その温もりで抱きしめて。【時々番外投稿〜♡】

アキノナツ

文字の大きさ
上 下
14 / 31
恋の奮闘

5】我が道を走るッ!(後)

しおりを挟む
 
 通話中のようです。

「休日なのに仕事なのね。……近くまで来たからさーーーーハッ、つれないねぇ~。外で待ってる」

 たぶん電話の相手はダグだ。
 留守宅のダグのところへ行ってたんだ。

 サクとボクとの縁が切れていてもダグとの縁が切れてるとは限らないですね。あちらの方が古い知り合いのようでしたし。どういったお付き合いかは知りませんが。

 行ってしまったのを感じて、ホッと力が抜けました。
 良かった鉢合わせになってたらどうしたらいいか分からなかった。

 立とうとして、腰が抜けてしまってるのに気づきました。立てません。仕方がありません。ダグが来たら助けてもらうぐらいに考えようとぼんやりココにいる事にしました。

 ここは部屋のような空間です。大きな窓があります。そこから見てた時、管理人室の窓だと思ってたのが、ここのだったんですね。
 空気の入れ替えか、少し開いてます。

「ヨッ」

 サクの声にビクッとしました。どうやらそこにいたようです。そう言えば『外で待つ』と言ってました。ダグが帰ってきたって事でしょう。車のエンジン音が途切れました。

「来るなら事前に連絡と言ってるだろ?」
 ダグの声です。不機嫌な口調と同時に車のドアが閉まる音。

「わるい、わるい」
 全く悪いと思ってない声音のサク。

 ある意味この二人はバランスよく付き合っていたのかもしれないです。
 ボクの所為で二人の間に何か良からぬ事が起きなければいいけど…。仲がいい者の繋がりが裂かれるのは気分のいいものではないです。ボクはそういうのが辛いです。

「お前には世話になったよ」

「へ? 何ソレ? 今生の分かれみたいなセリフだな」

 そうです。ダグがサクの友だち関係をやめる事はありません。ボクがいつまでもダグのそばにいるのが悪いんでしょうか。そうですね…。
 ダグは優しいから、ボクのそばにいてくれるなら、ボクとサクが会うような事にならないようにしたいでしょうね。

 ボクは、ダグの友人関係をボクの存在で制限はしたくないです。ダグが好きです。そばにいて欲しいです。そばに居たいです。……勝手でしょうか…。

 ボクは、誰かが誰かの為に自分の何かを諦めたり、無しにしたりして欲しくない。我が儘でしょうか…ね…。

「コレ、今月の分。ーーーーそれから、残りの分」

「へ? 少しずつで良いって。定期収入みたいでオレとしては良かっんたんだけどぉ~」

「俺が良くないんだよ。やっと返せるようになった。助かった。お前のお陰で、屋号も下ろさずにここまでやってこれた」

「じゃぁ…」

「区切りをつけたいんだ。俺の、いや、俺は、お前に甘えてた」

「オレが好きで貸してただけだ。お前は、ちゃんときっちり毎月返してる。きっちりしてるよ、お前は…。オレが…甘えてんだ。ゆっくりでいいから…」

 ボクはなんか込み入った事を聞いてる気がする。なんて事を聞いてしまったんだろう…。付き合いの長い、なんだかいい感じの二人を…ボクが…こんなに仲がいいお友達を裂こうとしてる…。

 鼻の奥がツンとしてきた。
 胸が締め付けれてる。

 ボクはダグが好き。サクは好きにはなれないけど、もうあんな事をしないなら、好きじゃないけど、嫌いじゃないよ…。

「すまないが、ケジメつけさせてくれ。お前の知り合いとかを遠慮なく殴れねぇんだよ。ブチかませ…え? タクト、なんで?」

 ボクは表に駆け出していた。
 二人の前に飛び出しいた。いましたです。

「コレ、みんなで食べて。サクは、好きじゃないけど、ダグの友だちだから、友だちにはなる。友だちには嫌がる事しちゃダメだからねッ」

 ダグに大福の袋を押し付けて、サクを見て言い切った。思った事を言えてる。ボク強くなった…と思う。ちょっと涙声だけど…。

 サクにとってボクは友だちでもなんでもなかったと思う。セフレという範疇でもなかったかも。でも…。

 サクはポカンとしてた。けど、なんか、ニヤニヤし始めて…んー、なんと言っていいやら……うん、気持ち悪い。

「重ッ」
 ダグがいきなり渡された袋を落とさないよう抱えた。

「ダグ、タッくんと面白い事になってるね。もしかしたら、ニャンニャンしてるかもとは思ってたけどぉ~。うひひ、放牧したんじゃなかったんだ」

 サクが分厚くなってる銀行の封筒片手に頭の上で手をにぎにぎしてる。動物の耳でも模してるのだろうか。

「重ッじゃなかった。って言うか、放牧ってなんだよ」

 ダグがボクとサクを交互に見ながら、自分にツッコミ入れて、喚いてる。
 ダグの慌ててるところって、初めて…か?

「だって、譲れって言うからやったけど、お前そう言うの好きじゃないから、野に放ったのかなってさ」

「お前、そういうところがぁ! 今は、そうじゃ無くて、後だッ! タクト、なんでここに居るんだ」

「え? お茶でもと…」

 ニヤニヤしてるサクと真っ赤になってるダグ。ボクは、首をすくめて小さくなりながら、上目遣いで二人を見た。ダグは怒ってるみたいで…。
 手に変な汗が滲んでくる。

 逃げたいッ!
 唐突に思った。思いついた。

「ボク帰るッ。二人は友だちやめないでねッ」

 二人に背を向けて、ダッシュのために足に力を込める。走ろうとして、ガックと止まる。
 後ろに引かれた。腕を掴まれてるぅ!
 ボクの大好きなダグの大きな手! でも、この手の先の顔は、、、めっちゃ怖ッ! 怒ってるぅぅぅうううう! うきょぉぉおおおおお!

 手をこうして、こうッ…!

 護身術スゴッ! 感謝ッ。ボク大丈夫です。ヤッタァ~、出来たぁ~。

 ダグの手を振り解き、するりと抜けて、ダッシュッ!

 るんるんで駆けて行く。
 ボクは大丈夫です。どこに行っても大丈夫。この前のような危ない事にはならないですッ。

 後ろにダグの呼び止める声とサクの笑い声を聞きながら、ボクは風になって走った。隣り町まで駆けて行けそう。
 ダグの声が一瞬近くまで近寄ったけどすぐに遠退いた。

「速すぎんじゃあぁぁ…!」
 
 ダグが叫んでた。うん、ボク速いよ!

 うふふ、捕まらないよぉ~。



=================


えーと、この後も不定期更新です(ーー;)
回復してきてますが、完治までまだ…。諸事情もぼちぼちで( ̄▽ ̄;)
気長にお付き合いいただけたらと、お願いしますσ(^_^;)

続きが気になる方、お気に入りに登録または、しおりは如何でしょう?

感想やいいねを頂けたら更に嬉しいです。

感想欄の↓下の方にスタンプや匿名でメッセージ送れるの設置してあるので、使ってみて下さいv

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...