我はロドリゴル3世なるぞッ!

アキノナツ

文字の大きさ
上 下
2 / 20

2.下僕はどこじゃ?

しおりを挟む

「…ロド…3世か? 元気にしてるよ。オレだって、やるときゃやるって……ああ、大丈夫だから。切るよ。……じゃあね」

我、寝てしもうた。
あやつのマジックハンドは警戒せねば、オヤツを食べ損ねたではないか。うぐぐぅぅ…。

「起こした? 散歩いくか? あっ、ご飯が先なのか? ちょっと待てよ。メモ書き見るから…」

我はスマートなお犬さまなるから散歩が先ぞよ。分からぬ下僕よのぉ~。
玄関に纏められてる『お散歩セット』をちまちま運んで来てやった。

ほらッ、持ってきてやったぞとリードを咥えて、メモを見ていた男が居たところに来たが、消えておった。

???

ココは男の気配がいっぱいで何処にいるか分かりにくい。このかっこいい耳を忙しなく動かせば、いつもなら誰が何処かは分かるのだが、この男は大体しか分からぬ。
ムムムゥ、腹立たしいッ!

おっ、出てきた。着替えておったか。

くるっとその場で素早くひと回りして、しっぽフリフリ!
このプリチィーな姿に注目じゃ!

ポイッとリードを男の足元に投げた。

褒めよ。賢いロドリゴル3世を撫でて讃えよ。

短いしっぽをぷりぷり振った。

「玄関から持ってきたのか? 待ってりゃ行くのに…」

面倒くさそうに呟きながら、我が持ってきた物を拾って、斜め掛けにしてる布袋に放り込んでる。ジャージというのを着ている。アレになってる時は運動をする時だと記憶しておるが。
運動? 散歩じゃぞ?

「さて、行こうかな。えーと、ロド…もうロドでいいな」

お、お前ッ!
目が飛び出るかという程に見開いてしまったぞ!
我の名前をぉぉぉ!!!!!
我はロドリゴル3世なるぞッ!!!

「グゥゥゥ、ガウッ、バゥ!バゥ!」
思いっきり吠えてやった。

「え~、コレって名前に対する抗議?だよな。リードは持ってきてるし、散歩は行きたいって事だろうし。でもさ…、お前の名前ってさ。えーと……ロドリゴル。よし、覚えた…と思う」

3世が抜けておる!
スマホに『メモ書き』なる物があるのは、我でも知っておる。
適当に見るな!ちゃんと見よ!

バウバウ!
抗議する!
名前は大切ゾ。我の権威に関わるからのッ。
正確に呼べッ、下僕!

我の大事な下僕1号が悩んで悩んで悩んでつけてくれた名前なのじゃゾ!
大事な名前なのじゃ!分かっているのか!

「ホレ、行くぞ。ロドリゲス・・3世」

リードをふりふり玄関に向かう男の背中に抗議の上乗せで、吠えつきながら追いかける。

分かっておるか!

リードをつけてもらって準備万端。
この辺りはまだよく分からんから、案内を待つ。お利口な我は『待て』が出来るのでな。

横で屈伸。脚を開いて右左と揺れている。アキレス腱を伸ばして……。
ん?
コヤツ何をするつもりじゃ?

「よし、運動がてら行こうかね」

不安的中。

犬と遊べるという広場らしい。
我は男と走り回っておる。食前の散歩じゃなくて運動じゃ。全力疾走でへとへとじゃ。
男も顔を赤くして走っておる。息も切れ切れ、咳き込んだりしておるが、大丈夫か?

「やべぇ~、歳かなぁ…」

ゼェー、ゼェーの中にヒュー、ヒュー聞こえるぞ?
もう帰らぬか?
不安じゃのう…コヤツ。
心配になるぞ。。。

ーーーーー下僕1号は、何処へ行ったのじゃ?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら
BL
獣人王国の双子は駆け落ち者の子供だった。 引き裂かれた双子は再び会う為に戦う。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

ある意味王道ですが何か?

ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。 さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。 だって庶民は逞しいので。

処理中です...