魔王ってなにさ

アキノナツ

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5】聖教会(後)

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 この討伐も、討伐に関する報酬に金か何か要求してそうな王様だったな。勇者の出身国じゃなかったら、一発殴りたいヤツだった。やらんけど。遠く離れられて良かったよ。

 旅先で、気のいい領主や王様にも会えたし。温かく迎えてくれるところも増えてきた。

 初めの頃は、それなりの歓迎はしてくれるが、『あの国』のというだけで扱いが酷いかったよ。マジ殴りたい。剣のサビにもしたくないね。

 嫌がらせも表立ってやられないだけマシだが、魔獣を倒して、辺りの浄化をしても感謝はされても、『さっさと、次へ行け』といった感じだった。

 離れていけば行くほど、その雰囲気は薄れていったが…。

 振り返れるだけ俺たちは強くなった。
 10年は経ったかな…。

『勇者さま』は真に勇者になったと思うね。

「ねぇ、サムエルは、恋人とかいなかったの?」

 野宿の火の番をしてると、横にちょこんと来たクンティンがそんな事を訊いてきた。

「んー、居たような居ないような…。娼館には俺を待ってるのは居るかもな…」

 傭兵時代から特定の人は作らないようにしてきた。ま、できたら引退どきだな。

「そっか~。ダロンとアリスンって付き合わないのかなぁ。この前、アリスンがプロポーズみたいな事言ってたけど、ダロンの野郎スルーしやがった」

 えーと、俺にどんな回答を求められてます?
 お前、アリスンちゃん好きなの?

「どうなんだろうな。ダロンも好きみたいだけど、使命があるって思ってる節もあるしなぁ…。その辺りで、踏み切れないんじゃねぇの」

「そっか~」

 火を突きながら、沈黙が流れた。

「オレさ…」

 焚き火を見ながらクンティンが呟くように、何か言おうとしてる。割とチームワーク良くなってる今、コレはいいのか?!

 年長の俺が試されてる?!

「…二人には、幸せになって欲しい…」

「お前もな…」

 俺の焦りを感じ取ったのか、無難な言葉を紡いだ。俺も無難に締めた。

 アリスンちゃんの胸めっちゃ育ったもんな。お年頃だもんな。目のやり場に困るよな。

 無言でクンティンの頭を撫でた。子供扱いされる事を嫌う彼が黙って撫でられてる。
 俺の手には小さい頭を掌で包むように、ゆっくり撫でる。
 彼はじっと焚き火を見ていた。

 カプリーア公国が近づくにつれてアスリンを拝む人が増えてきた。聖協会の本部があるところだからなぁ…。

 旅も大詰めとなってきた。公国って魔王国と近いって事に違和感を感じ始めていた。
 アリスンからは聖魔法で瘴気を抑えてると教えられたが…。抑えてるのだとしたら、位置が遠い感じがする…。

 何らかの魔道具などが設置されてる風でもない。なんだか不自然さを感じてる。まぁ、俺が感じてる違和感だ。
 力が強くて近づけなかった?

 アリスンが持ってる杖に組み込まれてる宝珠というのは聖魔法を増幅できる魔道具だと聴いたが、こういうのを国境近くとかに置いてるのか?

「公国に着いたら、聖教会に報告をしに行かなければならなくて…」
 準聖女であるアリスンは、暫く俺たちから離れる事を寂しげに、俺たちに…否、ダロンに告げてる。なんなら彼の手を両手で握り締めて、うるうると瞳を潤ませてたりしてるよ…。

 ダロンもちょっと寂しそうにしてるのは、やっぱ脈アリだな。

 このパーティー、すでに、マズった状態でなんともなかったんだから、大丈夫じゃない?

 うん、付き合っても問題ねぇじゃん。よし、勇者の背を押してやるか?

 ん?
 ーーーそっち?

 クンティンの横顔を見てしまった。
 彼の視線は、勇者のダロンに向いて、ますね…。
 えーと、その視線のデジャヴ。目の前の彼女のに似てるね……。

 うぉふッ!
 ああああああああああああああ!!!!
 なんで気づかなかったんだぁぁあああああ!!!!
 
 表面状は無にしながら、脳内で激しく頭を抱えていた。

 俺はなんで気づかなかったんだ?!
 恋愛対象なんて人それぞれだろうがぁぁああああ!!!!





================


次回、入国ですかね…。
さてさて…入国出来るよな?( ̄▽ ̄;)

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