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本編
17】魔王の思惑(前)
しおりを挟む夕食時に会った時、クンティンの魔力はほぼ戻っていた。凄い回復力だ。
これならどんな事をしても大丈夫そうだな…。どんな事をしようかのぉ~。くふふ…、楽しみじゃ。
改めて見るとやはり可愛い。
童顔でそばかすの平凡顔だが、可愛いぞ。俺は気に入った。
隣りのサムエルに睨まれている。
ん? 二人は欲を発散する仲というより恋人関係なのか?
傭兵や下級騎士の間では性欲の発散に交わる事があると聞いてたが、違うのか…。困ったのぉ~。
「魔王の名はなんと言ったか?」
サムエルが訊いて来た。横でクンティンが無心に食べてる。小さいのに大食漢らしい。魔力回復に体力でも使うのか?
「エヴァン=カプリーアだ。俺は、魔王でも、王子でも、公爵でもなくなったのだ。ここの『代表』という事になった。だから、エヴァンと呼んで良いぞ」
親愛で近づけば隙もできるであろう。
この大男、邪魔じゃ。
「エヴァン様とするか。魔王ってのもやっぱりしっくりこなかったんでな」
ワインに手を伸ばしてる。美味そうに飲んでるな。酒好きか?
「サムエル殿、酒は好きか? この後、一緒に飲まぬか? クンティン殿もどうだ?」
「ん?」
クンティンが慌てた感じで顔を上げた。
いきなり声をかけられて、驚いたといったところか。
口の端にソースがついてる。頬が膨れてるよ。口いっぱいに頬張ってるな…。可愛いぞ~。ホント可愛い…。
口に物がいっぱいで喋れないクンティンが、サムエルの袖を引っ張っている。モグモグいいなぁ~。いつまでも見てられそうだ。
「ん……。すぐに失礼するかもだが。まだ、疲れが取れてないのでな」
サムエルが乗り気じゃない感じだが、応える横でクンティンが頷いてる。
あの袖引きで伝えたのか?
取り敢えずは、親交を深めよう。
酒は美味い。料理も美味かった。
魔王がクンティンに近づいてくる。
話を振ってくるのは俺が先だが、クンティンの様子を伺ってる気配がある。
んー、値踏みしてる感じもするが、なんていうか…。気に入られようとしてる?
王子殿下だったのだろう?
傅かれるのが当たり前の男だろう?
所望するって要求を突きつけてくるのが当たり前じゃないか?
俺の偏見か?
んー、このワインもミードも美味い。
クンティンはミードが気に入ったようだ。また注いでる。俺もさっき飲んだが甘いが結構キツイ感じだった。仕方がない。酔い潰れたら担いで帰るか。
ミード、美味いのか…。飲むなぁ…。蜂蜜はやはりエネルギーになりやすいのか?
「本ならオレの専門書から艶本まで色々ありましゅよ。部屋に本箱あったんで、並べてましゅから、見に来ましゅ?」
ん? 呂律おかしくないか? やはり回復に体力が随分持って行かれたな。飯も大量に胃に入れていたし…。あれはもう消化されたっぽいな。
明日には元気に森にでも行きそうだ。俺としてはもう少し休んで欲しいんだがな。
「クンティン、そろそろ失礼するか。明日は外回りに行きたいんだろ?」
このまま放置してたら、今から魔王が本を見に来そうだ。
クンティンがこっちを見た。頬を赤らめて柔らかく微笑んでる。完全に酔っとる。
「よく分かってるね~。明日に備えて寝ようか。エヴァンさん、おやしゅみ~」
手のグラスを呷って空にすると、立ち上がった。よろけた。
ほら、言わんこっちゃない。
サッと支えて小脇に抱えるように引き寄せた。
「失礼する」
魔王の手が引っ込んだ。
危なかった。
変な魔法でも仕込まれたら困る。分析系は苦手なんだよ。
ガードが固い。
んー、大男は、酒は好きそうだったが、あれはワクだ。ザルどころじゃない。自覚もあるのだろう。酒の美味さも分かってるからか、味わって飲んでくれていた。あれでは幾ら飲んでも酔わないな。
別方向から懐柔するか…。
んー、あの男は、女好きだろうか?
「我が主、さっさと手を動かして下さい」
残務処理をチンタラやってると、冷たい声音。
「いや~ん、怖いよ、リューリ~」
情けない声で機嫌をとってみたがダメなようだ。さっさと終わらせるか。
「何を企んでるんですか? 彼らは我々を助けてくれた、謂わば恩人ですよ? 手は出してはダメですッ」
「ぶぅ~」
「ダメです」
ダメか~。障害が大きいほど燃えるのぉ~。ぐふふ…。
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