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マツモト 予選決勝戦
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会場の入り口から、巨大な影が現れた。
その影は次第に大きくなり、巨人の姿が観客たちに現れる。身長は4メートルを超え、筋骨隆々とした体躯はまるで岩のように頑丈だ。
丸太のように太い右手には巨大な両刃の戦斧を握りしめ、その重厚な武器はまるで死の鎌のように恐ろしい。戦斧の刃は鋭く磨かれ、その反射する光は会場中を照らし出す。
目は怒りに満ち、戦慄させるようにギラギラと光を放っている。
観客たちは、その巨人の姿に圧倒され、恐怖と興奮が交錯する。
巨人の放つオーラが観衆にも畏怖を感じさせ、沸き立っていた会場中に静寂が広がる。
巨人の手に握られた戦斧は、まさに鋼鉄のような頑丈さを誇る。その刃は厚く、よく手入れされている。
表面には歴戦の数々を物語るような傷跡がある。
その堅牢さは、まるで岩のようだ。その重量感が攻撃力を物語る。
巨大な戦斧は、間違いなく恐るべき破壊力を秘めている。
しかも、その巨大な戦斧をまるで小枝のようにクルクルと軽々と扱う巨人の怪力と技術。
大道芸のように長柄の戦斧をブンブン振り回し、回転させて、軽やかに舞うように演舞を披露すると観客から感嘆とどよめきが起こった。
3倍以上の身長差、しかも素手で対峙するあたしと比較すると、まるで不公平な戦いのように観客の目に映るだろう。
巨人ゴルゴダビッシュ。マツモトでは、誰も疑うことない最強の魔戦士。もちろんS級だ。
予選の応募がたった4人しかいなかったのも、この男のせいだと言われている。誰もゴルゴダビッシュに立ち向かう勇気がなかったのも、責める気にはならない。
しかも、ゴルゴダビッシュは、マツモトでは珍しい水の魔法の手練れでもある。その身体には、水の鎧を着て、物理攻撃が効かない。
ショータからゴルゴダビッシュが水の魔法と斧を使うと事前に聞いていた。
炎犬は、とにかく水が苦手だから、お家でお留守だ。
燃える心配がないから、今日は草舟のロープとブーツを履いている。
かなり動きが軽快だ。
舞台の上で向かい合うと、その威圧的な存在感に気圧されそうになる。
「巨人とは名ばかりの小さな娘よ。果たして私に立ち向かえるのか?
炎の犬はどうした?早速、水浸しにしてやろうと思っていたんだがな」
「小さく見えても、あたしも巨人。みくびらないで」
「ふむ。伝説の赤い目を輝かせるか。
ふん。どうせニセモノだ。御伽話では、俺には、勝てん。
仕える王を失って、俺の人生は、死ぬまでの暇つぶしだ。
せめて、俺の武勇伝に加えてやろう」
試合開始のドラが鳴り響く。
あたしはゴルゴダビッシュの巨体を見上げ、構えを取る。
ゴルゴダビッシュは、傲慢な態度で戦斧を振り回し、その荒々しい動きが風を切り、びゅうびゅうと会場中に轟く。
あたしは、できるだけ機敏に身をかわし、ゴルゴダビッシュの攻撃をギリギリかわす。
「当たらなければ、自慢の斧も見かけだおしね!」
「逃げるだけでは、勝てんぞ」
ゴルゴダビッシュが巨大な足を踏み出し、会場が地響きとともに揺れるかのようだ。
どんなに機敏に左右に身をかわしても、ゴルゴダビッシュの踏み込みが深く鋭く迫ってくる。
「でかいくせに、こんなに速いなんて!」
舞台を転がりながら、なんとか避ける。
「お前は無力だ!降参するなら今のうちにしておけ」
あたしには、闘志が宿っている。何度だって立ち上がる。
その時、ゴルゴダルビッシュは手にした戦斧に水の魔法を込め始めた。
水の力が戦斧の刃に宿り、水の波動が形成された。ジェッタを斧に宿したのか。
慎重にいかないと。構え直す。
「さあ、この水の刃を味わえ!」
戦斧から放たれる水の波動が、あたしに向かって迫る。連撃に対して身をかわし、水の波動を避ける。
くっ!射程が長い!
