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終.なんとなく、終わり。

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夜明けか…。
窓のカーテンが薄っすら明るくなってきてる。

俺たちは大の字でベッドで転がっていた。
正確には、幼なじみは俺の上でだらしなく伸びて、俺の胸に涎垂らして寝てる。緩んだ顔だ。

俺も寝たいな…。
掌を眺めながら、結んで、開いて…。ゆっくり魔力を纏わせてみた。

安定している。

俺が出来る魔術師だったら、すぐにどうにか出来ただろうに……。

なんとなく進んだ魔術師の道だったが…、これはこれで、良かったかな。

浄化魔法と洗浄魔法を駆使して、悲惨な事になっていたベッドと自分たちを綺麗にした。

部屋の空気も清浄にする。
終わると、全裸で合わさったまま寝てしまった。


◇◇◇


ぷるっと寒さに震えて目が覚めた。
前面は暖かいが…。
全裸でナニも被らず寝ていた。
肌寒さに納得した。
後ろを触って、ヌルみもなく綺麗なものだ。
どうやらオレの下敷きになってる男がやったらしい。
魔法が使えるようになったという事か。

肌寒いが別に我慢できない温度じゃない。

もう少しこの温もりを味わいたくなって、じっとした。

トクトクと心音が聞こえる。
昨晩の目眩く官能の夜は、一生の思い出になるだろう。

んー、コイツとの関係をどうしたものか。
今までと変わらずでいいだろうか…。出来るかな……。プラス、アナニスト仲間というのを加えてもいいだろうか…。えーと、たまには繋がっても……。それはダメだな…。

悶々と考えてたら、下の男が動いた。
顔を起こして、幼なじみを見遣る。

「起きたか…。顎が刺さる…」

寝ぼけておられるようだ。
オレの顎なんて痛くもなんともないだろうに。
パフっと雄っぱいに顔を埋めた。

「一服してぇ~」
煙草吸いたくなった。
身体が少々だるい。
あれだけやってこの程度で済んだのはある意味すごい事だ。

あの店で薬系はもう買わねぇ。。。

「吸うなら外でやってくれ」

嫌そうに言われてしまった。この工房には煙を嫌う物もあるのは知ってる。コイツ自身も煙りは好きじゃないと言ってる。
オレもあまり好きじゃない。好きじゃないが、親父をはじめ工房の職人に舐められたくないし、休憩時間に煙草がないとままならない。オレにとってはコミュニケーションツールだ。

「後でいいや」

「そっか…。冷えたな。シャワーでも浴びてこい。朝飯…昼飯だな。準備してくる」

日常が戻ってきた。

魔法で綺麗にしてくれてたから、浴びる必要もないが、この肌から離れて、頭を冷やす事にした。

戻ってくると、コーヒーの香りが部屋を満たしていた。

「腹減った~」

「ハードだったからな」
笑ってやがる。
オレも笑顔を返す。

食後のコーヒーを飲みながら、食事の時からなんとなく漂ってるコレ。気まづげで、なんとも言えない空気。
話す事にした。オレはそもそもイタズラ以外は、まわりくどい事は嫌いだ。今回は言いづらくてこうなってるが…。

「これからの事なんだが…」
口が渇くのでコーヒーを一口。

「これからの…?」
そのクマさんのマグカップ、可愛すぎないか?

「ああ、これからのオレたちの事」
今はソコじゃなかった。

「そうだよな。決めないとな。付き合うか」
似合ってるけど。自分で買ったのかな。プレゼントか? 誰から?って、今ソレじゃない。

「うん、付き合うか。ーーーーー付き合うッ?」
付き合う???どういう事? クマ、そこじゃない。なんだ?!付き合う?!

「付き合わないのか? アレは良かっただろ?」

「いやいや、なんだソレ。身体だけの付き合いって事か?」
コイツから出たとは思えない提案。びっくりだ。

混乱してるオレを観察するように、腫れぼったい一重の目を細めてマグカップを傾けている。綺麗な緑の瞳が見てる。

ははぁ~ん。スンと腑に落ちた。

「さては、オレのナニが気に入ったか?」
戯けて言ってみた。

オレはお前のが気に入った。
挿れられるのも、挿れるのも。

「ああ、気に入った」
ニシっと笑ってる。
ストレートに返ってきた。返ってきたよ。今日はびっくりさせられるな。
腹括るか。

なんだ、アレだ…なんて言うか、分かってたけど、お前の事、、、好きだ。

「分かったよ。付き合おう」

固い皮で覆われた掌を差し出す。
大きな手が乗った。柔らかい手だ。

握り、固く握手した。

「よろしくな」

手を離すと、よく分からないがひと息ついた感じ。
残ったコーヒーを口に含む。
いい感じの苦味。煙草はもういいかな。

「ところで、同棲はいつからする?」

思いっきり飲みかけのコーヒーを吹いた。

「同棲?!」

「お前の事好きだし、付き合うんなら、もう同棲もいいかなと…」

「好き? いつから? 昨晩ので? 好きって、身体だよな?」

質問しか出ねぇ!!!!

「ん? 全部好きだ。前から好きだ。言うつもりはなかったんだが…」
頬を掻きつつ、顔が赤らんでる。
可愛いな…って、今ソコじゃない!

「じゃぁ、なんで…」
られたくなくなった」
ニカっと笑った。
笑えるんじゃん!

紆余曲折の同棲から、オレの家族のアレコレなどを経て、数年後、オレたちは結婚した。


(終わり!)



============

本編は、終わり~。
最後は『俺』で締めたかったけど、コレがしっくりきたのでこれで終了。

後日談に『アレコレ』や『勿体ないって言ってたアレ』などなどのアレコレを書くつもりであります。

後日談が気になる方は、お気に入り登録、しおりなど如何でしょう?

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