彼とメガネの彼の話【時々番外編更新】

アキノナツ

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二人っきり

第2話

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不味い。
非常にマズイ。
寝不足のまま、ホームに立ってる。
ホームドア、ありがとう!
心強いよ。
ふらつく足元。。。

……眠い。
無事帰り着かねば。

りんが待ってる。
待ってるはず。
待ってたらいいな。
待ってるだろう。
……待ってて欲しいッ。

取り敢えず、今日からしばらく休み。

移動は寝て過ごそう。

気が遠く……はッ!
今は寝るな!

この乗り換えが済んだら、寝れる。

ガンバレ。

昨日の朝、ゼミ室に顔を出したら、いい所にと拉致られた。

いつもなら嬉しいんですが、今回は勘弁して欲しかった。
データ入力だけって言ったのに、なんか色々頼まれ……気づいたら終電も出てた。

時々甘いのやら何やら渡されてて、作業に没頭して腹は減らなかったから時間の感覚がなかった。
なかったんだよ。

気づいた時の精神の減り具合は、半端なかった。

嗚呼ぁぁ!と、鏡になった黒い窓を見ながら呆然としていたら、じゃあ!って、ドンと酒瓶が出てきたら、あれよあれよと、巻き込まれて、……朝でした。

倫、ごめん……!

『明日行く』って送るのが精一杯。
そのあとスマホ取られるし。
楽しく飲んでるのにノリが悪いとかなんとか言われたけど、遅くなったら連絡入れるでしょ!
教授も奥さんに送んないの?

教授も先輩方も酒強過ぎないですか?
明け方ちょっと仮眠とってシャッキと作業に入ったり、帰宅したり。

俺あそこでやって行くんだよな……。

酒臭いかな。
シャワーは浴びて来たけど。
酒が抜け切らなかった。

座席にぽすんと収まった。

ふー、寝よ。

脱いだコートを頭から被る。
酒くさ!
自分の呼気で酔いそうです。

二人っきりになりそうなのはなんとか回避出来た。
1週間なんてムリ!

倫に嫌われる事しか見えてこない。

押し倒してる未来しか見えてこない!!!

縦しんば過ごしたとして、帰ったら倫が居て『おかえり』って倫。
一緒にご飯にお風呂?

優太ゆうたぁ』
……倫さん色っぽいです。

『行ってらっしゃい』と見送ってくれる倫が俺シャツ……夢のようだが、俺の理性が保つ気がしない…。

はっ!

実際そんな事はありえん!

NO妄想!

何気に倫になんて事をしてるんだ俺は!

コート外すのコワイ。
変な笑い声とか出たなかっただろうか。
脚をもじっと動かす。
ロングコートでよかった。

神さま…嬉しいけど、許してぇ。

ギリ宅飲みは、なんとか頑張ろうと思います。
でも、1週間は……ムリ、です。

宅飲みの約束して以来、予定が入れられそうだなとなると、緊張して言い出せなくて、有耶無耶にしてきたのに。

ついに倫から言ってきて、腹括ったら、1週間ウチにとか言ってきてパニックったよ。

咄嗟に帰省提案は、自分グッジョブ。

何も言ってこないのは有意義に過ごしてるんだろう。

実家には取り敢えずは連絡した。

真司しんじがどう反応するかで決めようとなったが、今おふくろが真司と話してるだろうな。
真司が生まれてから友達呼ぶの初めてで、久しぶりすぎて何をどうしたらいいか全く分からん。
外出するに限るな…。




目が覚めたら、降りる駅間近でした。
酒も抜けてきたかな……爽快です。

実家に向かうか。


「酷い顔ね…」
迎えてくれたおふくろが呆れ顔だ。
「ごめん。寝させて」
抜け切らなかった。トホホ。

荷物とお土産を置くと、自分の部屋へ。
支度してくれてる。
ありがとう!

寝ます。




真司のダイブで目が覚めた。

兄ちゃん殺す気か!
息止まりそうになったよ。

完全に酒抜けた!
窓の外がオレンジ。
夕方?!
二日無駄にしたぁ。

ス、スマホ!
倫に連絡を。

「倫? 今大丈夫?」
『大丈夫だけど、今日はどこ行く?』
「あ、あう…」
怒ってますよねぇ……

『冗談だよ。自分の部屋のに整理してたら、夕方になっちゃってたよ。母さんにさ、いい加減片付けてって言われたよ』
声が明るい。
ご両親は仕事で留守だったんだろうに、有意義に過ごせてたようで、本当に良かった。

「そうなんだ」

『帰って来て良かった。優太、ありがとう』

「うん。―――明日、山行かないか? 小学生が遠足で行くぐらいの手頃な山があるんだ。知ってる?」
『んー、知ってるかなぁ…忘れてるのかな。ま、いいや。行こう!』
「じゃあ、集合場所と時間は後で送る」
『うん、分かった。明日ねぇ』

電話切って、ベッドの上に座り込んで、検索検索!
最寄りの駅と集合時間と登山情報を少々。
猛然と纏めて、メール送信!

「ふぅ…」
やっとひと息ついた。
ベッドの上で、肩の力を抜く。

「兄ちゃん?」

「真司ぃ?!」
びっくりした!

そうだ、殺されかけたんだった。

「夕ご飯だよ」
ぽつねんとベッドのそばに立ってた。
騒がず待っててくれたんだ。

成長したな!

「ありがとう!」
全身で感謝を伝えたい!

スマホをヘッドボードに置くと、ガバッと抱きつこうとして盛大に空振りした!
にかっと笑う真司。
やるな! 弟よ!

ムフフ……
フフフ……

「真司ぃー、お兄ちゃんどうだった? まだ寝てる?」
おふくろが階段を上ってきた。

「あんたたち何してるの?」
俺と真司はガオーと両手を挙げて対峙していた。

「ご飯。下りてきて。ーーー暴れるなら、モノ壊さないでね。あんたたち大きくなったんだからね……」
驚く事も怒鳴る事も無く、静かに言い残して下りて行く。

ファイト!
二人の脳内にゴングが鳴った。



「タンマ、タンマ! 兄ちゃん分かったからーーーきゃっはははは! あははは! もうムリ! くすぐったい! ギブ!」

「真司は普通に起こせるよな? ダイブしていい年齢は越したぞ。できるか?」

柔道の寝技のように足を絡ませ、逃げれないようにして脇腹をくすぐりまくる。

「にゃはは! 出来る! 出来るから――!」
ヒーヒーと呼吸がおかしくなるちょい前。
そろそろか。

「よし!」
パッと離すと、ザッと間合いをとられた。

すばしっこさに拍車がかかったな。

「先行ってる!」

夕ご飯食べながら今後の話でもするか。

のっそり立ち上がって、伸びをした。

これなら泊まりとか出来るかも知れないな。
嬉しい成長。

自然と笑みが溢れる。



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