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寄添う二人
第6話
しおりを挟むくすぐったい……。
もう少し寝たいんだ……。
真司も可愛いイタズラするようになったな。
ーーーー?
真司は成人して随分になるじゃないか!
パチっと開いた目の前に、鼻歌でも出そうな表情で俺の前髪を触ってる倫がいた。
目がバチッと合う。
「おはよう」
ニッコリと倫。
「何してるの?」
倫が先に起きる事は滅多にない。
俺が倫の寝顔を見たいが為に先に起きてるところがあるが、自分の眠りは浅い方だと思うのだが。
起きた事に気づけなかった。
何故気づかなかったんだ?
なんだろう……安心感?ーーー何の?
どこにも行かない。ここにいてくれると思えるみたいなのかな。
何はともあれぐっすりだった。
そう言えば、なんだろうコレ?
昨日から胸の中が、気持ちいいぐらいしっかりとした重みを持った何かが嵌まり込んで……しっくり温かい。
今も、ほんわかとココが陽だまりだ。
倫の頬に手を伸ばす。
俺の掌にスリっと頬を押しつけて、ぐるりと滑らせて掌に鼻を押しつけきた。
「優太の匂い……」
頬を擦り付けたりして俺の手の感触を楽しんでるみたいだ。
俺も頬の感触を掌全体で感じて、時折り頬や鼻先を揉んだり押したり、指の腹で瞼を撫でたりしていた。
倫の顔の上をすりすり移動する俺の手に倫の両手が添えられて、ニッコリ笑ってこちらを見た。
「前髪弄って遊んでた」
そう言えば、質問してた。
忘れかけてた。
倫から石鹸の匂いがする。
ああ、風呂に入ったのか。
「おはよう」
起き上がって、Yシャツにスラックスの昨日のまま。
「ワックスとかつけたままだったから気持ち悪いんじゃない?」
それを触って君は遊んでた訳だが……。
額を触って笑った。
粘土遊びに近いな。
髪先が幾つも捻ったりしてあった。
「お風呂入ってきたら? ご飯作ったから一緒に食べよ?」
くふふ…と笑ってる。
上機嫌だ。
俺の手をとってベッドから引っ張り出す。
浴室へ背中を押されて促された。
「あはは、分かったから」
釣られて、笑ってしまう。
「クリーニング用の袋、置いてあるから入れてね」
ご機嫌に寝室に戻って、シーツとか外してるようだ。
今日も天気がいいな。
さっぱりして来よう。
ワックスもしっかり落とせてスッキリした。
朝食を終えて、コーヒーブレイク。
久々に豆を挽いて、ドリップする。
食器を洗いながら「今日はどうする?」と訊いてきた。
俺としては、昨日の続きをしたいところでもあるが、ごろごろするのも、天気もいいから出掛けるのもいい。
「んー、何がいいかなぁ…」
腰に手を置いて、湯を落としながら呟く。
「選択肢があるんだぁ」
マグを用意しながら、驚いたように言ってきた。
「選択肢は無いのか?」
横で湯を注ぐのをじっと見てる。
「今日は一日二人ともお休みだよ」
言葉が心なしか弾んでる。
「だから、色々したい」
用意してくれたマグに注ぎながら思ったままを口にする。
「色々って?」
ニヤッと笑う倫。
その顔にドギマギしてしまった。
「色々は…いろぃろぉ?」
なんだか顔が熱い。
マグを持ってテーブルへ。
ニヤニヤ顔の倫に腹が立つのに、可愛くて困る。
倫は相変わらず砂糖を入れて飲んでる。
今キスしたら、甘いのかな。
テーブルの向こうに倫がいる。
いつもの倫なのに、何か違う倫。
倫の雰囲気が変わった。
二人の空気が変わったのかもしれない。
俺も変わった?
◇◇◇
優太が寝てる。
オレ、抱き枕。
昨日、キスでふわふわして、とっても気持ち良かったぁ……。
先に進まずというか、キスすらなかなか深くならず、焦らされて、熱く蕩けに蕩けさせられた。
……とろっとろでした。
今も思い出して、うっとり……。
なんかキスだけでイけそうな状態で……イってたかも。
射精はしてないけど、気持ち良くて、ストンと寝落ちしてしまったようだ。
気持ち良くて、良過ぎて、ふわふわしながらボタンを頑張って外して、スラックスから抜き取ろうと、ふわふわ、ふらふらしてきて、指が思うように動かなくなってた。
横抱きにしてくれた時は、嬉しくて抱きついたら、優太の息遣いや心臓の音に…なんていうか、絶対的な安心感が襲ってきて……寝ちゃった。
あぁ! 寝ちゃったよぉ~。
昨日は朝からバタバタでだったし、気疲れもしてたかなぁ。
でも、あんなタイミングで寝ちゃうなんてさ。
やっと、優太と気持ちというか、何かがピッタリ重なれたのに……。
お腹の上で緩く組まれた腕を摩る。
腕の筋肉を指先でそっと伝う。
ーーーーー好き。
「……ぅんぅ……ん」
!!!
起きちゃう!
優太疲れてんだから、寝かせて上げなきゃ。
ダメじゃん、オレ!
そーーーーーっと、、、ね?
腕に乗せてた手をそっと離すと、脱出を試みる!
以前も抜け出た事あるから、解ってるもんね。
下へ、もそもそと、ゆっくり、ずり降りて……。
ハイ!
ベッドからスルッと降りて、決めポーズ!
