卑怯な黒魔術師ウォーロックだとしてパーティーを追放されたけど、ユニークスキル範囲魔法でソロ余裕でした。今更戻ってこいと言われても、もう遅い

滝川 海老郎

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5.踊り子の服(1)

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 さて俺たちはゴブリンも倒し、報酬の金貨も手に入れた。
 実を言えば、ゴーストの欠片の換金額のほうがゴブリンの報酬よりはるかに高い。
 しかし「闇の聖職者」たる黒魔術師ウォーロックであるから、ゴブリンのような本当に卑怯な連中を放っておくことなどできない。
 卑怯と言えばドルボは俺を探しているらしいが知ったことではない。

「ゴブリンなんだが、知っているとは思うが女性をさらって犯すというのは本当だ」
「え、うそ、そうなんですか……」

 冒険者ギルドの中で次のクエストを探すように掲示板を見ながら雑談をする。
 隣にいたラティア嬢が俺の後ろ側に回ってきて抱き着いてきた。

 最初少し震えていたが、だんだん収まってくる。

「私、本当はゴブリン、すごく怖かったんです。はじめての本格的な戦闘で」
「そっか」
「はい。以前、ちょっとだけ戦った時に、襲われそうになって」
「そうか、それは災難だったな」
「ルーク様にくっついていたから我慢できたんです」
「ふむ」
「もっと、もっと強くなりたい、もう足手まといは嫌です」

 俺にギュッと腕を回してくっついてくる。
 また背中に柔らかい膨らみがこれでもかとくっついてくる。
 ドキドキしている心音すら感じられた。

 その感触はまさしくラティア嬢が生きている証だ。

 はぁはぁはぁという彼女のなまめかしい息遣いが俺のすぐ後ろから聞こえてくる。

 俺はエンチャンターの能力により自分の魔法が格段に強化されたのを実感している。
 しかし彼女は俺の彼女なしでの攻撃力を見たことがないので、自分の功績を評価できていないようだった。
 だから自分自身の力を過小評価しているのだ。

 「体の相性がいい」かはともかく彼女のエンチャンターの能力は俺が保証する。

「あの、私、強くなります。決意しました」
「そうか」
「踊り子の衣装、着ます」
「え、いいのか?」
「はい」
「どんな服か見たことあるのか?」
「はい、一度だけ、酒場で。……すごく布が少なくてびっくりしました」
「じゃあ、やめたほうが」
「いえ、着るんです。エンチャンターの能力って厚着より薄着のほうが効果が高いんです。だから、踊り子の衣装って本来はエンチャンターの衣装だったんだそうです」
「そ、そうか。なら俺は何も言うまい」
「いままで活躍する機会もなかったし、すごく恥ずかしいから着ようと思わなかったけど、うん、私プロのエンチャンターになるんです」

 踊り子の衣装とは。
 端的に言えば、すごく小さなブラとパンツに装飾がついたものだ。
 装飾品は魔術的作用があり、増幅効果がある。

 本職の踊り子はダンスを踊り神にささげることで、補助魔法の効果を出せる。
 神は彼女たちの「肉体美」を是としている。はるか昔は全裸で奉納舞をしていたらしい。
 一般人の前では普通のワンピースのような衣装を着ていたのだが、しかしやはりエンチャンターのような直接的なものより効力が低い。
 そこで考え出されたのがあの露出度の極めて高い、必要最低限の部分のみを覆う服装、いわゆる紐ビキニタイプだった。
 また装飾品は非常に高価だがそのぶん増幅効果が高くなる。

 ただあの布なんてほとんどない服なのに一体型になっている装飾品のせいで値段はバカ高いらしい。
 そのため露出度の最も高い踊り子の衣装を着せて踊らせるのを、王侯貴族が見世物として好むという、イヤらしい文化がある。

 エンチャンターはそうではないが、踊り子は分類上は娼婦の一種だ。
 つまり、そういう扱いだということだ。

 彼女は処女の踊り子になる、と言っているのだ。
 いくら服の起源がエンチャンターだろうと、あんな露出服恥ずかしいだろうに。

「いいか、俺は一応反対する。自分の身を犠牲にまでするものではない」
「いいんです。私、弱いから」
「弱くはない。はっきり言うが俺の範囲魔法は倍ぐらい強化されていた」
「倍ですか……」

 倍と聞いて、目を丸くするラティア嬢。
 ほんのり頬を染めて「倍、倍……んっ」とつぶやく。

「やっぱり体の相性、いいんですね」
「え、そうなのか?」
「前、野良で組んだ人は半分も強化されませんでしたから」
「それは、たぶん……」
「たぶん?」

 そいつが下心からのゲスい人種だったからだ。
 彼女の魔力はとてつもなく澄んでいる。
 当たり前だが女性をとっかえひっかえしてただれた生活をしているようなヤツの魔力は汚れていて、その汚れた魔力ではラティア嬢の綺麗な魔力と合うはずがない。

「そいつの魔力が汚れていたからだよ。綺麗じゃないと合わないんだ」
「そうだったんですねっ」

 ラティア嬢が俺の背中にくっついたまま、嬉しそうに小さく上下する。
 う、うん。上下すると体にくっついた柔らかい膨らみも上下に揺れて、ぷるんぷるんという感触があってたまらない。

 魔力の汚れは生活習慣と呪具などのお祓いグッズ、性行為の頻度で決まる。
 性行為はなければないほうがよい。理想は処女、童貞だ。
 坊主は肉を食わないがあれも一種の願掛け、または自己の呪いだ。
 別に肉を食わないという誓いを立てなければ関係はないので、俺は肉は普通に食べる。
 俺の最大の禁欲の誓いは童貞を貫くことだ。
 まぁ世の中には肉を食う生臭坊主と呼ばれる人種もいるが、あいつらは他の面でも汚れきっていて、今更肉くらいどうということもない、ということだろう。

 あまりにもラティア嬢がくっついてくるので、俺の禁欲の誓いを破らせようとする罠なのかと思うくらいだ。
 しかし彼女の顔を見ると素でやっていて悪気はないのだろう。
 いつ見ても聖女様のようなかわいらしい無垢な笑顔だった。

「それで踊り子の衣装、買うのか?」
「はっ、はいっ。どこで買いましょうか」
「ギルドのじゃダメなのか?」
「あ、そうですね。ギルドでも売ってるかもしれません」

 ということでギルドの売店でお買い物となった。

「すみません店員さん。あの……お、おお、踊り子の衣装っ、く、ださい」
「踊り子の衣装ですね?」
「はぃ」
「露出度が非常に高いのですが、大丈夫ですか?」
「だいじょうぶでしゅ」

 彼女は顔を真っ赤にさせて、まるで沸騰したヤカンのようだった。
 緊張しており、台詞も噛み噛みで、恥ずかしそうに小さい声で答えた。

 商品棚ではなく後ろの保管室から出してくれた。

「試着したほうがいいですね、胸のサイズがあうといいんですけど」
「はぃぃぃ」

 彼女の手に踊り子の服「紐ビキニ」が渡される。
 確かに手に乗っているが、布なんてほとんどなかった。紐だ紐。
 その紐に魔術用の金属の装飾がついていて豪華だ。

 試着室に入っていく。

 しばし待つ。
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