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猫舌さん?
しおりを挟む「俺って猫舌でさぁ」
ゆっくり一人で飯にしようと思ってたのに、『暇か?』的に事前連絡もなく、ひょっこり現れたコヤツ。
許せん!
こう冷え込みが厳しくなる昨今、今日は鍋だねって、材料を買い込み帰宅。
明日はこれで雑炊にしてなんて考えてたから、多めに買ってきた材料を切りに切って、クツクツと炊き込み、あと少しで鍋の蓋を開けれる段の時に来訪者を知らせる電子音が広くもない部屋に響いたのだが。
何か頼んだっけ?って、ポチった記憶を漁りながら、鍋の支度に、ビールをセットして、あとはお楽しみまで来てたので、気持ちやガードはゆるゆる、気持ちはうきうきとしてたと思う。
だから、「はーい」と無確認でふいっと玄関を開いてしまった訳だ。
ホントに何も考えてなかったよ…。
で、顔を合わせた。
ニカっと笑う。同学部同学科の男がいた。
そんなに親しくはない。
ほけっとしてる間に、背も高い、横幅もガッチリした惚れ惚れ羨まし過ぎて腹の立つ身体の男は、「ちょっとそこまで来たらさ」と缶ビールがずっしり入ったビニール袋をクイッとオレに押し付けて、押し入ってきた。
重ッ!
あ! 待って!!
押し入ってきたよぉ!
慌てて追いかける。
「あれ? 飲み会じゃなかったの?」
「ほへ?」
冷えた袋を抱えて、間抜けな声。
「あれって鍋の材料だと思ってさ。あー、やっぱ、鍋だぁ」
ズカズカ入って、ローテーブルのオレの夕飯セットを見てる。
んもう! なんなのこの人!
「オレこれからひとり飯なんで、帰って」
押し付けられた袋を押し返す。
受け取ってくれない。
手をふりふり「おかまになく」なんて言って座り込んじゃった。
諦めた。
材料はたっぷりある。
この缶ビールが代金だという事だろう。
「分かったけど、上着脱いで、手洗いしてくれる?」
彼の器と箸を準備し始めた。
彼もニコニコと上着を脱いだり、手洗いしたりと大人しく従ってる。
大きな身体で従順にしてる姿がなんだか可愛く見える。
部屋が急に狭苦しくなって、室内温度が上がっても全然良くなった。
実は嬉しかったりする。
周りには言えてないんだが、オレはゲイなんですよ。
彼は、めっちゃ好みだったりするんですよ。
でもね、お近づきになるにしても、リサーチいるでしょ?
それとなく、取り巻きの中に紛れて、話題とか様子伺いしてたけど、とっかかりが全くなくて、諦めて、指咥えて鑑賞対象にしてたのでした。
腹が立つ程イイ身体してるんだよ!
オレの手に入らないんだよね!
キーッ!
これだからノンケに惹かれたらダメなんだよ!
こんな心の嵐の現状を無視して、オレの部屋の中をのそのそと……。
その丸くしてる筋肉質な背中、最高です。ダウン脱いだらぴっちりシャツって、オレを誘ってるのか?!
アカン。息が上がってくる。
渡された缶ビールを手にローテーブルに戻って渡し、座り込み、カリュッと開けた。
タブを倒して、乾杯と掲げる。
カツンと合わさって、一口。
キリリとした喉越し。ちゃんとしたビールです。やったね。
さっきまでのざわつきが少し落ち着いた。
鍋の蓋を開ける。
イイ感じ。
最初はよそってあげましょう。
ホレ、よこせとジェスチャー。
無言で寄越してきた。
なんだか阿吽の呼吸。付き合い長い間柄みたいじゃないか。ふふ~ん。
渡して、自分の。
腰を下ろして、一口。イイ味。グッド。自画自賛。
ビールも一口。
あー、幸せ。
音が静か過ぎるので、テレビをつけた。
ザッピングした。
適当なのがないな…。
歌番組にした。
視線を彼に戻すと、黙々と食べてる。
「どう?」
つい訊いてしまった。
食べてすぐ分かる訳ないじゃんってよく言われてたのに。主に歴代彼氏たちに!
