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本編

13】困った…

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「クンティン、訂正しろッ」

 俺は、バカな事を言い出した童顔バカの胸倉を掴んでいた。
 彼の手にはポーションの瓶が握られてる。そこまでして成功させたのに、何を言い出すんだ。
 ゴールは目の前だってのにッ!

「凱旋して、お前は褒賞貰ったら研究続けるんだろ? 冒険者の荷物運なんてしてたのだって、研究の為だって言ってたじゃないか」

 俺ばっかりが熱くなってる。

「だから、ここで研究するんだよ。結界は急拵えだったから手を入れる必要がある」

 胸ぐら掴まれた状態なのに、冷静な顔と淡々とした口調が腹が立つ。適当な事を言ってやがる。あの装置は動いてるじゃないか。もし手を入れるとしても、一度帰ってからでもいいだろ?

「報奨金はどうするんだよ」
「ああ、アレは行き先決めてあるから。生死に問わず出るって言われてたから、みんなも決めたんだろ? オレは、師匠のところにってお願いしてるから。無事渡ればいいね」

 完全に他人事な雰囲気が醸し出されてる。

「届けるのは凱旋した生き残りがって決まってた」
「そうだった? じゃあ、大丈夫だ。よろしくね」
「お前も帰るんだよ」

 平行線だ…。

 クンティンの頑固な一面がここで発揮されても困るんだよ。俺たちは一刻も早くここから離れないと、何かが不味い感じがする。特におまえ・・・がなッ!

「すぐ動けそうにないし…」
「俺が負ぶって行く」
「重いよぉ~」
「荷物は、おまえの能力でなんとかしろ。なんなら置いていけ」
「捨てたくないなぁ~。魔法陣もめんどいぃ~。やり残しを済ませるってだけだよ。残った方がいいんだよ」
「あー、なんだっていいんだよ。帰るんだ。ツベコベ言わずに帰るんだよッ!」

 早くここを出立したい。長引けば、魔王が何か仕掛けてくるかもしれない。アイツは何か怪しい。

「どうしたんだ…」
 ダロンが割って入ってきた。
 手を外された。離れる手が行き場を失って握りしめられる。掴んでないといけない気がして仕方がない…。

「サムエル、変よ…」
 アリスンまで俺を非難するのか。

「そっちでは50年ほどで帰るよ」
 クンティンがボソボソ言いながら、荷物を漁ってポーションを出してる。何本飲む気だ?と思って手元を見ていた。アリスンにやんわり止められてる。やはりおかしな量だったらしい。

「ここに残ったら、おまえが危ないんだ…」
 とうとう言っちまった。確信のない俺の勘だけの話。兎に角、連れて帰らなきゃ。

「へ? 何言ってるんだよ。もしかして、魔王に食われるってか? 童顔チビは範囲外だろッ。戻ったら、会いに行くよ」
 鼻で笑われたぁ~!
 兄貴が今のお気に入りって言われてたもんなぁ~。容姿のタイプはかけ離れてるよなぁ~。でもなッ、俺の勘がヤバイって言ってんだよッ!

「生きてるか分からんだろ…」
 俺も何言ってるんだ。なんて言ったら帰る気になるんだ?!

「帰ったら、どうしようかなぁ。論文バンバン書いて、一躍有名人? 勇者一行の荷物運びと同姓同名ってのでも騒がれちゃったり?」

 クンティンの明るさに、嫌なものしか感じない。

「研究対象が目の前だからって、嬉しそうにしてんじゃねぇッ。ここじゃなくても、結界の向こうでもできるじゃないか」

 クンティンの研究対象は『瘴気』または、『穢れ』や『汚れ』。

 彼の師匠は、公国の数ある研究所の中の一つのいち研究員だ。変わった論文とフィールドワーク重視の有名な変人だった。
 その師匠に師事してるクンティンも外へと出かけて、『穢れ』を追っていた。
 アリスンが捕まえるのに苦労したと思い出してはぼやいてたものだ。

「ありゃりゃ、バレたぁ~」

 戯けてるが、何か誤魔化してるのは分かる。一体何があるか分からんが、それもあるなら、一度帰って整えてからでも大丈夫だと説得しよう。
 一歩も動けないのは事実だろう。
 だから、身体が思い通りに動けない状態では、帰路で足手纏いになると思ってるのだろう。そこは、担いで帰ってやると押そう。

「帰りは、短縮で帰れる。ゴールはすぐそこだ。だから、帰ろう…」

「どういう…」
 ダロンが言いかけて言葉を飲んだ。気付いたようだ。あれだけ地図を見てたんだ、気づくだろう。

 アリスンがモジモジしてる。彼女だけこの話題から別のところを彷徨いてようだ。気持ち悪いな…。

「なんだ? アリスン」
 イラッとしてキツく言ってしまった。これ以上仲間で揉めたくないんだが。

「な、なんでもないわ。クンティン、帰りましょッ。荷物なら手分けすれば、なんとか…」

 急にアリスンが協力的になって来た。理由はよく分からんが有り難い。

「もうなんなんだよぉ~」
 クンティンが押されてきた。よし!

「なんでもいい帰るんだッ」
「そうよッ、帰るわよッ」
 アリスンと畳み掛ける。そばでダロンも頷いてる。
 さぁあ、ウンと言えッ!

「えーと、言いにくいんだが…。その…正直に言うとさぁ…。あの結界は、本当に未完成なんだ。いつ綻びが出てくるか分からんのよ。あはは…」

 頭をカキカキ、イタズラを見つかった子どものようだ。
 嫌な感じはこれだったのかぁあ?! マジかよぉ~。だから、残る気で限界まで放出したのか?

 どっと疲れた。
「おまえなぁ……。分かった。俺も残る」
 こうなったら守ってやるッ!

 アリスンがなんとも言えない顔で固まってる。
 ダロンが自分を責めてる顔で唇を噛んでる。

 なんて事だ。ダロンはこういうの気に病むんだよ…。
 ダロンの肩に手を置く。
 お前の所為じゃない。

「ダロン、お前の所為じゃない。みんなで決めた事だ。クンティンが手を抜いただけだ」

「え~、ひどい~」

「本当は間に合わせられたんだろ? ある程度ってのが我慢できなくて、上を目指しただろ? ダロンを嫌な気にさせんな」

「だから、言いたくなかったんだよ」

 クンティンが口を尖らせてる。彼なりに事をうまく納めようとしたんだろうが、思いの外反対されて面食らったか。自身が狙われてるとは思ってないから悠長だ。

 困った。

「ダロン、すまない。オレのエゴ。自己満足の世界なんだ。もう少しやってみたいんだよ。それに、ここからマジで動ける自信がない」

 俺が頑張るしかないか。

「分かった。それから、もうひとつ、困ったことがあるんだ」
 ダロンが言いにくそうに言ってる。何か気づいたららしい。

 まだあるか?!

「魔王を討伐した証拠が…。瘴気は残ってるし…」

「「「ああ…」」」
 やっべぇ~。






============


さて、人数も減る事だし、加速つけて行きますよぉ~。頑張るべッo(・x・)/

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