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番外編
在りし日の、
しおりを挟む宝飾店での一コマ。
前回書けなかったところです。
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「こちらになります。ご確認下さいませ」
ニッコリと女店員が接客してくれた。
爽やかな空気。きっちりまとめられた髪も似合ってる。
今まで対応してくれてた男性店員じゃなかったが、嫌な感じはなかった。
綺麗に整えられた指先が添えられて、ケースが開く。
シンプルなデザインの色違いの指輪が並んでいる。
うキュー~ーーーッと悶えそうなところを渾身のポーカーフェイスで耐える。
「どうぞ…」
嵌めて確認しろってか?
そっと自分のプラチナの指輪の方に手を伸ばす。横からスッと手が出てきて、持って行かれてしまった。
呆然と手の持ち主の優太を見遣った。
「俺がしたい」
優太が自己主張!
目力強ッ!
ここで有耶無耶にしてはダメだ。
優太がやりたい事は許容できる範囲で叶えるって決めたんだった。
「ぉぅ」
そっと左手を向ける。
オレ、がんばれッ!
冷たい手が添えられる。僅かに震える手と指が優太の緊張を伝えてくる。
フッと気持ちが楽になった。
緊張してるのはオレだけじゃない。
真剣な眼差しでオレの薬指に指輪を嵌める。
ピッタリだ。
オレはホワイトゴールドにしようと思ったのに、長く使って欲しいからと素材をプラチナにされた。
優太がオレの手をじっと見てる。
緩やかに口角が上がる。
オレは、徐に優太の指輪をつまみ取る。
呆然としてる。
さっき貴方がした事ですが?
掌を向けるが、一向に手が乗らない。
真っ赤になって引っ込めにかかる。
逃すかよッ。
さっと掴んで、淡い金色のホワイトゴールドの指輪を長い指に通す。
しっくりくる。
指輪が嵌った手を重ねていた。
不意に恥ずかしさがぶり返してきて、互いに手を引っ込める。
向かいに女店員がにこやかに見守っていた。
あーーーーーーッ。
「大丈夫です」
オレの羞恥心と心臓は大丈夫じゃないがな!
「良かったです。ーーーそのままでよろしいですか?」
固まってるオレに配慮してだろうか、そんな事を言ってくれた。
「あ、はい。このままで。ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございました」
受け取り書にサインして、無駄のない動きで、退出を促された。
今まで対応してくれてた店員さんにもよろしくとお願いする。
あっさりしてる方が嬉しい。
ケースを片付けて、ひと仕事終えた感じで座ってる優太を促して、店を出た。
「優太、どっかでお茶して帰るか? ドキドキが尋常じゃない…」
横の優太に声をかけるが、彼はオレの手をじっと見てる。
澄ました顔をしてるが、いつもと違う。どうも読めない。
コレはタクシー拾って真っ直ぐ帰った方がいいかもしれん…。
澄んだ青空がビルの合間に見える。
切り取られた青空はどこまでも青かった。
ーーーーーーー
おまけ》
『女店員さん』
なんなのこの人たち!!!
よく見たら、二人ともイケおじジャン。
タイプは違う感じだけどぉぉ…。
眼福!
先輩休みで良かった。じゃなかったら、私ここに居なかったわ!
風邪よ、ありがとう。
苦しい息遣いで『くれぐれもジロジロ見んじゃねぇぞ』って言ってたけど、どうせ、ここには先輩は居ないわ。
きゃぁぁぁああああ!
指輪交換?!
ここはチャペル?
私は立ち合い人?!
私は壁よッ!
無になって見届けるわッ!
うううううっ、滾るわぁ。
リアルBLよ。
自慢したいけど、プライバシーが足枷だわね。
いいわ、私の心のアルバムにしっかり収めるわ。
もう! 二人とも真っ赤ッ。可愛いおじさん達見ちゃった。
わぁお、目が合っちゃったッ。
いけない! 仕事!仕事よ!
「良かったです…」
ホント良かったわぁぁぁ……
応援ありがとうございます!
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