圧しが強いらしい。気を付けてたのに!
あー、折角、お近づきになれるかもな機会がぁぁ…。
「うまい。この箸休め?も、うまいな」
え?
それも食べてくれたの?
褒められてる!
嬉しいぃぃぃい。
嬉しさのあまりビールを思いっきり飲んじゃった。一気飲み。
「ぷはぁー! 嬉しい。ありがとう」
空になってたので、掌を向けて、催促。
器を受け取って、よそってあげる。
もう、オレ甲斐甲斐しいよね? イヤーン、照れちゃう。
2本目に手を伸ばす。
カリュッと勢いよく開けて、呷る。
気分イイ。
テレビのCM。ドラマの宣伝か? キスシーンに思わず、視線をズラした。
彼がオレの様子に、テレビに視線。
「この女優好きなん? こういう唇のヤツとしたら、気持ちええんかな?」
トロンとした目に嫉妬した。
箸が熱々の器じゃなく別の器へ。
ん?
もきゅもきゅ食べてから、徐に、鍋のに。
一口食べて、ビールをちびっと飲んでる。
器の中で箸が突き動いてる……。
…………。
「実はオレの美味しくない?」
訊いちゃった。
「あ……、流石にサシだと誤魔化せないか」
テレッとしてる。
精悍な顔つきがちょっと柔らかくなって、きゃわいい!
オレはデレッとしてると思う。
「俺って猫舌でさぁ」
「猫舌ね…。舌の使い方が問題なんだよ」
猫舌は食べ物入れる時に舌を出してくるから、熱いのをダイレクトに感じるだけで、舌には問題ないのだ。舌の責任ではない。舌の持ち主の責任なのである。
「へ?」
彼は分かってない。
「だから、舌の責任ではなくて、舌の持ち主の問題なの」
「俺?」
「そう。アンタの問題。アンタの責任」
酔いが回ってたようだ。一気飲みの影響が…。
絡んじゃってるッ!
気づいた時には遅かった。
「どうしたらいい?」
真面目だねぇ。
なんだか揶揄いたくなってきた。
「こうやって…こうするの」
豆腐を四つに割って、ふーふー拭いて、ふわっと口に入れて、ハフハフしながら食べる。
「こう?」
見様見真似で頑張ってる。
涙目になりながらも食べてる。
ちょっと可哀想になったので、ふらつく足で、新しい器を取ってきて渡した。
「後で教えてあげるから、今は冷ましながら食べて。美味しく食べてくれる方が嬉しいから」
なんだか充分可愛い彼が堪能出来て、オレ的に満足しちゃったみたいだ。
それから暫く、普通に鍋を堪能した。
サシの飲み会ってどうよって思っていたが、楽しくなっていた。
酒の力も借りてたとは思うけど。
グッと気持ちの距離も近くなって、只今物理的にも近くなって、隣で飲んでます。
鍋も片付けて、ローテーブルには乾き物と酒。
ノンケだと思ってた彼が別に嫌がってる様子もないのも、相まって、身体がぴっとりとくっついてる状態。
はい、図に乗ってますね。
「猫舌さんに、教えてあげようか?」
缶ビールを揺らしながら、シャツの下でも浮き出る胸筋にしなだれかかって、指でツツーッとしてるオレは、、、どうかしてました!
「どうやって教えてくれるの?」
へらっと笑う彼を見上げながら、手元の缶ビールをローテーブルに。
伸び上がって、両手で頬を包んで、ゆっくり唇を合わせた。
チュッとキスして離れて、様子伺い。
彼は嫌がるどころか、薄っすら笑ってる。
なーんだ、いけるんじゃん。
て事で、張り切って唇をハミハミし始めました。
肉厚の柔らか唇を堪能して、舌でチロチロと舐めて、先を促してみる。
開いてくれない。
意地悪ぅ。
「舌入らせてぇ~。教えられないじゃん」
「そうだね」
薄っすら開いた。舌がチロっと出た。
うふふ…
引っ込む舌を追いかけて、お邪魔する。
『舌さん、こんにちは』とべろりと沿わせるように舐めた。
余裕ぶちかませていた彼がビクッとなった。
流石に驚いたか!
