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3.エンチャンター(2)
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エロい顔を浮かべて、俺たちを奥に促す。
ラティア嬢の顔を見たら、目に涙を浮かべているが、声を上げて泣かないように必死に我慢していた。
俺の服の裾はシワがよって、痛そうなぐらいギュッと強く握られている。
こんな子になんてことを。守らないと。
そんな感情になるのは俺の中では非常に珍しい。
部屋に入り、内鍵をおろす。
これで、あのゲスい店主も入ってこれない。
「まったくクソ店主だったな」
「はい」
ラティア嬢は鍵を見て、ほっと胸をなでおろす。
その表情はまだ硬いけど、少しだけ安心したように無理やり笑って見せる。
「ところで、俺がラティア嬢を襲う可能性については、考慮しなくていいのか?」
「そういうことしない人だと理解しているつもりです。これでも人を見る目には自信があります」
「それでも、男は男だ」
「知っています。でも、あなたになら襲われても文句は言いません。金貨前払いですから」
今度の彼女はニッと笑って見せる。
冗談のつもりのようだ。全然笑えていなくて、痛々しいから可哀想だけど。
その健気な姿勢は、儚い美少女そのもので、このまま保存したい。
「私なんかの処女でも、高く、買ってくれるんでしょうか?」
「ちょっ、本当に処女なのか?」
「そうですよ、悪いですか。まだ体を売ったことはないです。いくら貧乏でも、エルフは体を安く売るものではないと、強く言われて育ちましたから」
「ああ、そうだろうな」
エルフは見目がいいため、奴隷でも娼婦でも高く売れる。
体を売るのは最終手段だが、安売りをしてはいけない。
もちろん本意は、誇り高いエルフは誰にだろうと体を売ってはいけないという意味だ。
そんな彼女が、優しく微笑む。聖母様のようだ。
「でも、あなたになら、抱かれても、いいです。売春がダメなら、無料でも、いい……」
「簡単に言ってくれる」
「簡単じゃないです。一大決心ですよ、これでも」
「そうなのか」
「はい」
顔はまた真っ赤になっている。
冗談にしても、本当にしそうで困る。
俺が真剣な表情で見つめてやると、耐えられなくなったのか視線を逸らす。
その流し目がエロい。
誘っているわけではないのだろうが、彼女の顔は整いすぎていて、どんな表情をしても、見ているこっちは劣情を催すようにできている。
無垢な少女が一生懸命誘っているようで、背徳的だとさえ思う。
「じゃあ、ほら、こっち来い」
隣のベッドに腰かけようとしていたラティア嬢を俺のベッドに誘う。
「ひゃい、その、優しくしてください」
「ああ、約束する。優しくする」
俺の横に立っているラティア嬢に、俺は魔法袋から、桶を渡す。
「はい? 桶ですね」
「ただの桶だ。しっかり持って」
俺はそこに、魔術でお湯を注ぐ。
こういうとき魔術師は便利だ。こういうことができる。
俺は最後にタオルを出すと渡す。
「お湯それからタオルですね」
「そうだ。向こう向いてるから、そっちで後ろ向いて服脱いで、体を拭くといい」
「あ、あの……」
「なんだ」
「ありがとう、ございます。何から何まで」
「いいんだ」
ラティア嬢は顔を赤くして、隣のベッドに戻り、こっちを見てくる。
「向こう、向いててくださいよ。ルーク様だから見ててもいいですけど……」
「いや、見ない。聖母ラルクーシア様に誓って、向こうを向いている」
「えっそこまで、私の裸、見たくないですか? やっぱり汚くて貧相ですもんね。なんだかショックです」
「そう言う意味ではない。君の体は綺麗だ。美しすぎるから、暗黒魔術師には眩しすぎるんだよ」
「ふふふ、暗黒魔術師さんですか」
「そうだ」
彼女は笑って、向こうを向いたと思ったらワンピースを脱いでしまう。
綺麗な背中、細い体が見える。
おっといけない。俺は聖母様に誓った身だ。後光に消し炭にされないように向こうを向いた。
「んっ、ふふん、ふんふん」
彼女が鼻歌を歌いながら、体を拭いている。
「お湯、気持ちいいですよ。ありがとうございます」
「ああ」
部屋は鼻歌以外静かだ。
他にはたまにお湯を絞る音がするだけだ。
なんだか想像すると、すごくエッチなので俺は緊張してくる。
「お湯で体を拭くのも久しぶりだったので、うれしいです」
「よかったな」
「はいっ」
お互い背中を向けて、たまに会話をする。
なんだかこそばゆいというのだろうか。こういうことは経験したことがないので、表現が難しい。
彼女の体は、いい匂いがするので、それが薄まるのは残念ではあるが、埃まみれなのは女の子には辛かろう。
「ありがとございました。終わりましたよ」
「ああ」
俺がラティア嬢のほうを向いたら、もう茶色いワンピースに戻っていた。
なんだか残念な気持ちもあるが、ほっとした気持ちもある。
「じゃあ次は、私がルーク様をお拭きしますね」
「はあ?」
「え、ダメなんですか?」