ゴルゴダビッシュが間髪入れずに連撃を繰り返す。
ウォーバリでジェッカを防いでも、衝撃波で後ろに吹っ飛ばされる。
なんてパワー!
水の魔法に対抗するために、こっちも水を!
手から放たれるあたしのジェッカの水の刃が、ゴルゴダビッシュの水の波動と激しくぶつかり合う。
会場中の観客たちは息をのみ、その激しい戦いを見守っています。水と水の力が激しくぶつかり合い、会場中に圧倒的なエネルギーが漲ります。
悔しいけど水の魔法ではゴルゴダビッシュの方が格上だ。
「隙がない!」
「そろそろ、遊びも飽きてきたな」
見下されているうちがチャンスだ。
「今だ!」
素早く前進し、戦斧の刃を掻い潜って、ゴルゴダビッシュの足元に飛び込む。
ゴルゴダビッシュが驚きの声を上げる。
あたしに向かって、鋭く戦斧を振り下ろす。
「よし!」
機敏に身をかわし、ゴルゴダビッシュの戦斧を巧みに避ける。
「うぉお!!!」
ゴルゴダビッシュは怒りに満ちた声で叫び、再び戦斧を振り上げる。
その攻撃をかわし、ゴルゴダビッシュの膝にケリを食らわせた。
「ぐわ!」
流石のゴルゴダビッシュも身体をよろめかせた。でも、大したダメージにはなっていない。
会場中が緊張と興奮で高まる。
動きは、見切れてきた。でも、攻め手に欠く。
ゴルゴダビッシュの攻撃をかわしつつ、必死で反撃を試みるけど。。。
ゴルゴダビッシュの力と巨大な戦斧の攻撃の重さに押され、次第に追い詰められている。
「おのれ、ちょこまかと!」
ゴルゴダビッシュの攻撃が容赦なく迫る。縦横無尽に繰り出される戦斧の素早い連撃に、防戦一方だ。
ゴルゴダビッシュが一瞬の隙を突いて、その巨大な足を高く掲げ、破壊力のある蹴りを放った。
その蹴りの速度は驚異的で、反応する間もなく直撃を避けられない!
「ぐは!」
あたしの体が衝撃で空中に吹き飛び、地面に激しく叩きつけられた。
身体が苦痛に歪み、口から血が吐き出す。
ついに、捕まってしまった!
はぁ、はぁ!ぐはっ!
激しい痛みに悶絶し、息をするのもままならない。
心臓が激しく鼓動し、生死の境界線を感じる。視界が一瞬、闇に包まれる。。。
ここまでなの?
「いや、まだ…まだ終わっていない!」
あたしは、よろよろと立ち上がる。
精神的にも肉体的にも限界に近づきつつある。
「もう、動けまい。念のためもう一回、蹴っておくか」
ゴルゴダビッシュが踏み込むと、その蹴りの衝撃が身体を貫く。
ゴキンッ
舞台の端まで転がりながら吹っ飛ぶ。レゴレで鉄のガードをしても、ダメージを殺せない。
「そんな防御では、気休めにもならんだろう」
防御のためにレゴレで作った鉄の防具がカランカランとひしゃげて地面に落ちた。
あたしは、キュアを自分にかけて、なおも立ち上がる。骨や筋肉な治せても、内臓までの傷をキュアでは治す事はできない。
「キュルリア!!!」
傷が完全に回復した。キュルリアの回復力は素晴らしい。でも、魔力を使いすぎるな。しばらく使えない。
「強い回復魔法だな。
そう何度も使えるものではないだろう」
冷静にあたしの状況を判断するゴルゴダビッシュに向けて闘志に満ちた視線を向ける。
ここで決めなくては、身体が持たない。
「この一撃にかける」
あたしの身体から赤い闘気が吹き出す。
「ほう。その闘気。。。
赤い目は、巨人の王の証。
その一撃、受けてやろう。王に相応しいか、確かめてやる」
あたしの拳がギラギラと眩しく赤く輝く。
魔力じゃない。この力は、身体の内側から湧いてくる。
