上 下
26 / 28

26 王様と食事会をする

しおりを挟む
 王様と食事会をした。
 いや、ね、俺もいきなりだと思うよ。

 でもほら「マルバード1623」「エッセンシャイン1640」の二つが時間経過のない特製のアイテムボックスで保管されてるのが少量ありますが飲みますか、って質問状出したら、すぐに王宮で食事会をするから一緒に食べようと手紙が戻ってきたのだ。

 ちなみに俺の名前は不老の変人として王様にも一応認知される程度には知られている存在だった。
 王様は国のことは何でもお見通しなのだ。
 もう一つちなみに、メイド服を流行らせたのも俺だって知っているそうだ。
 今では王宮でもこのメイド服は採用されている。メルベーレ王国の貴族の女性使用人といえばメイドさんだ。

 ドレスコードやテーブルマナーが嫌だと言っていたテリアだったが、王様がだいたいできていればいいと寛容だったので、しぶしぶ一緒についてくることになった。
 テリアもワインは飲みたいらしい。

 王宮のお忍び用の馬車が『マルスのお昼寝時』に到着した。
 俺たちを乗せて、ドナドナしていく。

 その馬車は一目見て高級品でサスペンションとかの構造が一般的なものと違う。
 見た目はシンプルだが知識人にはバレバレだろうこれ。

「ではお願いします」

 御者さんに挨拶をして王都内を走る。
 なんだかタクシーというよりハイヤーにでも乗った気分だ。
 異世界人のテリアには説明しがたいが。

 夕方の王都の中を馬車が駆けていく。
 建物の横をどんどん通過して、この前観光で見た王宮の正面の門を通過して入っていく。
 中も広い。
 建物の前には車寄せがあり、そこへ馬車が滑り込んでいく。

「ようこそいらっしゃいました」

 執事服の人が俺たちを迎え入れる。
 そしてたくさんいるメイドさんたちが一斉に頭を下げる。
 なんだか圧巻だ。

 どの子も美少女ばかりでそれからプロポーションも抜群な子たちばかりだ。
 ミニスカートとガータベルトから覗く生の太ももがまぶしい。
 その壮絶なお迎えを受けて中へと進む。

 一番大きな謁見室ではなく、横の会議室のような部屋へと通された。

「ようこそ」

 そこにはすでに王様、妃様、それから二人の姫様がお待ちかねであった。
 ちなみに王子様は今、南方へ行っていて留守だそうだ。

「北の方では、いただきます、というそうだな」
「ええ、よくご存じで」

 俺たちの習慣までご存じらしい。
 誰か情報を話したな、これは。
 俺が情報を集めているので、情報屋には知り合いが多い。
 その中の誰かだろう。まあ口止めはしていないので問題はないが、なんだか知られていると思うと、迂闊な発言はできない。

「ワイバーンのステーキでございます」

 おぉぉお噂に聞くワイバーンのステーキか。
 山の方に行くとワイバーンの巣がある。
 ベテランのAランクパーティーとかがたまに狩ってきてこうやって卸していくのだ。
 いい稼ぎになると言う話だった。
 彼らはいい馬もあるし、大きな荷物が入るマジックバッグも所有している。

「美味しい!」
「美味しいわ」

 俺もテリアも、旨味たっぷり、それでいて柔らかい。
 いい肉だ。これは美味しい。

「そしてこのマルバード1623」
「はい」

 赤ワインのビンテージが見事にマッチする。
 いい肉にいいワイン。素晴らしい組み合わせだ。

「続いてシーサーペントの唐揚げです」
「おぉおぉ、なんと」

 サーペントはヘビに近いが分類としては亜竜だ。
 ここ王都メルリードの高級食材だ。
 かなりの難敵だという話だが、しつこくない淡白な肉質の唐揚げはジューシーで美味しかった。
 ベテランの漁師がチームで捕獲してくる。
 難易度としては捕鯨に近いという。
 なんでもあのミサイルみたいなものに近い魔道具を射出して仕留めるという。

 サラダも山盛り新鮮野菜だった。
 コンソメスープは透き通っているけれど旨味があり、とても上品だ。

「食後にはエッセンシャイン1640をどうぞ」
「うむ、素晴らしい香り。これほど状態がいいのははじめて飲むな」
「大切に保管しておりました」

 そうそう、この白ワインは数年寝かせるくらいがちょうどいい。
 寿命が短いので、普通ならもう飲めないのだ。

「素晴らしい食事会だった。わが友、アラン・グリフィン・スコット」
「はっはい」
「たしか、その顔で九十過ぎだったな。達者で暮らせよ」
「ええ、いつまで生きてるかはちょっと分かりません」
「そうか」

