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本編

6】侵入(後) ※

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 アリスンが飛び起きた。
 敵国への侵入も果たし、王城を目指して進行している。
 敵は波状攻撃を仕掛けてくる。そして、夜と思われる時刻にはピタリと攻撃が止む。

 攻撃は日が昇って暫く後から。
 まるで、役所か何かかといった規則正しさを感じた。

 この法則が分かるまでは常に緊張しながらの進行だったが、分かってからは、前に進むよりは休息に充てている。

 こちらも侵入してすぐのような勢いがなくなりつつあった。戦闘でのダメージの蓄積が大きい。攻撃のない時間に交代で眠ってなんとか少しずつ進むようにしていた。完全に攻撃されない保証もないので、致し方ない。

 アリスンが飛び起きたのはそんな時だった。
 顔が真っ赤で息が荒い。

「どうした?」

 周りを警戒しながら、彼女に声を掛けた。
 伏せた顔がこっちを見た時、見てはいけないものを見てしまった気がした。
 頬を赤らめ濡れた瞳。官能的だ。
 首筋を汗が伝って流れた。

「夢を…」

 彼女は『夢見の乙女』だ。

「予知夢か?」

「瘴気の中に入るまでは、黒い影でしか見れなかったのですが、、、」

 居住まいを正しながら、言葉を紡いでいる。自分に言い聞かせるような口調だった。
 語尾が途切れ、沈黙が長く。

「どうした?」

 次を待っていたが中々発せられないので、痺れを切らした俺は、先を促した。

「今、魔王の…。なんでもないわ」

「魔王城はあと数日のところだ。戦局に関する事か?」

 こんな近日の予知なら余程のはず。なのに、なんともないなど…。

「違うわ。姿をはっきり見えただけ…」

 なぜそこで赤くなる…。
 口を手で押さえて、何かに耐えて?
 もしかして、吐き気を催すような恐ろしい姿?
 んー、なんだか反応が…。

「いえ、あ、お尻が…。いや、お顔が、なんというか…イ、イケメンでしたぁッ」

 なんか鼻息荒い…。

 ????

 イケメン?

 両手で顔を覆ってるアリスンの細い肩を掴むと乱暴に揺すった。

「魔王の魔力か? 魅了か何かかけて来てるのか? しっかりしろッ」

 斥候に行ってたクンティンが戻ってきて不思議な顔で立ってる。

 ついさっき座った状態で眠ったダロンがモゾって動いた。さっきの戦闘で随分疲れた様子だった。しっかり休ませたい。回復に飲んだ聖水も安静にしてないと巡りが悪い。

 このねっとり進めば進むほどに重く、まとわりつく瘴気が何もかも悪い気がする。

 公国では、聖教会で準聖女たちと聖魔法の『巡環』に参加した。
 手を取り合い輪になって聖魔法を互いに流すような儀式だった。
 輪の中が暖かく空気が清浄になっていくのを感じる。

 体内に取り込まれていた穢れなどが消えていく。今までに感じたことのない力の漲りに感動した。
 聖司教から渡された聖女の守りの手に握りこめる小さな宝珠を渡された。
 皆、首から下げて、胸にしまってる。

 これらが瘴気から守ってくれるはずだ。
 確かに踏み込んだ時は大いに発揮されたと思うが、進みは遅々としてて、効力も拮抗してるようだ。

 己が能力のみでなんとか切り抜けないといけないのだ。そんな時に…。

「お前の力が必要なんだ。魔王討伐にメンバーの誰も欠けちゃ成功はない。魔王城まであと少し。精神攻撃に負けてどうする」

 俺は、自分自身にも言い聞かせるように声を絞り出した。

 そばにクンティンがしゃがみ込んだ。アリスンをじっと見てる。

「アリスン、大丈夫?」

「大丈夫」
 アリスンがしっかり返してる。安堵した。

「周りは大丈夫だった。地図に間違いもない。オレちょっと休む」
 
 俺の方を見ると報告をする。

「分かった」

 いつもの落ち着いた静かな声。
 その声に気持ちが落ち着いてくる。

 日が昇る前に移動しよう。
 魔王国の地図を広げる。これも渡された物のひとつだ。詳細な地図が何故あるのかも不思議な事だ。俺のこの違和感はなんだ?




 夢の中で肉体が絡んでいた。

 手足が絡み、蠢いてる。
 二つの身体がひと塊になって揺れてる。

 あまりの破廉恥な光景に目を閉じてしまった。夢だと分かっていた。これは、見なければならないものだと言い訳して、目を開く。
 耳には淫靡な音がずっと届いていた。

 二人の荒い息遣い。肉を打つ音。いやらしい水音まで耳にしっかり届いてる。
 見たい…。でも、組み敷かれてる相手を見るのが怖い。でも…。
 ゆっくり目を開ける。

 上に覆い被さっているのが、魔王…。
 白い肌。蜂蜜のような透き通る煌めく金の髪。キュッと引き締まったお尻。そこから伸びる脚の線、筋肉の流れが芸術的な造形を思い起こさせる。脇腹から背中、腕にかけても美しい筋肉美。
 汗に濡れて光る情景も絵画のようだと思った。

 彼の逸物もきっと美しいだろう。それは相手に深く挿さって見えない。
 嬌声が聞こえる。なんて煽情的な声。
 身体の奥底から妖しい疼きを感じさせる。

 その声をあげる相手より、魔王の顔が気になる。どんな顔をしてるのだろう…。
 伸し掛かっていた相手から身体を離し起き上がった。
 こっちを見返る。目があった。新緑を思い起こさせる爽やかな緑の瞳。
 
 ーーーーー美しい…。

 あっ、どこかで…。

 目が覚めて、高揚感に胸が躍った。
 きゃぁあああああああああ!!!!!
 見ちゃった。
 エッチの現場、見ちゃったぁぁああ…。

 悶えるぅぅううう。

 イケメンな魔王。あっ、お相手確認するの忘れた。

 剣士のサムエルに喝を入れられた。敵領内で何をやってるてのよね。
 クンティンの目を見て、声を聞いてると落ち着いてきた。

 この瘴気に入ってから、急に魔王の姿が見え始めたのだったが、こんなに絡みが近くで、はっきりと音声付きで見たのって、まみえる刻が近いって事だろう。
 魔王国に近づいた時でさえ、まだ影だったのに、侵入して急に…。

 不思議だけど、相手の姿が分かっただけでも収穫ね。

 相手は…。勇者は渡さないわよッ。私、しっかりしなきゃッ。





===============


次回、対峙かな。
やっと出会えるぅぅ~。
さて、魔王はどうする?!

あとは大義名分もあるんだ、バンバンやっちゃおうな? 魔王、ヤっちまおうな?!

書いてる私は楽しい。
楽しんで読んでいただけてるといいなぁσ(^_^;)

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