上 下
47 / 67

47. 小麦

しおりを挟む
 よく「知らない天井だ」っていうけどね。
 この世界というか、地球でも近代までは二階とかない場合「天井がない」というのがスタンダードだったんですよ。
 うちも平屋で当然天井はついていない。屋根裏と部屋を分ける理由がないんだよね。
 だから寝てて、上を見るとはりがあるだけで、その上は屋根裏が見えている。
 暖房で部屋だけ暖めるという考え方もなく、まあこの辺は暖かい地域というのもあるけど、とにかく暖房も囲炉裏とかなので。
 煙が部屋に充満するくらいなら、天井がなくて屋根部分の通気口から煙が外に出たほうが、現実的でしょう。

 天井はないし、ついでに言えば、窓ガラスもないので、窓は板だけで閉じると真っ暗になってしまう。
 幸い明かりはあって、油のランプが普及しているので、夜は真っ暗にはならないかな。


 あれからドロシーは兵士たちに「ドロシー様」と様呼ばわりされている。一目置かれる存在になっている。
 毎日の訓練も気合いが入るってもんだ。

 父ちゃんたち建築組は、五軒目を建て終わった後、本当の宿舎を建てている。
 今の五軒目は設計が家用なので、多くの兵士が寝泊まりするのに向いていないし、執務室とかもないのだ。
 ということで、この集落で一番豪華な宿舎を建設中だったりする。
 宿舎が完成したら、五軒目から兵士は引っ越しして、五軒目のほうを新しい村人用にする予定になっていた。



 秋になったので、ようやく小麦の収穫に入る。
 小麦には、春蒔き小麦と秋蒔き小麦がある。
 春蒔き小麦は春に植えて、秋に収穫する。
 秋蒔き小麦は秋に植えてある程度成長してから冬を越して、春を過ぎて六月ごろに収穫するんだとか。
 俺たちの畑は、春蒔き小麦を栽培している。一応、パン向きらしいが、その辺は薄焼きパンにしているので、あんまり関係ない。
 小麦の裏作で菜種で油を取ってるのもある。

 連作障害ってのも気になるには気になる。田んぼはずっと田んぼだけど、米は連作障害にならないらしい。
 だから田んぼのイメージと、輪作で植える畑では、だいぶイメージも異なる。

「ささ、収穫しますよ」
「「「はーい」」」

 ドロシーが兵士たちを従えて、麦畑で声を上げた。
 兵士たちが麦畑の収穫を手伝ってくれるらしい。
 採集用かまとかもちゃんと持ってきている。準備がいい。

 こうして早々に、麦の収穫が終わった。

 収穫祭とはいかないけど、ちょっとした鍋パーティーをした。
 新麦で作った薄焼きパンも振る舞われた。

 あと、木琴とみんなの歌を、兵士一同の前で披露した。

「らららら~♪」

 俺はひとり木琴だ。まだ声変わり前だから一緒に歌ってもいいんだけど、せっかく美少女天使合唱団みたいな女の子たちがいるから、まあメインは任せよう。

「ドロシー様、リズちゃん、メアリアちゃん、みんな可愛いよ」
「いい歌だった」
「こんな辺境で歌を聴けるなんてな、わはっはっ」

 兵士一同にも好評だった。

「これは、町でやったら、おひねりがたくさんもらえるな」
「違いないなああ」
「天使ちゃんたちは可愛いなあ。うちの娘も仲間に入れてほしいくらいだ」

 自分の娘を思ってか、ちょっと年嵩としかさの一般兵のおじさんが涙ぐんでいた。

 トハムン村では客引きと子供たちを集めるために使ったけど、そうかおひねりももらっておくんだった。
 まあ貧乏村ではそうもいかないか。普段、旅芸人も吟遊詩人も来ないから、そういう文化がないんだよ、村には。

「ほう、なんだこれ面白いな」
「同じ歌をずらして歌うんだな」

 新技。そういえば一部の歌は輪唱ができるな、と思い出したので、三人に順番に歌ってもらって、輪唱にしてみた。
 三人しかいないので個人の技量も重要だ。でも三人ともびっくりするぐらい歌がうまいので、大丈夫。

 今度はハモったりするのも、教えようと思う。あれはあれでかなりかっこいい。
 この世界でそういう技があるとは思えないので、かなり受けると思う。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...