それだけじゃない。熱い!この熱さは、世界そのものから、宇宙からあたしに注がれている。
あたしの赤い光がゴルゴダビッシュの顔を赤く照らす。
「なんということだ。本物だというのか?」
ゴルゴダビッシュが驚いて、目を見開く。
あたしの熱気が会場中を覆うほどになったのを感じる。
ゴルゴダビッシュは自らの全てをかけてその一撃を受け止めようとしている。
戦斧を構え、両腕と身体に水の装甲を集中させた。
「上等ね」
あたしの身体全体がギラギラと赤く輝き、炎のようなエネルギーを纏う。赤いエネルギーが闘技場の屋根よりも高く、火柱のように噴き出した。
あたしのこの手が真っ赤に燃える。勝利を掴めと、ユピテルが叫ぶ。爆裂するエネルギーを感じる。
「いっっけぇぇぇ!!!爆裂拳!!!」
世界がゆっくりと流れるのを感じる。ほとんど止まった時間の中で、あたしだけが素早く動ける世界。
一気に踏み込んで、ゴルゴダビッシュに迫る。あたしの一歩一歩が鉄の舞台に亀裂を作って、足跡になった。
あたしの拳がゴルゴダビッシュが構える戦斧と激突する瞬間、太陽より眩しい光が爆破する。
ピキィィン
ゆっくりとした時間が、急速に元通りの時間の流れに加速する。
爆発の轟音が会場中に響き渡る。炎が舞い散り、光と影が交錯する。
あたしの持てるエネルギー全てを、拳のただ一点に集中させた。
ゴルゴダビッシュの戦斧は、その熱量に耐えきれず、溶け出し、砕け散る。
身体の前面を守っていた水の装甲は、一瞬で霧散した。
戦斧は、呆然と立ち尽くすゴルゴダビッシュの両腕もろとも消し飛んでしまった。
ゴルゴダビッシュの足元で鉄の舞台の一部が裂けて、赤く溶解している。
はぁ、はぁ。
「終わりね」
ゴルゴダビッシュは、驚愕と絶望の表情を浮かべ、その大きな体が揺れ、ひざまづいた。
「ぐぉぅ」
観客たちは驚愕し、静まり返ったままだ。
「殺せ。哀れみは、巨人の恥だ。赤い目の巨人に殺されたなら誇りだ。
王たる資格、確かに認めよう」
「ゴルゴダビッシュ、あたしもお前の勇気を認めるわ。
お前があたしに王の資格を認めたなら、あたしがお前に求めるのは死ではない。
お前は、まだ戦える。あたしと一緒に生きるのよ」
「両腕を失った戦士が何の役に立つ」
あたしは、残る力を振り絞ってキュアをかけた。もう魔力も空っぽだ。
ゴルゴダビッシュが驚きながら復活した両腕を確かめる。
「俺の王になってくれるのなら、全てを捧げる覚悟がある」
「その覚悟、受け取るわ。あたしは、世界制覇して歴史を股にかける計画があるの」
あたしは、ひざまづくゴルゴダビッシュに右手を差し伸べる。
ゴルゴダビッシュが大きな手を伸ばして、あたしの手をしっかりと両手で握った。
「我が王よ。この命、捧げられる偉大な王を探していた」
「あたしと一緒に見たことがない世界を作るのよ。困難も多いわ」
あたしは、ゴルゴダビッシュを腕を引っぱって、身体を起こす。
ゴルゴダビッシュがゆっくりと巨大な身体を立ち上げた。
「望むところだ」
ゴルゴダビッシュがあたしの身体を両手で柔らかく掴んで、自分の肩の上に乗せて座らせた。
あたしが空高く右手を上げると、試合終了のドラが鳴り響いた。
会場は、大歓声に包まれた。
「カリン!カリン!カリン!」
あたしの名を呼ぶ声が止まない。
もうだめだ。もう力が残ってない。
ギリギリの勝利。あたしが勝者だ。
その影は次第に大きくなり、巨人の姿が観客たちに現れる。身長は4メートルを超え、筋骨隆々とした体躯はまるで岩のように頑丈だ。
