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守りたい。
第2話 (※)
しおりを挟むオートロックは不便だ。
すぐに部屋の前に行けない。
防犯上は良いんだろうから、文句は言ってはいけないな。
さっきから鳴らしてるんだが、応答がない。
部屋番号間違えたか?
初めてじゃないから間違えるはずがないんだが…。
ーーー間違えてないな。
俺が倫の事で忘れる事などないじゃないか。
いや、力説してもキモイ内容なので、スルーの方向で。
誰に言い訳してるんだか。
それにしても……応答がないね。
寝てる?
スマホを出して、コール。
ーーー出ない。
帰ってるはずなんだが。
余ったモノとか色々持たせたから、荷物がそこそこ大きくなった。真っ直ぐ帰ると思うんだが…。
倒れてる?
心配になってきた。
住人が出てきた。
開いた扉に身体をすべり込ませた。
何度か行った事があるから、迷わず部屋の前に到着。
ーーー吸い殻?
倫は吸わないし、吸ったとしてもこんな事はしないだろう。
インターホンを押す。
返事がない。
ちょっと迷ったが、ドアノブに手をかけた。
「開いてる……」
あれだけ言ったのに、ホントに!
「倫! 鍵はだな……なんだこれ?」
玄関を腹立ち紛れに勢いよく開けて、気持ちを乗せて、大きな声が出てしまった。が、直ぐに、言葉を飲み込んだ。
荷物が玄関に散乱して、靴が蹴散らされていた。
倫はこんなに風にする事はない。
いつものスッキリした玄関を思い出す。
「倫?」
呼びかけながら、中に入る。
ツンとした臭いが鼻についた。
吐いてる?!
「倫!」
慌てて入って、部屋に上がって立ち尽くした。
衝立や椅子が倒れてる。
荒れてる。
奥の部屋も荒れてるようだ。
引き戸のレールの上に手が見える。
倫だ。
抱き起こした。
吐いたその上に倒れてた。
気を失ってる。
呼吸はしてる。
良かった。
!
頬が赤く腫れてた。口も切れてるみたいだ。
汚れた服を脱がして、それで吐いた物とか拭きながら、汚れてない床に移動する。
胸と脇腹にアザ。
殴られたか、蹴られた?
一体何があったんだ?!
吐いた物と奥の部屋の主にベッドとその付近を片付けながら、着替えやタオルを探す。
湯を使って、拭いてやる。
ベッドは使えそうにないので、ソファに運んだ。
さっき拭いてて、首にも掻き傷を見つけた。
指を拭いてたら、爪に血がついてたから自分で引っ掻いたんだろうか。
服を着せながら、他にも怪我はないか、具に観察し、安堵と同時に後悔した。
倫の為とはいえ、倫は知られたくなかったかも知れない。
首の前に薄っすら帯状の痕があった。
首を絞められたのかもしれない。
引っ掻いたのは、抵抗したんだろう。
そして、これが後悔した事。
乳首が腫れてた。
胸にポツポツと鬱血がある。所謂キスマークってヤツだ。
たぶん性的な何かがあったんだ。
ズボンはずれてたが、下半身に何かあった痕は無かったが、何があったのかは、本人だけが知っている事で、推測の域を出ない。
もう考えるのはよそう。
救急箱を探す。
湿布や消毒液はなんとかある。
買い足したいが、ここにある物でなんとかしよう。
今、倫から離れたくない。
傷も手当てと湿布を当てたりと応急処置をする。
意識があったら、訊けるんだがと思ったが、脇腹は少し圧をかけて様子を伺う。
内臓にダメージがあるような反応はなかった。
しかし、ちゃんと吐けてて良かった。
喉に詰まってたら、救急車だったな。
ん?!
あわわ!
これって救急車呼ばないとダメない事じゃなかったのでは?!
真司の応急処置に慣れ過ぎてたッ。
勝手に身体が動いてしまったぁぁ!