 俺だって自分の寿命が分からないんだよな。
 ワインはちょっとずつ飲むしかあるまい。

 王様は案外気さくで話しやすかった。
 まあ不老長寿の俺は目立つから知ってるのは当然だったらしい。
 こういう交友も悪くはないな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

羨んでいたダンジョンはおれが勇者として救った異世界に酷似している~帰還した現代では無職業(ノージョブ)でも異世界で培った力で成り上がる~

むらくも航
ファンタジー
☆カクヨムにてでローファンタジー部門最高日間3位、週間4位を獲得! 【第1章完結】ダンジョン出現後、職業(ジョブ)持ちが名乗りを上げる中、無職業(ノージョブ)のおれはダンジョンを疎んでいた。しかし異世界転生を経て、帰還してみればダンジョンのあらゆるものが見たことのあるものだった。 現代では、まだそこまでダンジョン探索は進んでいないようだ。その中でおれは、異世界で誰も知らない事まで知っている。これなら無職業(ノージョブ)のおれもダンジョンに挑める。おれはダンジョンで成り上がる。 これは勇者として異世界を救った、元負け組天野 翔(あまの かける)が異世界で得た力で現代ダンジョンに挑む物語である。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

異世界札束ビンタ 〜異世界でメイクマネーしたおっさんの早期リタイア旅〜

bukocharu
ファンタジー
俺はしがないアラサーのビジネスマン、島田耕太郎。 サラリーマンではなくビジネスマンである。   趣味はこれといってなく、働いては眠り、働いては眠るの生活の人生をおくっていた。   おかげで金に不自由したことはない。 ある日の帰宅中、強烈な二つの光がオレに迫ってきているのを最期に地球での記憶はない。   気付けば、太陽が二つある不思議な世界にいた。   俗に言う異世界転生ってやつだな。 異世界に転生されたはいいが、お約束の神からのギフトなどなく、俺はスーツ姿のまま、見知らぬ草原に立たされていた。   それからはまあ色々あった。そりゃあもう色々あった。 どうにかこうにかして、異世界で自立できる基盤ができた時、俺はこの世界が前の世界より文化が遅れていることに気付く。   すぐにでも気付きそうなものだが、あの時の俺は生きることに精一杯だったのだ。 稼げることに気付いた俺は、また働きはじめた。   金はあるに越したことはないからな。   前の世界と同じよう、働いては眠り、働いては眠りの生活。   異世界に転生したかいがないと言われればそれまでだが、魔法にも魔物にも俺にはあまり関心がなかった。   最初はびっくらこいたけど、すぐに慣れてしまった。理屈はわからんが、そういうもんだと思って過ごしているうちに気にならなくなった。   つまりは、あっという間に俺はこの世界になじんだのだ。 働いて、働いて、働いて…… あれから幾年経ったかな?   立ち上げた商会もずいぶんとまあデカくなったもんだ。   俺も商会のこといまいち把握してないんだよな。 古い知り合いからの招待の手紙も溜まっていることだしちょうどいい。   ちょっと仕事から離れてみるかな。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

おいしいはなし〜あたしが聖女♡なの〜

十夜海
ファンタジー
あたし、サクラ。 サクちゃんって呼んでくれたら嬉しいわ。 まあ、ちょっとしたことがあって……気づいたらあたしの腕の中には可愛い少年がいたの。 え?この子が勇者? え?あたしが聖女? え?ええ?世界を2人で救う? なんで、あたしがそんなこと? というか聖女って……ついてたらまずいんじゃないの?何が?ってナニが。 あと、この子お持ち帰りしてもいいのかしら? なんて、おネエなおにい様が聖女として召喚されて、勇者様と戦いのたびに出るとか出ないとか、オネエ様にはとってもおいしいっていう、は♡な♡し。 うふ♡

異世界で【無職】に転生した俺はニートな人生を謳歌する。

ミカン♬
ファンタジー
前世ニートだった俺は事故で若死にし、異世界に転生。なぜか女神様から【レアスキル】を貰っていて、今世は人生を謳歌する予定だったのに、どんどんと厄介ごとに巻き込まれていく。俺の転生には謎がある? アサシンの執事にダンジョンに閉じ込められ、殺されそうになったけどコアと出会ってダンジョンマスターとなり、日本から禁忌の異世界召喚を受けた高校生たちを救う為に、属性ニートで怠惰な主人公が頑張るお話です。 2024/11/06 無謀にもこの長編が処女作で初投稿です。ちょうど(無職)が流行ってた時期で乗っかって書いた感じです。 何度も消そうと思ったのですがたまに読んでくださる有り難い方々がいらっしゃるので残しています。 ご不満な点が数多くあると思いますがどうか最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

処理中です...