丸太のように太い右手には巨大な両刃の戦斧を握りしめ、その重厚な武器はまるで死の鎌のように恐ろしい。戦斧の刃は鋭く磨かれ、その反射する光は会場中を照らし出す。
目は怒りに満ち、戦慄させるようにギラギラと光を放っている。
観客たちは、その巨人の姿に圧倒され、恐怖と興奮が交錯する。
巨人の放つオーラが観衆にも畏怖を感じさせ、沸き立っていた会場中に静寂が広がる。
巨人の手に握られた戦斧は、まさに鋼鉄のような頑丈さを誇る。その刃は厚く、よく手入れされている。
表面には歴戦の数々を物語るような傷跡がある。
その堅牢さは、まるで岩のようだ。その重量感が攻撃力を物語る。
巨大な戦斧は、間違いなく恐るべき破壊力を秘めている。
しかも、その巨大な戦斧をまるで小枝のようにクルクルと軽々と扱う巨人の怪力と技術。
大道芸のように長柄の戦斧をブンブン振り回し、回転させて、軽やかに舞うように演舞を披露すると観客から感嘆とどよめきが起こった。
3倍以上の身長差、しかも素手で対峙するあたしと比較すると、まるで不公平な戦いのように観客の目に映るだろう。
巨人ゴルゴダビッシュ。マツモトでは、誰も疑うことない最強の魔戦士。もちろんS級だ。
予選の応募がたった4人しかいなかったのも、この男のせいだと言われている。誰もゴルゴダビッシュに立ち向かう勇気がなかったのも、責める気にはならない。
しかも、ゴルゴダビッシュは、マツモトでは珍しい水の魔法の手練れでもある。その身体には、水の鎧を着て、物理攻撃が効かない。
ショータからゴルゴダビッシュが水の魔法と斧を使うと事前に聞いていた。
炎犬は、とにかく水が苦手だから、お家でお留守だ。
燃える心配がないから、今日は草舟のロープとブーツを履いている。
かなり動きが軽快だ。
舞台の上で向かい合うと、その威圧的な存在感に気圧されそうになる。
「巨人とは名ばかりの小さな娘よ。果たして私に立ち向かえるのか?
炎の犬はどうした?早速、水浸しにしてやろうと思っていたんだがな」
「小さく見えても、あたしも巨人。みくびらないで」
「ふむ。伝説の赤い目を輝かせるか。
ふん。どうせニセモノだ。御伽話では、俺には、勝てん。
仕える王を失って、俺の人生は、死ぬまでの暇つぶしだ。
せめて、俺の武勇伝に加えてやろう」
試合開始のドラが鳴り響く。
あたしはゴルゴダビッシュの巨体を見上げ、構えを取る。
ゴルゴダビッシュは、傲慢な態度で戦斧を振り回し、その荒々しい動きが風を切り、びゅうびゅうと会場中に轟く。
あたしは、できるだけ機敏に身をかわし、ゴルゴダビッシュの攻撃をギリギリかわす。
「当たらなければ、自慢の斧も見かけだおしね!」
「逃げるだけでは、勝てんぞ」
ゴルゴダビッシュが巨大な足を踏み出し、会場が地響きとともに揺れるかのようだ。
どんなに機敏に左右に身をかわしても、ゴルゴダビッシュの踏み込みが深く鋭く迫ってくる。
「でかいくせに、こんなに速いなんて!」
舞台を転がりながら、なんとか避ける。
「お前は無力だ!降参するなら今のうちにしておけ」
あたしには、闘志が宿っている。何度だって立ち上がる。
その時、ゴルゴダルビッシュは手にした戦斧に水の魔法を込め始めた。
水の力が戦斧の刃に宿り、水の波動が形成された。ジェッタを斧に宿したのか。
慎重にいかないと。構え直す。
「さあ、この水の刃を味わえ!」
戦斧から放たれる水の波動が、あたしに向かって迫る。連撃に対して身をかわし、水の波動を避ける。
くっ!射程が長い!
