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本編
20】変わりゆく(前)
しおりを挟むエロは、後半にあるよッ( ̄▽ ̄;)
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胸の中がざわつくが、構ってられない。急がねば。
絡む手を解き、清浄魔法をかけて、精液も蒸発させて消す。証拠隠滅。
ふらふらしているクンティンに服を着せて、横抱きにして部屋を出る。
クンティンがトロンとした目で俺を見つめてる。
「どうした?」
思わず訊いていた。
「綺麗な、目。春を、思わせる、色…。好き…」
呟きを聞きつつ歩みを進める。そういったのはよく言われる。なのに…クンティンから放たれた言葉は、いつまでも耳に残った。
部屋に入るとベッドに寝かせる。
「おやすみ。また明日」
額に掛かる髪を横に撫で付け、眠るように促す。夢だったんだと促す。またいい夢を見よう。
「エヴァンしゃん、気持ち良かった?」
じっと見つめてくる。
感想を求めてるのか?
「…良かった」
「そう…。おやしゅみ」
蕩けるような笑みを浮かべて、目を閉じた。
髪を梳くように撫でて…そに額に口づけしたくなったが、出来なかった。すぐにここから離れたくなった。
なんだかこのベッドは居心地が悪い。この部屋で話をしてた時もだったが、ここには近づきたくない気分だった。
クンティンが静かに寝息を立ててるのを確認して部屋を出た。
鍵を締める。内側からかかるタイプなので、あの男が勘繰ってもクンティンがひとりだったと思うだろう。証拠がない。主人特権。ちょっとした裏技があるのだ。ふふ~ん。
気分よく眠れそうだ。
クンティンの部屋をノックするが返事がない。寝てしまったようだ。鍵も掛かってる。俺の言いつけを守ってくれたようだ。
兄貴と色々話したが、あの酒は、どうも悪酔いをするようだ。話が楽しかった分、頭の重さと二日酔いの予感にウンザリする。
俺も早く寝よう。明日、回復薬か何かを貰うとしよう…。
目覚めは不思議だった。身体がふわふわする。頭もふわふわする。夢を見ていた。
自分の寝床にいる。んー…。横になったまま天井を見て考える。
昨日、エヴァンさんのところにサムエルに内緒で行ったのは、覚えてる。
自慰で浄化する様子を見せて…貰った…気はする。それから、甘い…のを口にした。ミードのボトルとグラスがあった…。あれを飲んだんだろう。あの酒は甘くて美味い。酔ったんだろうな。…観察出来たような気はする。話もした。その流れで酒を飲んだんだろうか。サムエルにバレないようにしないと。
んー、よく分からない。身体がふわふわ変な感じだ。
ん? 何か、思い出せそうだ。…綺麗なのが、目の前に、近づいてきて…。
コツコツと窓を突く音に思考が霧散する。
何か思い出しそうだった。とっても気持ちよくて…辛いような、でも、幸せな気分…。
窓辺に小鳥。
起き上がり迎える。
青白い小鳥が解けて紙になる。
アリスンが公国側の干渉地をモノにしたか。師匠が立ち回ったのが目に見えるようだ。
今頃は、きっと嬉々として浄化装置の設計図を書いてるだろう。オレの情報をもとに既存のをグレードアップさせてるか、はたまた新規か。
それは分からないが、アリスンの文面からもオレの情報を催促する圧がちらほら。彼女の意思じゃないのは分かり切ってる。長年一緒に旅をしてた仲だ。きっと師匠監修だな。アリスン、面倒臭い師匠で申し訳ない。
そして、もうひとつ。
今まで仕舞っていた手紙を取り出し並べた。
これはサムエルにも知らせてやろう。きっと驚くだろう。楽しみだ。
着替えて、彼のところに行こうと、ベッドを降りて、ふらついた。
ん?