慌ててると、呻き声が。
「倫?」
声をかけると薄っすら目を開けた。
俺だと分かったのか、肩に添えていた手に手が伸びると、袖をきゅっと掴んだ。
「優太ぁ……」
涙声だ。
「うん。大丈夫だ」
何が大丈夫かはわからないけど、真司に言うように、しっかりと言い切った。
ポロポロ泣いている。
「暫く、俺のとこ来るか? ウチからだって大学に十分行ける距離だろ? あ、朝のバイトは無理か……」
なんとかしないと思うと、頭の中は空回りするように回ってる。次々と、考える端から口をついて言葉が転がり出る。
「行くぅ……」
小さく弱々しいが返事があった。
「うん。支度……あ、玄関の荷物、あのまま持って行きけばいいか。貴重品まとめて…」
きゅっと袖を引かれた。
「あれは持っていかない。詰め直すから、手伝って」
起こして、水を渡した。
手が震えてる。
「病院行くか?」
思いっきり首を振られた。
一口飲んで、口を押さえた。
吐くのか?
そばにあったゴミ箱を引っ張る。
胃にある物全部といった感じで吐いていた。
背中を摩る。
何故か、俺の袖を握り締めて離してくれない。
「優太ぁ、居るぅ?」
掴んでいるんだから、居るに決まってるのに……。
「居るよ。大丈夫」
目を閉じてるから見えなくて不安なんだろう。
「もう、吐けない。出ないぃ」
泣いてる。
吐くのに疲れたのだろう。
「全部、出し終わったよ」
背中を摩る。現状を伝えてやる。
「終わったぁ?」
「うん。全部出たから。終わったよ」
「そっかぁ。もう全部出たかぁ。終わったのかぁ」
「うん、全部。終わったから、口を濯ごうか?」
「うん」
コップに水を入れて渡す。
口を濯いで、うがいまでしてスッキリした顔をした。
袖は離してくれてる。
昔、真司に使った暗示もどきが役に立つとは……。随分心が弱ってるのか。
ワードローブに向かって、あれこれ出してる。鞄を持ってきたら、入れ換えてる。
ベッドを倫の視界に入れないように間に立った。
「貴重品とかも持ってね。実家に帰る感じで。荷物は俺も持つから、多くなっても大丈夫だから。遠慮しないよ?」
うん、うん、と返事をしている。
◇◇◇
優太が来てくれた。
助けてくれた。
なんで来たのかは知らないけど、来てくれてありがとう。
いっぱい感謝やら、怖かった事とか言いたいのに言葉が出てこない。
色んな想いを込めて、袖を握ってた。
優太ん家に行く事になった。
ほっとしたからか、口にした水が剛の唾液を思い出して、今、この腹の中に入ってるんだと思ったら、吐き気が込み上げて来て!
吐いた。
吐きまくったのに、胃液しか出てこないみたいだ。
吐き気が治らない。
苦しい。
離せない袖を更に握りしめる。
優太がどっか行ったら嫌だ!
「大丈夫」「終わった」「全部出した」と繰り返し言ってくれる。
そっかー、終わったのか。もう大丈夫だな……と呑気に思い始めて、握りしめてた指を離す事が出来た。
指の感覚が無い。
ワードローブに向かって、着替えとか出す。
躍起になって、可愛いを追いかけてた以前の服を取り出す。
今着てる服もそれだ。
優太のイメージもこうなんだろう。
一人で持つには多過ぎる荷物だったが、優太が持ってくれたので、十分運べた。
怪我が治るまで厄介になるつもりだったんだが、優太って世話好き?
