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後2.小瓶の行方
しおりを挟むほぼ会話劇。ただの風景的なそんな話。
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「コレなんですか?」
受付カウンターの隅の置いた籠を目敏く見つけた男がもう中にあった小瓶を手にしてる。
「金平糖。捨てるんだが、瓶ゴミまで間があって……要るかい?」
「どうしようかな…。色んな色がありますけど、味も色々?」
「青いのがサイダー。りんごの風味がする。ギャップがあるだろう? 黄色いのがレモン。ピンクが桃。茶がコーヒー。この薄い緑色がマスカット」
「なんだか楽しそうですね。そんなに好きなら手放さなければいいのに…」
キャニスターを手の中で捏ねてる。
「いい大人が変だろ?」
「いいじゃないですか。趣味なんてそんなものでしょ?」
籠に戻してる。
「んー、いや、要らない。捨てる。決めたんだ」
「清水さんは、決めたらトコトンですね」
「金平糖もですけど、この瓶綺麗ですね」
別なのを手に取った。
「母がくれたものだから、年代モノかもな」
光に翳しながら「大事なモノじゃないですか」と籠に戻す。
「もういいんだ」
「そうですか…。こうしませんか?」
「なんだい?」
「コレは俺が貰います。コーヒーに砂糖代わりに入れると面白そうです。無理してないので、気遣わなくていいですよ。コレでいいでしょ?」
籠ごと持ち上げる。
「そして、ここからが本題。この瓶は保管しておきます。手元に戻したくなったら、声を掛けて下さい」
「君は.…。物好きだな」
「研究室を持つ事になったのに、殺風景なので、暫く飾っときます」
籠から薄緑色の星の入った瓶を蛍光灯の光に翳して見ている。
「たぶん返してとは言わないと思うけど、持って行ってくれると、この子たちも嬉しいだろう」
「清水さん、乙女ですね」
「ん?」
「この子たちって」
「私にとったら、気に入ったのかものは全てこの子だね」
「俺はその気はないので食べれませんよ」
「あはは…。君も落ち着いたね」
「もう心を決めましたからね」
「ーーー私も決めたから、もう大丈夫だよ。だから、捨てる」
「清水さん、無理はいけませんよ。疲れた顔してる。誰かにお別れ言ったんですか?」
どうやって持って帰ろうか悩んでいるようだ。
小物を入れる袋があったな。緩衝材にその辺の布でも入れてやろうか。ゴミを入れてと怒るかな?
最近は、揶揄っても面白く無くなってきた。
「これから言うつもりさ。ーーー執拗くて困ってる」
手を出して、籠を受け取り、小さな紙の手提げに詰め込む。
「一途な子が欲しいって言ったじゃないですか」
「そんな事を言った事もあったね。でも、アレはダメだ。私をダメにする」
「ダメにするんですか?」
「クラッシャーの私が壊されそうだよ」
「それは大変ですね」
大変そうな感じのしない声音。
ゴミの代わりに、ネクタイをくるくると瓶に這わせて入れた。
分かってない顔だ。
そこがいいんだが、私のものにはならなかった。
鋭いのか鈍いのか……。香苗も少し似てるかもしれないな。
「コレは、昇進祝いという事で。仕上がったら連絡するよ」
袋中を覗いて笑った。
「ありがとうございます」
優しさが滲む笑顔だ。
想い人が羨ましい。
私はいつも羨ましがってる。小さい人間だ。
小瓶が私の元から去っていく。
決めたら事はきちんとする。
この店だって、ちゃんとやってるだろ?
誰も居なくなった店を見廻す。
もうすぐお役御免だ。
押しつけられた全てから逃げずに頑張って来た証がココだ。次に繋げられそうだ。
良くやったよ。
誰も褒めてくれそうにないので自分で褒める。
さて、逃げ切れるか。
海外にでも行ってしまうか?
仕事からは離れられないからな。
どうしたらいいかな。仕事は好きなんだよ。
じっくり考えるか。
どうしたものか…。
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逃げちゃった清水さん。
清水さんと優太でした。優太35ぐらい。清水さんは40ぐらい。『小部屋の鍵』の例の休日後、辺りですね。
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