魔力的には充実してるのに…。
自分の掌を見ながら、首を傾げてしまう。
自分の中を分析してみるが、自分自身はやはりよく分からない。
薬の実験なら体調から分析すればいいんだが、魔力や人体となると苦手な分野になる。
…なんとなく、魔力が…消耗して補充した感じに似てる?
消耗? いつ消耗? 魔力量は多いからそうそう消耗はしないのだが…。最近大量には放出してないよ?
よく分からん。
着替えてるところにノック音。
慌てて出ると顔色の悪いサムエルが立っていた。
「すまん。回復薬か、二日酔いの薬をくれ…」
ふらふらと入ってきて、椅子や机の上の本や紙の状態を一瞥してベッドに腰掛けた。あはは…、そこしか座れる場所がないね。
しかし、いかんな…。
『回復』と聞いて、アリスンを呼ぼうとしてる自分に自嘲した。
回復魔法はアリスンの役割で、オレのは小さな切り傷を止血する程度だ。
聖水と各種ポーションは、ダロンとアリスンが、自分たちの持ってる分を全部置いていってくれた。
やはりオレたちは、4人で成り立ってるのだと思い知った気分だ。
別れた時に分かってたつもりだったが…。
サムエルの様子に二日酔いにしては変な感じがする。
何がいいかと、テーブルの上の物を横に寄せて、荷物を漁って、薬やポーションを並べる。
これかな?
以前調合した薬の薬包を掴むと、サムエルの方を見れば、さっきの顔色から幾分か良くなってる…。
ん? ん??
「サムエル、気分はどうだ?」
「あ? んー、座ってるからか、少しマシになったかな」
早くソレくれよと言いたげな様子だ。まあ、分かるんだが、検証に付き合ってくれ。
「じゃあ、立って」
「はぁあ?」
うわぁ~嫌そうな声~。
「いいから~」
立ってもらって、感想を訊き、ベッドから離れて、感想を訊く。またベッドに近づいてもらって、感想…。
結果、ベッドに何かあると分かった。が、何があるんだ???
「もしかしたら、これか?」
流石に、オレが何をさせてるのか分かったようで、怠そうにしながらも、枕の下から包みを出した。
「なんだソレ?」
オレは知らんぞ。なんか怖いな。呪いのお札? あ、逆の作用が起きてるか。
「アリスンが、砕けた宝珠の砂を掻き集めて、回復祈願してくれたヤツ」
枕の下に戻しながら、サムエルが答えてくれた。
納得だ。
そういう事か! サムエルの不調は『穢れ』だ。
二日酔いの薬包から聖水に持ち替える。
置いていってくれたと言っても数が限られてる。大切に使わねば…。
ベッドの上に座りように促す。
どうやらベッド自体が聖域のようになってるようだ。聖水を半分飲んで、サムエルに空けるように促す。
手を繋ぎ『巡環』を行う。アリスンの置き土産の祈りの力を借り、さっき散らかった紙の中から探した魔法陣を二人の間に置く。
浄化に使ったあの魔法陣からヒントを得て、オレなりに描いてみた魔法陣だ。師匠に送ろうと思ってたひとつでもある。実験できたら報告書も付けよう。更に付加価値が付くだろう。
うまくいけよ…。
オレの汚染が弱い魔力と汚染された身体を巡る魔力を巡環させて、この魔法陣で浄化して『穢れ』を体内から追い出す。
アリスンがいたら、対象に直に出来るんだろうが…。
準備しながら手短かに説明したが、サムエルは理解してくれた。実験の件は伝えてないがね。
結果は上々。
ただ…、不思議だったのが、オレの中もかなり穢れが蔓延っていた。
元気になったサムエルにあの報告とこれからの計画を話した。
クンティンから聞いた時は、不思議な気分だった。
テーブルの上の物が別なところに移動されて、ポーチの中の手紙が並べられる。
文面はどうでもいいようだ。下の日付が見えるように並べられた。その横にクンティンの字で日付が書き加えられてる。
ニヤニヤしてるクンティンを放置して、数字を見ていく。
「期間が…。マジか」
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