居心地良過ぎるんですけどー。
◇◇◇
倫さんがぼんやりソファに体育座りで収まってる。
観てるのか観てないのかテレビはついてるが。
朝のバイトは辞めたようだ。
いつまで休むか分からない状態は迷惑だからと。
暫く朝早く起きて行ってたけど。
後任が決まるまでの倫なりのケジメなのだろうか。
講義はどうしても行かないといけないモノ以外は行ってないみたいだ。
帰ると食事が出来てたり、家事が済んでたり。
倫はいつものソファの上でぼんやりしてる。
「倫、お風呂終わってるんなら、もう寝たら?」
「ん~」
唸ったまま動かない。
「じゃあ、待ってて」
俺が、ゼミの手伝いとかで遅くなっても寝ずに、定位置で待ってる。
一緒に寝たいらしい。
ここに来て初めは、来客用の布団を出して、倫を寝かしてたが、朝俺の横で寝てる。
必ずなので、理由を聞いたら、俺の匂いが落ち着くとか。
狭いから熟睡出来ないだろうと、ベッドを明け渡したが、今度はこっちで朝いる。
なので、今は一緒に寝ている。
ただ……朝起きると、真司と寝てた時よくやってたんだが、倫を抱き枕にしてる事が往々にしてある訳で。
今朝もしっかり抱き込んで、寝ていた模様です。
腕の中で、静かに寝息を立ててるから熟睡してるみたいだけど、なんだか申し訳なく……こういう状況でも幸せ気分の俺で……複雑で。
只今、前が……朝の現象の対処に困ってます。
元々淡白だったし、夜風呂でヌいたりして、夢精はしないんだが、対象のお相手がこうも毎日腕の中では、前が兆してしまう訳で……。
ちょっと辛い幸せを噛み締めています。
こんな事態じゃなかったら、襲ってる自信があったりします。そんな自信捨て去りたい。
只今、素数を数えています。
モソモソ腕の中で倫が動き出す頃には落ち着くのです。
「おはよう」
「んー」
モソモソ動く頭。思わず、つむじにキス。
真司にしてるのと同じ感じでしたら、思いっきり飛び起きた、倫。
目をパチクリさせて、俺を見てる。
どうしたんだろう?
「おはよう、朝ごはん作るね」
頭を触ってるから、気持ち悪かったのかな?
詫びの気持ちで、その上から頭を撫でた。
寝起きで、真司気分が抜けてなかったのかも知れない。
「んー」
何か不満気。
朝ごはんを食べる時も何か考えてるようだった。
「今日もゼミに顔出して来るから遅くなる。今日はホントに寝ててよ?」
「分かった。午後から大学行ってくる」
ざっくり今日の予定を言った。
一緒に出たり、時間差だったり。倫には合鍵を渡してあるので、出入りは自由だ。
「行ってらっしゃい」
手を振って倫のお見送り。
幸せ噛み締めて駅に向かう。
そういえば、倫の格好モコモコじゃなくなったな。
前よりも可愛い。
◇◇◇
優太のところに避難して、1ヵ月強、傷は治った。
そろそろ本格的に大学とか行かないといけない。
いつまでも優太に頼ってるのも悪いし、引っ越すかな。
今から探すのは難しいかなぁ。
あのお姉さんまだ不動産にいるかなぁ。
あれこれ考えながら、何も出来ないまま部屋の掃除をしてる。
ここに来て、動けるようになってから、家事をちょいちょいやってみた。
今出来る人、手が空いてる人がするが、オレん家のルール。
優太が嬉しそうにするから、調子に乗ってやってます。
布団も一緒で寝にくいだろうに付き合ってくれてる。優太の温もりが安心する。
今朝、頭にキスされた。
優太もオレをそういう対象と見てるのだろうか?
そう言えば、真司くんにもしてたか?
……あれは、優太の愛情表現??
あの部屋見に行きたいけど、怖いな。剛来ないよな……。
わざわざ男襲いに足運ばないだろう。あれはたまたまであって、本気じゃなかった……みたいだし。女に困るヤツじゃない。
大学が一緒じゃなくて、ホント良かった。
夢を見た。
剛が来る。
オレは小さくなって何処かに隠れてた。
息を殺して、小さく小さく……隠れてる。
誰か来た!
