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7】魔王城(後)
しおりを挟むそうか…。彼らは瘴気への耐性があるのか。
耐え得るだけの聖魔法を持ってる。
なんとかこの瘴気を無くす知恵を貰えるかもしれない。
やはり話がしたいな。
「魔王さま、勇者さま達が見えて来ましたよぉ~」
メイド服が色っぽい侍女が、ノックもそこそこに扉を開けて、報告してくれた。
では、迎えに行こうかと立ち上がりかけた肩に手が乗る。制止された。
「主、自ら行くのは良くありませんよ」
「と言っても、俺とお前だけだし。俺、ここの主人だし」
ブーブー言ってやった。
「だから私が行きます。主は話をどうするか考えを詰めておいて下さい」
爽やかに言ってくる。俺、領主、もとい、魔王だった。
「あっち武装してるよ?」
俺は腐っても王子で、ある程度武術も心得てるし、剣の腕もそこそこだったんだけど…。ゆくゆくは騎士になる予定だったんだよ。
「まぁ、なんとかなるかなぁと」
苦笑い。
仕方ないなぁ。
「ゲアントォ~」
のっそりと大男が簡易アーマー姿で現れた。
急所だけをカバーしてるだけのアーマーだった。傭兵時代に使っていた物らしい。
「宰相さん、よろしくぅん。後ろで立ってるだけでも威圧になるでしょ? いざって時は守ってあげる」
男娼の男だ。
最近の夜の相手だが、俺の話に他の淫魔同様護衛に来てくれた。衛兵役に魔人たちも来てくれたりしてる。
なんだかんだとありがたい。淫魔たちが色々と立ち回って働いてくれて、俺の考えもまとまってきていた。
「では、一緒に行きましょう」
早く早くと手招きしてるメイド淫魔ちゃんの後について慌ただしく出て行った。
さてと、どうしようかなぁ~。
大人しくここに座ってくれたらいいんだが…。
テーブルの向こうの椅子を眺める。
魔王城の前に人影が見える。
人だ。人がいる。
線の細い綺麗な人だ。執事服を着てる。男性のようだ。
後ろに立ってるのは、大柄な魔族だ。人質か?
魔族は卑怯な手を使う。
どこかで攫った人を盾にする気か。
「人質とは、魔族とはどこまでも卑怯だな?!」
剣に手を掛けながら、対峙した。
「解放しろッ!」
公国から出立した時は白かったマントは、薄汚れてしまったが、まだ品格を補うだけの装備として輝いている。
風をはらんで揺れる。
「人質?」
気の抜けた声が人質男から発せられる。予想もしなかった単語だと言いたげな様子だ。
俺の殺気に魔族が動こうしていたので、全身に緊張が走っていた俺はその声に一瞬気が乱れた。不味いッ。
「あっ、えッ?! 兄貴ッ?!」
後ろで剣士のサムエルが声を上げた。
兄貴?
魔族の兄貴がいるのか???
お前、魔族?!
はぁあ?!
周りの殺気は霧散していた。戦闘する雰囲気ではなくなった。
カチンと抜きかけていた剣を鞘に納めた。
なんなのコレ?!
「いらっしゃいませ。主がお待ちです。こちらへ」
落ち着いた様子で、執事服の人質男が優雅に誘導してくる。
所作は執事。貴族のような優雅さもある。
警戒しながら城に入ると、メイド服を着た人に近い容姿の魔族が迎えてくれた。
外套や荷物を受け取ろうとしたが、断った。
そこまで気を許してはいない。
魔王の戦闘の出来そうな配下は、そこにいる大柄な人型の魔族だけだ。
魔王は、戦闘を望んではいないようだが、奇襲もあり得る。気は抜けない。
執事の男もメイドたちに下がっていいと指示を出してる。
俺たちは、土埃を払うだけで装備をそのままで、中に進む。
「その装備、あの頃のだよな。サムエルだよ。覚えてる?」
気の抜けた声で魔族に話しかけてる。知り合いに化けてるとか考えないのか?
腕は良いのだが、ちょっと考えが…って事があったな…。
「容姿が随分変わったと思っていたんだが、装備で判断か? 短絡的だな」
敵にも呆れられてる…。
「え? 変わってるかな…。身体の大きさも肌の色も変わってるか。牙もあるけど。耳も尖ってるけど。全然、兄貴だよ」
こちらも呆れた口調で言い返してる。
直感的なことだろうか。
サムエルの勘というか感覚は今までも魔獣狩りの時など大いに役に立った。不意打ちの動きにも難なく対処出来た。
野盗に襲われそうになった時もあったが、回避出来たのも、この男の「違和感」と言う言葉だった。この男の目は、見える物よりも違う何かを見ているのだろうか。
「勇者さま達をお連れしました」
扉の前で立ち止まる。
向こうから入室を許可する人の声。
事前に魔王の容姿についてはアリスンから聞いてるが、国王達から聞かされてる容姿からはかけ離れていた。
扉が開く。
真偽がはっきりする。
どちらにしろ魔王には変わらない。
中に魔族が犇めいてるのか?
=================
えーと、やっと顔合わせに…なったか…なってないね( ̄▽ ̄;)えへへ…
次回、面と向かって会いまっせ。
互いの状況擦り合わせで、浄化に向けての話し合いが始まります。
エッチがしたい(浄化がしたい)魔王 vs 魔王を倒して瘴気を無くしたい勇者一行
てな感じですかね。
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