その温もりで抱きしめて。【時々番外投稿〜♡】

アキノナツ

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恋の奮闘

4】そばに居てくれますか?(後)

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 ボクは捨てられた訳ではないようです。

「お前も諦めるな。カラオケはまた今度な」
 ブンッとボクの横を何か通り過ぎました。
 襟首を掴まれ引っ張られ、気づいたらダグの胸に密着です。
 振り返るとボクを連れて行こうとした男が倒れています。えーと、ダグが殴った?

 周りが「ケンカだ」「通報ッ」とか騒ぎ出した。さっきはなにも気にしてなかったのに。

「行くぞッ」
 ダグが走り出した。ボクは引きづられるように走る。
 ボクは走るのは好きです。ダグについて走ります。楽しいです。

 空いてる手で濡れた目を拭います。ダグはボクを捨てたりしません。疑ってごめんなさい。

 いつの間にかダグが後ろです。
 腕が引かれました。
「おま、ちょっ、とま…ゲホッ」

 ん?
 止まりました。

 膝に手をついてゼーゼー、ゲホゲホしてます。
 ダグは走るのは得意ではないようです。

 そっか。ボクは捕まる前に走れば逃げれるかもしれませんね。捕まらなければです。腕力に問題がありますね。捕まらない…。そこが問題です。

 近くにあった自販機で水を買って渡したら、元気になってくれました。
 ぼちぼちと歩きながら、水を回し飲みします。

「走り。なんか部活とかしてたか?」

「してたけど…ぼんやり走るから、補欠。周回忘れるんだ」

「なんだそれ。周りが教えてやれば済むじゃないか」

「おー、ダグは賢いね。ボク、ぼんやりさんだから難しかったんだね」

「やり方次第だろう」

「良いんだ。走るのは好きだったから。走れてたら良かったんだ。カラオケ行こう?」

「暫くあそこには近寄れんだろう。どっかお前が好きそうな甘いのが…」
 スマホで検索し出した。

「ジャグジーのあるカラオケ」

 スマホを操作してる手が止まる。
「だから、それはラブホ。カラオケじゃない」

「泡風呂楽しいよ」
 ボクは自己主張してみます。さっきの人も言ってました。ボクの後ろは気持ちいい穴なのだそうです。身体でダグを引き留めます。

「したいのか?」

 以前もボクがしたいなぁと思った時は誘ってくれてました。
 たまには人肌恋しい事もあるだろうとか、変なのに引っかかるぐらいなら俺で発散しろとか言ってたなぁ。

 乗っかろう。

「うん」

「タクト、こういう関係をセフレってんだ。勝手だが俺はこういうのは解消したい」

「ボクたちってもうセフレだったの?」

 驚きです。そうだったのですか。頑張ってたのに。

「友だちになりたい。人肌恋しくなったら、ハグしてやる。お前抱っこ好きだろ?」

 抱っこ…。ダグに抱きしめられると気持ちいいです。
「うん。好きだね」

「えーと、なんだ…、ヌキたくなったら、手は貸してやる」
 ダグが赤くなって頬を指で掻いてる。クマさんが照れてる。可愛いです。好きです。

「ありがとう。でも、ボクはそういう気分にはならなくなったのでもう大丈夫だよ。ダグが気持ち良くなる事してあげたいだけだから」

「……どういう事だ?」

「ん? おちんちん勃たなく なったの。そしたら、されたいとかなくなっちゃったみたい」

 ダグの足が止まりました。顔が怖いです。
 ボクはまた何かを間違えたようです。今までもボクの何かが、相手を怒らせてしまうのです。
 ダメですね…。困りました。

 こういう時は、謝る? 距離をとる? 時間を置く? 分からない。
 だってどれも今まで上手くいかなかった。
 別の味方をしたら、上手くいってるとも言える。だって、縁が切れてしまってるから。会わなくなるのだ。会っても居ない事にされる。

 ボクは、ダグとは切れたくない。

「ダグ、ボクは、あなたが好きです。だから、このまま、関係が無くなってしまいたくないです。ーーーー相談です。どうしたら、ダグに好きになって貰えますか?」

 相談のカードを切りました。
 多分、これも間違ってますね。

 服の裾をギュッと握ります。じっとダグの言葉を待ちます。
 目を見たいけど、意気地がありません。視線がスニーカーの爪先を見てしまってます。

 さっき擦って、削れて汚れてしまった。

 足音が近づいてきます。
 去っていかない。去らない事にホッとして、指の力が抜けて、血が流れて、痺れて来ました。

 頭の上が温かいです。大きな手が乗せられてます。ダグは温かいです。
 ちょっと力が加わって上を向かされてしまいました。

 ダグと目が合いました。合っちゃった。

 こういう時は、笑顔です。なのに上手く笑えずににへらとなってしまいました。

 ぎゅっと抱きしめられました。
 視界が暗いです。ダグのお胸です。柔らかい胸筋は気持ちいいです。

 ダグの困った笑顔が視界を遮られる最後の景色。

「すまん。なんて言っていいか分からん。分からんが、そばに居てやる。今は、これでいいか?」

「うん」

 頷いて、お返事。
 お返事はくぐもってしまいました。ダグに吸い込まれたのでした。ボクがダグの一部になった気分です。

「お友だちです」
 ダグの大きな身体に手を回して抱きつきます。
 これがお友だちかどうかは分かりませんが、ダグはボクの一番近くに居る存在です。

 温かい腕の中で安心です。抱きしめて下さい。





=============

追記】

読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただけてると嬉しいな。

諸事情により連載が遅れます。
お知らせが遅くなってしまいました。
すみません。

続きが気になる方は。お気に入り登録やしおりなどどうでしょう。

なるべく早く復帰出来るようにします(ぺこり
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