身体を固くしてじっとする。
ふんわり暖かいのが触れてる。
ふわふわでオレは、緊張していた身体を解して、その温もりに縋った。
ーーーー優太だ。
◇◇◇
遅くなった。
先輩と論文で意見が割れて話してたら、人が増えてて侃侃諤諤となり、教授も混じって講義となって、酒盛りコースになるところをなんとか抜け出して帰ってきた。
すっかり夜中です。終電逃すところでした。
倫は……寝てる。
疲れたのかな。良かった。
支度を終えて倫の横にお邪魔しようとすると、どうも様子がおかしい。
魘されてるのか?
小さく唸り声が出てるか出てないか。
息遣いは荒いみたいだが、歯を食いしばってるのか、小さくなって、何かに耐えてるようだ。薄っすら目元も濡れてる。
起きてるのかと思ったが、寝てるな。
そっと背中を摩る。
何度か摩ってるうちに、静かな寝息を立て出した。
良かった。
もう傷も打ち身も綺麗に治ってる。
何が起きたのかは訊いていない。
あの後、部屋の掃除に何度か行ったが、玄関の吸い殻は無くなっていた。
吸い殻の人物が加害者なのだろう。
モソモソ腕の中に入ってくる。
ヨシヨシと背中をトントンしてやると、ふにゃふにゃと表情が柔らかくなった。
夢は幸せなのが一番だ。
そっとこめかみに唇を寄せる。
……俺の可愛い倫。
もっと頼ってるくれていいんだぞ…。
守ってやるから。
◇◇◇
「優太ぁ、お願いがあるんだけど」
こう言うと、優太はものすごく甘く笑う。
本人気づいてないのかなぁ。
オレはこの顔を見たくて、時々わざとこう声を掛ける。
「部屋に行きたんだけど……怖いから一緒に来て欲しい」
甘い顔が険しくなる。
ダメか?
「分かった。大丈夫だから」
頭を撫でられる。
子供じゃないぞ。
膨れてたと思う。
頬を突かれた。
「真司くんじゃないぞぉ」
「ごめん!」
優太が慌ててる。
ちょっと楽しくなった。
明日、休みを利用して部屋に戻る。
手持ちの資料だけでは、困ってきた。
本とかが主だ。
早めに寝て、明日に備える。
息苦しい。
長い手足。
絡んで、動けない。
胸を大きく動かして、息をしようとするが、上手くできない。
ヒューヒュー
喉から細く、息が出入りするが、足らない。
助けて……誰か。
感覚が鈍い指を動かす。
目の前の誰かに縋りつく。
見上げると、苦しくて出た涙が視界を歪ませている。
耳の中でズクンズクン、シュンシュンと自分の心臓の音と血液が流れる音がする。息遣いでもいっぱいで、他の音が入ってこない。
オレひとり。
目の前の人は誰?
助けてくれる?
顔が近づいてくる。
!!!
キスされる!
嫌ぁぁぁぁぁ!!!
◇◇◇
腕の中の身体が熱い。
眠りの中から無理矢理引き摺り出された。
倫が凄い汗をかいて藻がいていた。
息が出来てない?
弱々しく縋ってきた。
魘されてる訳ではないのか。
起きてる?
背中を摩ってやるが、治まる様子がない。
随分と頭の位置が下になってる。
胸辺りに額がきてる。
丸くなろうとしてるからだろうか。
髪が汗で額に張り付いてるみたいだが、ちょっと見づらい。
こちらを見てる気はする。
寝起きで目が開かない。
シバシバする。なんとか開けるが、眠い。
メガネをすれば良かったんだろうが、すぐに倫の様子を確認したかった。
顔をよく見ようと近づいたら、暴れ出した。
驚いて眠気は何処かに吹っ飛んだ。
「倫! 倫! 大丈夫だから!」
唸りながら、力無く腕を振り回してる。
息遣いがおかしい。
「息して! ゆっくり! 大丈夫!」
背中をトントンしながら、抱きしめる。
「倫! 倫! 大丈夫だから! 倫!」
何度も呼びかけて、背中をトントン、トントン。
息を吐いた。
息の塊でも詰まってたみたいだ。
長く吐き出してる。
そして、吸った。
ゆっくりさせないと。
「ゆっくり、ゆっくり……」
トントンと背中を優しく叩く。
呼吸が落ち着いてきた。
「嫌だぁ……」
弱々しい呟き。
トントンは嫌だったか。
真司じゃないって言ってたな。
「ごめん、ごめん」
背中を摩る。
「優太もキスするの?」
唐突な発言に思考が停止した。
手も止まった。
「優太ぁ?」
覗き込んで見つめてる。
近いです、倫さん。
「何?」
「優太もオレにキスしたい?」
本心はキスしたい! めっちゃしたいです!!
