担されていた。
基本的にゴブリンに表の仕事をさせることはない。
貴族の館クラスになると全員、人間だったりする。中には少数、獣人がいるくらいだろうか。
言語が同じなのでここが同じ世界であることは明確だった。
野生のゴブリンにも「人間語」が普及して久しい。
はるか昔には、ゴブリン語を話していたとエルフの記録があるのだが、ゴブリンを奴隷として使うようになってから、ゴブリンに人間語を教えるようになり、今では野生のゴブリンにまで人間語が普通に話されている。
野生といっとも細々と人間と交流を持つことがあったのだろう。
野生のゴブリンは、森や山などの洞窟に住む、いわば原住民だ。
世界はとても広く、人間のテリトリー外の森なども多数あるので、野生のゴブリンはそういうところに点々と住み着いて、今まで生き延びてきた。
街のすぐ外に住んでるなんてこともある。
「ドル、こっちだ」
「ああ」
ゴブリンのリーダーが俺や仲間を連れて狩りに出る。
手にはお手製の木槍を装備していた。
先をナイフで削り尖らせてあるが、大した威力はない。
よく先が折れるので面倒だった。その度に削り直しだ。
ナイフは昔、死んだり捕虜にしたりした冒険者から回収したものだと伝わっている。
もうだいぶボロいが、それでもないよりはマシだった。
ゴブリンに鍛冶仕事は難しい。
「角ウサギだ」
「ゴブブウ」
一斉に木槍を突いて角ウサギを追い込む。
ウサギはびっくりして飛び上がり、そのまま走って逃げていく。
「失敗だった、ゴブ」
「だな」
ゴブリンの普通の狩りは成功率が低い。
だから交代で何パーティーか組んで一日中付近の森を探索する。
たまに人間にも遭遇することがある。
人間と俺たちゴブリンは会話できるにもかかわらず、それほど交流がない。
そして冒険者はゴブリンの奴隷狩りをすることがある。
だから俺たちと冒険者は戦闘になることがあった。
そして女冒険者はゴブリンの捕虜になることがある。
どうなるかといえば、ふむ。もちろん子供を産んでもらうことになるわけだが……。
それはまたいずれ話そう。
今日も一日がかりで角ウサギが三匹なんとか確保できた。
それから運がいい。
「ククル、ククル、ゴブ」
「おお、美味そうだ」
「とる、とるべ」
今日はククルの実という赤い果実が豊作だった。
森の中にところどころに生えているのが、今が旬だった。
俺たちのパーティー五人でどんどん採っていく。
いわゆる狩猟採集生活というやつだろう。
まるで原始人だが、しょせんゴブリンである。
まあ、そんなものだろう。
背負い袋にいっぱいにククルの実を収穫すると、ゴブリンが満足気にニヤリと笑った。
緑の皮膚。短髪の灰色の髪に、しわくちゃな顔。
そして口元に伸びる牙。
背は十歳児くらいの身長までしか伸びない。
雑な草を編んだ服と半ズボンを着ている。
それからイノシシやオオカミの牙を吊るしたペンダントをしている。
ゴブリンにも文化らしきものがあり、ペンダントはお洒落なのだ。
イノシシやオオカミを倒すのは命がけであり、その牙を身に着けるのは、名誉であるとされる。
俺も戦士になるということで、今朝方、オオカミの牙が一本だけのペンダントを新しく与えられた。
他のゴブリンたちは複数本の牙をぶら下げていた。
リーダーのペンダントは中央にイノシシの大きな牙が一つに、たくさんのオオカミの牙が並んでいる。
ということでペンダントを見れば、そいつがどれくらいの戦士階級か分かるのだった。
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