魔王ってなにさ

アキノナツ

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12】決行。そして…(後)

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 気づいたのは俺が最初だったらしい。
 重なり合うように倒れていた。
 魔法陣が消えていた。
 静かだ。
 そばの机にある小箱から鼓動のような振動音だけが聞こえていた。

 重い身体を起こし、座り込む。
 魔力が枯渇してる。巡環してたのに…。ああ、魔法陣に使われたのか。
 結界の装置が作動してるという事は成功したんだ…。

 サムエルが呻きながら起きた。
 さすが回復オバケ。容量は大きいのに。身体の大きさに比例するのだろうか…。
 目が合う。

 胡座をかく彼が笑ってる。成功を確信しているのだろう。
 そばのクンティンをそっと抱き寄せて、すっぽり彼の腕の中にはまり込んだ。
 そうだった。小柄なのに彼が一番の魔力持ちだった。顔が真っ青というより、真っ白になってる。
 回復に難があるんだった。

 俺が近づこうすると手で静止された。

 もう一つ動く影が。魔王が起きた。
 彼が起き上がろうとしたら、バランスを崩した。アリスンがしっかり手を掴んでいる。

「熱烈だな…」
 戯けてるけど、声の端々に忌々しげな香りがする。
 サムエルの忠告があったから、気づいた微かな気配だった。

「あなたに、勝手は、させ、ないわよ…」

 少し遅れてアリスンが目を覚まして、握る手に力を込めたのか、魔王が痛そうな仕草をしてる。

「皆、魔力が枯渇してる。各々休んで、調査は回復次第にするでいいか?」
 俺は、皆に許可を取るように見回す。

「そうだが、これからの事を話したいから、4人一緒に」
 サムエルがクンティンの額に手を置きながら、訂正してきた。そうだ。早く行動しないと、外の時間が過ぎていく。

「そうしよう…」俺は同意して立ち上がった。

 それを見ていた魔王が、アリスンの手の甲に口づけて、手を離させると立ち上がった。

「俺は、執務室にいる。リューリと調査しておくよ。動けるようになったら来てくれ」

 アリスンが嫌そうな顔で手を振ってる。清浄魔法かけてる…。失礼だよ…。

 クンティンの顔色が少しよくなってる。眠ってるようだ。
「装備を整えて、俺の部屋に集まろう」
 サムエルがそう言い残して去っていく。なんだか、気持ちの距離(?)を感じた。

「分かった」
 残された俺たちは足早にあとを追った。






 俺の勘が正しければ、あの会談時に魔力の充実していた勇者に目をつけたと考えるのが順当だろう。あの目の感じ。嫌な感じがする。
 彼にその気がなくても本能的に魔力の多い者。相性のいい者を無意識に選んでるとしたらだが…。多分俺の勘は正しい。

 あの時、俺の腕の中のクンティンを見られてた。
 俺の腕が切られるような視線。クンティンの中を見てくるような視線だった。
 腕の中のクンティンを抱え直し、しっかり抱き抱える。
 大切な仲間だ。渡すかッ!

 俺の魔力譲渡とアリスンの回復魔法で、漸く目を覚ましたクンティンが、慌てて、魔法陣のあった部屋に連れてけと命令してきた。
 俺は素直に従い、彼を運ぶ。

 部屋では、降ろせとうるさいので、これまた素直に従った。ここにくるまでもうるさかったが。俺としては随分な譲歩だが、急がなければならないのはよく分かってるから、ぐっと堪えて従うまでだ。

 クンティンは、よろけながらも魔法陣のあとを確認して、装置の作動状況を見ている。

 尻餅をつきそうに身体が揺れたので、すかさず支えた。

「やったよ。成功だよ。フィンさんにでも光りの柱がどうなってたか聞こうかなッ」
 青い顔じゃなかったら、素直に喜べるんだが、嬉しそうなクンティンに頷きで応えて、ヨイショと抱き抱えた。

「歩けるぞ」
「回復に回せ。すぐにでも凱旋だ」

 ダロンとアリスンの待つ部屋に向かう。
 クンティンは、俺に凭れ掛かって、丸くなってる。つむじしか見えない。胸がざわつく…。

「一緒に帰るぞッ」
 つむじに向かってキツく言った。






================


なかなか書けない状態でしたが、連日外回りラッシュ(予定になかったやん)をなんとか乗り越えてました(ーー;)偉いこっちゃ。。。

お話は、やっとターゲットロックオンッ!かな?( ̄▽ ̄;)

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