気を良くして、舌裏をコショコショしてやる。
逃げを打ち出した。
逃がしてなるものか。舌の動きが悪いんだから、訓練しちゃるって言ってんだよ!
ジュッチュ、チュッチュと唾液を啜りながら、何度も角度を変えて、キスをした。
チュッパっと離れて、彼を見れば、息が上がって……おや?
顔が赤いのは、置いといて、息が上がってるのはお互い様で、その目は、この場合、トロンと溶けてるのが望ましいのでしてね……。えーと、その目は一体?!
そんなギラついた目で見られましても……どうしたらいい?!
思わず、腰が引けて、彼に乗り上げていた身体を離そうとしたら、逞しい腕が腰に回って、がっしり捕まりました。
動けません…。
「舌使いの話だったんだ。俺は下手?」
顔を左右に振ります。
上手かったですよ。オレのいいところ刺激してきて、下半身ビクビクものでした。
「それは良かった。君の唇って気持ち良さそうだと思ってたんだけど、やっぱりイイわ」
女優云々言ってた時と同じトロンとした目…。
「俺、バイなんだ」
「!」
言葉がなかった。
「俺の事好きでしょ?」
「……」
益々言葉が出てきません!
顔真っ赤にして、涙目です。
主導権が完全に彼に移った、否、初めから、オレにそんなモノはなかったのです。
「買い物してる姿可愛かったよ」
ほっぺにキス。
「一人にしては結構な量に相手が居るのかと焦ったね」
こめかみに唇。
「飲み会かも知れないけど、そんな話聞いてなかったし、これは勘違いで突撃もありかなって」
額にキス。
「ひとり鍋で、明日の分もって可愛過ぎるんだよね」
鼻の頭に唇が触れた。
ああ、両想い?
でも、彼って彼女的な感じの人居たじゃん。
「あ、か、彼女…」
しどろもどろ…。
「とっくに別れた。クリスマスがどうの。あれが、これが、うるさくって。俺じゃなくて、アクセサリー的な財布が欲しかったみたいだったから別れた」
へー、そうなんだ。。。
「他に気にする事は?」
「あ、オレのどこがイイのかなぁ…とか?」
「んー、小柄で、色白で、唇がキュートで、声がちょっと高めでセクシーな感じ。それから、控えめで、臆病な感じなのに大胆なところとか?」
褒められ慣れてないので、頭のてっぺんから火が出るかってほどに茹で上がってしまった。
酒が回る。
「真っ赤で可愛い」
顔中にキスが降ってきた。
思わず目を閉じたら、瞼にもキスされてます!
こんなにチュッチュされた事ない!
「猫舌はウソ?」
甘い空気に居た堪れなくて、質問を口にする。
その口にチュッとキスされたぁー!
「ホント」
ぽやんとする頭に返答がこだまする。
「だから、ちゃんと教えて下さいね?」
オレの返事は、キスで消されてしまった。
絡み合う舌が、猫舌を疑いそうな程器用にオレを翻弄する。
押し倒されて、彼に包まれるように抱きしめられていた。
幸せの重みと体温。
前もサワサワと手が撫でてて…ゆるゆると昂らせていく様に、テクも敵わないと全面降伏させられ、ペロっと食べられるしかないオレ。
ああ、こんな酔っ払いってる時に、やっちゃうの?!
イヤ~ン。
ペチペチと背中に回した手を激しく動かす。
筋肉の身体には、オレの衝撃など屁でもないだろうけど、オレの心の衝撃はこんなものじゃないんですぅぅ!
「どうした?」
唇が離れて、糸が繋がってる状態だけど。息が上がって、へとへと、へにゃへにゃのオレですが、言います。
「今日は、キスまで!」
「はぁあ?」
「酔ってる時の最後までって、勿体無いもん」
今度はこっちから、噛み付くように唇を合わせて、舌を捩じ込んだ。
ムフンと笑いが込み上げてくる。
舌が絡んできて、どうやらOKが出たらしい。
ゆるゆるとキスを堪能すべく、彼に委ねた。
猫舌さんの舌を矯正しちゃうんだもん。
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