が、しかし!
この状況の返事はこれじゃない!
「剛が、キスしてきた。嫌だった」
黙って聞いてる。
「男のオレが襲われるなんて、思いもしなかった」
だから、前言ったじゃんとは言わない。黙ってる。
背中を摩る。
「気持ち悪くて……嫌だった」
なにも言えずに、抱きしめる腕に少し力が入る。
「……身体も…触られて。もう嫌だぁ」
倫を襲ったのは、ゴウとか言うヤツか。
暗い思いに沈みかけて、啜り泣く倫に引き戻される。
背中を摩る。
「泣きたい時は泣いたらいい」
わぁんわぁん泣き出した。
呼吸にだけは、気をつけてやるか。
怖かったのだろう。
キスか……許すまじ、ゴウ!
◇◇◇
優太に頼り切ってる。
こんなじゃダメだ。
今だって、告白しちゃったし、泣いてるし、もう、何もかも嫌で。
優太に縋り付いて泣きながら、思った事を何も考えず、外に出す。
「キスしてぇ」
自分で言って、自分で驚いて、優太を見たら、驚いてるだろうと思ったら、辛そうに見てる。
「そういうのは、好きな人とする為に取っとけ」
「それまで待ってたら、気持ち悪さが先行する!」
もう何を言ってんだか。
「優太ぁ! して! キスして!」
なんかヤケクソ?
胸倉掴んで、睨みつける。
「お願い。してくれ」
ケンカ売ってるみたいだ。
オレのお願いに弱い優太。
利用してるのか。
依存してるのか。
なんだか分からない。
ぐちゃぐちゃだ。
「どうなっても知らないからな……」
どういう意味?
不意に唇が重なった。
甘い。
オレが女の子とするより甘いかも。
さっきから唇が擽ったくなるような、ハムハムと上唇を下唇を優しく喰んで、舐めて、吸われてる。
ついっと割れ目を舐められる。
中入ってくるの?
ど、どうしよう……。
ちょっとうっとりしかけてたのに、ドギマギと固くなって、唇を閉じようとしたら、するっと入ってきて、驚いて思わず口開けちゃった。
!!!
舌!!
絡んでる!
あうあう!!!
吸われてる!
腰クル……!
上顎を擦られて、ゾクゾクする。
しっかり優太を受け入れてた。
唾液が混ざる。
優太の……。
コクンと飲んだ。
甘く感じた。
ふっとこちらから絡み行っていた。
もっと感じたい。
口の端から唾液が溢れて垂れてる。
気持ち悪いとは思わない。不思議だ。
口の合わせの角度が変わって、急に荒々しく絡んできて、思わず、肩や胸を叩いた。
ところ構わず全力で叩く。
優太!優太!と心の中で必死に叫んだ。
「んー、んぅん! ーーーッ、んぅんん」
だって、だって、苦しい! 息できない!
叩き続けて、チュパっと離れた。
糸が繋がってる。
「…ごめん」
優太が小さく呟く。
ハァー、ハァー、と荒息が出るだけで、言葉が出ない。
なんで、優太が泣きそうなの?
ぎゅっと抱きしめられて、自分が震えてる事に気づいた。
「ごめん、ごめん…」
と言って、背中を優しく摩ってくれてる。
謝らなくて良い。
オレがお願いした事だ。
優太の背中に腕を回す。
そんなに身長が変わらないのに、優太の手足は長い。すっぽり抱き込まれる。
安心する。
頼っていいかなぁ。
気持ち良かった。
……眠くなってきた。
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