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後.思い出の地 (1)

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えーと、回収出来てなかったお話を。
皆さん、大体は予想されてるとは思いますが、よろしくお願いします( ̄▽ ̄;)


==============

馬車の窓の外を景色が流れて行く。

二人で休暇を合わせた。
そして、二人して同じ場所へ向かっている。

流れ行く景色から隣の彼を見遣る。
さっきからうつらうつらとしていて、身体がグラグランと揺れている。
危ないので、こちらにそっと引っ張って肩を貸す。

もう暫く馬車に揺られて行く。
馬を借りても良かったのだが、お土産が結構嵩張ってしまった。
それに少々彼はお疲れのようだから、魔法はやめて貰って馬車をチャーターした。

魔法連隊で何かあったらしくて古参の彼は何かと引っ張られて忙しそうにしていたようだ。
"ようだ"というのも内情は分からず、彼からは例の小鳥が『忙しい』とだけ伝えてきて、暫く会えなかった。

まだまだ互いの仕事場の事は分からずじまいのブラックボックス。
まぁ、二人で居られれば、それでいいんだけど。

というわけで、俺のティディはお疲れなのである。
あと数時間は眠らせてあげよう。

彼の寝息を感じながら、窓の外を見ていると、母と来た時の頃をなんとなく思い出していた。



今日は昨日会ったあの子と木登りの約束をしている。
母は危ない事はダメって言うけど、僕だって、男だ。やれば出来る。それに将来は騎士になってみんなを守るような男になりたいんだ。だから、木登りぐらいできないと…。

朝食を急いで食べて、一緒のついて来てくれてるメイドのカシュアに作ってもらったお弁当を鞄に詰める。
「行って来まーす!」と外に駆け出した。

斜め掛けの布鞄がお尻でポムポムと弾んでいる。
中のお弁当のサンドイッチはギュギュに詰めてくれてるから、多少乱暴にしても大丈夫なので心配はしてない。

泉に到着すると、彼ば既にそこにいた。

鞄を放り出して、木登りや手頃な木の枝を剣に見立てて手合わせをして遊ぶ。
お昼には一緒にお弁当を食べて、日暮まで遊ぶのだ。

「オレの教え方が上手いんだろうなぁ~」

自画自賛な口ぶりで彼が言ってる。
今日一日でずり落ち気味でも上まで登れるようになったのは確かに教え上手かも知れない。

「一緒に王都に行こうな」
「ああ、約束な!」

小指を絡めて指切りをした。

ティディに鍛えられて、木登りは帰る頃には上達していたと思う。
大人になった今も軽く登れる。体重やら何やらを魔法で誤魔化さないと木が保たないので、別な意味で難しくなっているが。

ーーーーそうだ。

あれは……いつだったか…。

母がちょっと発作を起こして、俺は側を離れられなかったんだった。
俺が母の手を握ってると不思議と発作は軽く済むから。手を握っていた。
それに「エドラ、エドラ」と切ない声で名前を呼ばれるから余計に離れられなかった。

発作も治って、母は静かに寝ていた。
もう大丈夫だとカシュアに言われた。
彼女は僕が誰かと約束してるのを分かってるようだった。だから、言ってくれているのだ。
嬉しかった。
今からでも十分遊べる。出掛けた。足取り軽く駆けた。

ティディに会いたくて。泉に向かった。着いたのは昼を回った頃だった。

泉近くで、ティディは座り込んで何かしてるようだった。
目の錯覚かと思っていたが、彼の周りがキラキラしている。

「ティディ?」

「あわわッ」

キラキラがザーッと地面に降り落ちた。
ティディの黒髪の上に光りの粒が幾つもついてる。

「脅かすなよぉ~」

情けない声でこっちを見上げる。

「ごめん」

あまりに情けない顔に申し訳なくなって謝ってしまった。

謝ったが、なんだか釈然としない気分になって、黒髪のキラキラを乱暴に払った。

「これなんだよ」

ムフフンと得意げな様子で掌にキラキラの光りが集まり形作られた。
氷の花。

「おぉおお!」

「オレの魔法」

「魔法だったら、僕も出来るよ」

対抗心からちょっと盛った。ほんの少しなのに。

「ほらッ」
指を擦り合わせてスナップ音と共に光りが散る。
内心ビビっていた。
顔に出ないようになんとか頑張った。

今までスナップ音が鳴った事なかったし、ここまで光が散るようなスパークが起きる事もなかった。
どちらかと言うとバチッと静電気の強い音のようなのが鳴って周りがびっくりする程度。
暴漢が驚いてくれるかってほどのはずだったんだが。

もしもの時は、これで脅して怯んでる間に逃げるか助けを求めろと周りには言われていた。

「凄いなッ。その光るの、玉にして投げれる?」

「ああ、出来るよ」
引き下がれなくなかった。

彼が氷の小さな結晶を泉の上の空間に撒いた。
キラキラとした細かな氷の粒が漂っている。
陽光を受けて虹でも出来そうだ。

「あそこに投げてッ」

指先にスパークを集めて、指を振った。
塊にはならずに雷の小さな粒が散らばった。

氷と雷の粒が打つかると、氷の粒が砕けて飛び散る。それが更に玉突きのように反応して煙るような霧になってその中を光りが走り回る。

綺麗だった。

二人して只々、言葉なく息を詰めて見つめていた。

虹色の霧が晴れたあと、二人で手を取り合って、奇声を上げて飛び跳ね回った。

凄い、凄い!の連呼だった。
綺麗だったねと言い合った。

そして、もう一度見たくなった。
さっきよりも、もっと凄いのが見たい!

「もっと大きくしたらもっと凄くなるんじゃないかな?」

二人はウキウキして、ティディが泉全体に雪を降らせるようにさっきよりも広範囲に高く氷を撒いた。
僕は指先にさっきの要領で、雷を集中して大きく密にして……大きく、いっぱい、集めて、、、泉の上の氷の粒の中に投げ込んだ。

光が散って、氷がカチカチとぶつかり合って、始めわくわくと眺めていた僕たちは段々と嫌な感じにそわそわとし始めていた。

ジリジリと後退り…。

電気の粒が方々で走り周り、氷の粒を弾けて、小さくなったり大きくなったり、高速で荒れ狂い始めた。
目の前で小さな嵐が起きていた。荒れ狂い大きくなってきた。

ティディが僕に掴まって震えてる。
後退りしていた足が動くなくなっていた。

大変な事になったのは分かってきた。
彼は怯えて何も出来そうにない。
僕がなんとかしないと。

氷だから熱で吹き飛ばせがいいんじゃないだろうか。
僕が使える魔法は熱風があった。
少し熱いぐらいしか出来ないけど、さっきみたいに頑張れば大きな風で吹き飛ばせるかも。熱く出来たら、氷を溶かせるかも。

氷のぶつかる音が激しくなって、ぶつかる度にスパークも起きてる。
僕の雷の粒以上の雷が生まれていた。

僕も怖くなっていた。

ティディが泣き出してしまった。

「かぁあああさまぁぁ!」
叫んでる。

僕が守らないと。僕はみんなを守る騎士になるんだ。
母も父も兄たちだって、領民だって!
国も守れる強い騎士になるんだから。

ティディを自分の後ろに押し込んだ。
僕の方が身体小さいから盾にはなれないかもだけど無いよりはいいだろう。

掌にさっきの要領で熱風の渦巻く玉を作って行く。
掌に収まらなくなった塊を目の前の嵐の中にに投げた。

自分史上最大の魔法の威力だった。

視界が真っ白になった。
次に赤くなり、周りが無音に。
身体が熱い…。



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