改めて、優太の顔を眺める。
うふふ…眉間に皺がないね。
幸せそうに寝てる。善き善きぃ~。
オレも気分が良い!
頭もスッキリ。心が軽い。
ん?
なんだろう?
ま、いいか!
とりあえず、気分が良いのだ!
お分かりですか? 諸君?!
でも、身体は気持ち悪い。
おっ風呂ぉ~、お、風、呂ぉ~。
そそくさと優太を残して、寝室を出た。
ーーーーー酷いなコレ!!
リビングダイニングの空間が、荒れてます。
ネクタイ、ベストと拾って、、、急に居た堪れなくなって拾ったのも手放して座り込んだ。
きゅぁぁぁあ! 恥ずかしいぃぃ!
なんで、なんでこんなに恥ずかしいんだよぉ~!
ーーーーはぁぁぁ、おじさんがこんな事で悶えててもなぁ。
もっと恥ずかしい事、今までしてきた気はするんですがね……。
さて! ミッション開始!!
恥ずか死にかけて、自分を鼓舞する。
まず、片付けしよ!
風呂入って、ご飯作って、優太起こす!
お風呂準備しながら、脱ぎ捨てられたベストやジャケットなどを回収していく。
クリーニングですね。ポケットの中確認……OK!
サッパリして出てきても、優太は起きてこない。ぐっすりなんだ。
ご飯準備ぃー。パンで良いよね?
ーーーー出来た。
いざ! 倫、行きまーす!
寝室、オープンンンン。。。。
そっと、忍び寄ります。
ホント、ぐっすりなのねぇ。
寝顔見るのは良いんだけど、ちょっと吊り目のお目目が開いてくれた方がずっと嬉しいです。
「ゆぅたぁ、 おーきーてぇー」
ぷにっとほっぺたを突く。
起きないなぁ。
額にかかった髪。
ちょっと色っぽい?
触って、ちょっとベタついてるのに気づいた。
ああ、ワックスね。
オレもさっき、落とすのに四っ苦八っ苦でした。
ネジネジィィィ。。。
ネジって固めて、指で揺らして、、、遊んでます。
……猫の気分?
無心で捻って、揺らして遊んでたら、突然優太の目を開いた。
驚いたけど嬉しい。
「おはよう」
じっと見つめる。
なんだか急にびくっと固まってる。
変な夢でも見た?ーーーオレのイタズラの所為もあるよねぇ。うふふ。
「何してるの?」
優太の手が伸びてきた。
頬っぺた触ってきた。
気持ちいい。
猫な気分のオレはすりすりと掌に顔を押し付けて、遊んじゃう。
優太の手は包んでくれる感じで好き。
優太の匂いも好き。
すりすり……
はっ!
忘れてた!
気持ち良さにうっかり!
この手止めないと。
両手でしっかり捕まえてっと。
「前髪弄って遊んでた」
質問に答えれた!
やっと起き上がってくれた優太を急き立てて、お風呂へ追い立てて、掃除!
あっという間に一日が終わってしまうからね。
優太とゆっくりコーヒータイム。
久しぶりな事はないんだけど、なんだか久しぶりな感じがする。
優太は色々したい事あるらしい。
オレはイチャイチャしたい。
一日中イチャイチャしたいんだけど…ね。
オレがしたいって言ったら、「いいよ」って言われちゃうんだよ。だから、言わない。
意地悪じゃないよ。
優太がしたいって事をしたい気分。
何がしたいんだろうな……。
***
ソファで背もたれに頬っぺたつけて、ぼんやりしてます。
青い空と白いシーツを含めた洗濯物がベランダでパタパタしてます。
窓枠で切り取られた風景を見てます。
優太は電話。側に居ません。
居ないんだよ!
パソコンのある部屋で電話してます。
さっきまでの高揚感は地に堕ちて……。
教授からの電話ですって。
呼び出し?ーーー優太の恩師らしいけど、嫌いになっちゃいそう。
優太の目が甘くてね。
オレ見ててくれて。
もう良い雰囲気だったんですよ?
あと一息でしたよ。
ぎゅっと抱きしめてくれるはずだったんですよ、たぶん。
なんだか寂しい…とっても寂しいです。
……でも、悲しくて、冷たい雨に打たれてるような絶望感的な感じはないです。
ただ、傍らに居てくれなくて寂しいだけ。早く帰って来てねって感じ。
ぼーっとし過ぎて、気配に気づかなかった。
すっぽり背中から包まれた。
優太だ。
「おかえり」
オレから体重を優太に預ける。
「終わった」
くすぐったい。首筋に息がかかる。腹の底から安堵の溜め息。
「お疲れさま」
首元にあった腕を軽く叩く。
「もう掛かってこない。というか、もう今日は電話は取らない」
うふふ…
なんだろうね。優太の意志が固いですよ。教授が少し可哀想になった。
「疲れたぁ…倫で癒すぅ」
なんだか、本当にお疲れの様子です。精神的にって事かな?
さっきから髪とか頸とか匂い嗅がれまくってるんですが……。
ん?
これって…。何処かで見た事ある光景が浮かんだ。
真司くんが小さい時されてたなぁ。
オレが高校時もされてた気がするけど、軽い感じの……。
優太の愛情表現……だよね?
お疲れの優太さんの癒しだというになら、嫌ではないので、甘んじてされるままになりましょうかね……。
このスキンシップ、嫌いじゃないです。
好きです。
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