「自分で言ってる意味を考えてくれ」
「よく分かりませんでした」
これだから無垢は困る。
ラティア嬢の顔を見たら、目に涙を浮かべているが、声を上げて泣かないように必死に我慢していた。
俺の服の裾はシワがよって、痛そうなぐらいギュッと強く握られている。
こんな子になんてことを。守らないと。
そんな感情になるのは俺の中では非常に珍しい。
部屋に入り、内鍵をおろす。
これで、あのゲスい店主も入ってこれない。
「まったくクソ店主だったな」
「はい」
ラティア嬢は鍵を見て、ほっと胸をなでおろす。
その表情はまだ硬いけど、少しだけ安心したように無理やり笑って見せる。
「ところで、俺がラティア嬢を襲う可能性については、考慮しなくていいのか?」
「そういうことしない人だと理解しているつもりです。これでも人を見る目には自信があります」
「それでも、男は男だ」
「知っています。でも、あなたになら襲われても文句は言いません。金貨前払いですから」
今度の彼女はニッと笑って見せる。
冗談のつもりのようだ。全然笑えていなくて、痛々しいから可哀想だけど。
その健気な姿勢は、儚い美少女そのもので、このまま保存したい。
「私なんかの処女でも、高く、買ってくれるんでしょうか?」
「ちょっ、本当に処女なのか?」
「そうですよ、悪いですか。まだ体を売ったことはないです。いくら貧乏でも、エルフは体を安く売るものではないと、強く言われて育ちましたから」
「ああ、そうだろうな」
エルフは見目がいいため、奴隷でも娼婦でも高く売れる。
体を売るのは最終手段だが、安売りをしてはいけない。
もちろん本意は、誇り高いエルフは誰にだろうと体を売ってはいけないという意味だ。
そんな彼女が、優しく微笑む。聖母様のようだ。
「でも、あなたになら、抱かれても、いいです。売春がダメなら、無料でも、いい……」
「簡単に言ってくれる」
「簡単じゃないです。一大決心ですよ、これでも」
「そうなのか」
「はい」
顔はまた真っ赤になっている。
冗談にしても、本当にしそうで困る。
俺が真剣な表情で見つめてやると、耐えられなくなったのか視線を逸らす。
その流し目がエロい。
誘っているわけではないのだろうが、彼女の顔は整いすぎていて、どんな表情をしても、見ているこっちは劣情を催すようにできている。
無垢な少女が一生懸命誘っているようで、背徳的だとさえ思う。
「じゃあ、ほら、こっち来い」
隣のベッドに腰かけようとしていたラティア嬢を俺のベッドに誘う。
「ひゃい、その、優しくしてください」
「ああ、約束する。優しくする」
俺の横に立っているラティア嬢に、俺は魔法袋から、桶を渡す。
「はい? 桶ですね」
「ただの桶だ。しっかり持って」
俺はそこに、魔術でお湯を注ぐ。
こういうとき魔術師は便利だ。こういうことができる。
俺は最後にタオルを出すと渡す。
「お湯それからタオルですね」
「そうだ。向こう向いてるから、そっちで後ろ向いて服脱いで、体を拭くといい」
「あ、あの……」
「なんだ」
「ありがとう、ございます。何から何まで」
「いいんだ」
ラティア嬢は顔を赤くして、隣のベッドに戻り、こっちを見てくる。
「向こう、向いててくださいよ。ルーク様だから見ててもいいですけど……」
「いや、見ない。聖母ラルクーシア様に誓って、向こうを向いている」
「えっそこまで、私の裸、見たくないですか? やっぱり汚くて貧相ですもんね。なんだかショックです」
「そう言う意味ではない。君の体は綺麗だ。美しすぎるから、暗黒魔術師には眩しすぎるんだよ」
「ふふふ、暗黒魔術師さんですか」
「そうだ」
彼女は笑って、向こうを向いたと思ったらワンピースを脱いでしまう。
綺麗な背中、細い体が見える。
おっといけない。俺は聖母様に誓った身だ。後光に消し炭にされないように向こうを向いた。
「んっ、ふふん、ふんふん」
彼女が鼻歌を歌いながら、体を拭いている。
「お湯、気持ちいいですよ。ありがとうございます」
「ああ」
部屋は鼻歌以外静かだ。
他にはたまにお湯を絞る音がするだけだ。
なんだか想像すると、すごくエッチなので俺は緊張してくる。
「お湯で体を拭くのも久しぶりだったので、うれしいです」
「よかったな」
「はいっ」
お互い背中を向けて、たまに会話をする。
なんだかこそばゆいというのだろうか。こういうことは経験したことがないので、表現が難しい。
彼女の体は、いい匂いがするので、それが薄まるのは残念ではあるが、埃まみれなのは女の子には辛かろう。
「ありがとございました。終わりましたよ」
「ああ」
俺がラティア嬢のほうを向いたら、もう茶色いワンピースに戻っていた。
なんだか残念な気持ちもあるが、ほっとした気持ちもある。
「じゃあ次は、私がルーク様をお拭きしますね」
「はあ?」
「え、ダメなんですか?」
「自分で言ってる意味を考えてくれ」
「よく分かりませんでした」
これだから無垢は困る。
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