ゴルゴダビッシュが間髪入れずに連撃を繰り返す。
ウォーバリでジェッカを防いでも、衝撃波で後ろに吹っ飛ばされる。
なんてパワー!
水の魔法に対抗するために、こっちも水を!
手から放たれるあたしのジェッカの水の刃が、ゴルゴダビッシュの水の波動と激しくぶつかり合う。
会場中の観客たちは息をのみ、その激しい戦いを見守っています。水と水の力が激しくぶつかり合い、会場中に圧倒的なエネルギーが漲ります。
悔しいけど水の魔法ではゴルゴダビッシュの方が格上だ。
「隙がない!」
「そろそろ、遊びも飽きてきたな」
見下されているうちがチャンスだ。
「今だ!」
素早く前進し、戦斧の刃を掻い潜って、ゴルゴダビッシュの足元に飛び込む。
ゴルゴダビッシュが驚きの声を上げる。
あたしに向かって、鋭く戦斧を振り下ろす。
「よし!」
機敏に身をかわし、ゴルゴダビッシュの戦斧を巧みに避ける。
「うぉお!!!」
ゴルゴダビッシュは怒りに満ちた声で叫び、再び戦斧を振り上げる。
その攻撃をかわし、ゴルゴダビッシュの膝にケリを食らわせた。
「ぐわ!」
流石のゴルゴダビッシュも身体をよろめかせた。でも、大したダメージにはなっていない。
会場中が緊張と興奮で高まる。
動きは、見切れてきた。でも、攻め手に欠く。
ゴルゴダビッシュの攻撃をかわしつつ、必死で反撃を試みるけど。。。
ゴルゴダビッシュの力と巨大な戦斧の攻撃の重さに押され、次第に追い詰められている。
「おのれ、ちょこまかと!」
ゴルゴダビッシュの攻撃が容赦なく迫る。縦横無尽に繰り出される戦斧の素早い連撃に、防戦一方だ。
ゴルゴダビッシュが一瞬の隙を突いて、その巨大な足を高く掲げ、破壊力のある蹴りを放った。
その蹴りの速度は驚異的で、反応する間もなく直撃を避けられない!
「ぐは!」
あたしの体が衝撃で空中に吹き飛び、地面に激しく叩きつけられた。
身体が苦痛に歪み、口から血が吐き出す。
ついに、捕まってしまった!
はぁ、はぁ!ぐはっ!
激しい痛みに悶絶し、息をするのもままならない。
心臓が激しく鼓動し、生死の境界線を感じる。視界が一瞬、闇に包まれる。。。
ここまでなの?
「いや、まだ…まだ終わっていない!」
あたしは、よろよろと立ち上がる。
精神的にも肉体的にも限界に近づきつつある。
「もう、動けまい。念のためもう一回、蹴っておくか」
ゴルゴダビッシュが踏み込むと、その蹴りの衝撃が身体を貫く。
ゴキンッ
舞台の端まで転がりながら吹っ飛ぶ。レゴレで鉄のガードをしても、ダメージを殺せない。
「そんな防御では、気休めにもならんだろう」
防御のためにレゴレで作った鉄の防具がカランカランとひしゃげて地面に落ちた。
あたしは、キュアを自分にかけて、なおも立ち上がる。骨や筋肉な治せても、内臓までの傷をキュアでは治す事はできない。
「キュルリア!!!」
傷が完全に回復した。キュルリアの回復力は素晴らしい。でも、魔力を使いすぎるな。しばらく使えない。
「強い回復魔法だな。
そう何度も使えるものではないだろう」
冷静にあたしの状況を判断するゴルゴダビッシュに向けて闘志に満ちた視線を向ける。
ここで決めなくては、身体が持たない。
「この一撃にかける」
あたしの身体から赤い闘気が吹き出す。
「ほう。その闘気。。。
赤い目は、巨人の王の証。
その一撃、受けてやろう。王に相応しいか、確かめてやる」
あたしの拳がギラギラと眩しく赤く輝く。
魔力じゃない。この力は、身体の内側から湧いてくる。
それだけじゃない。熱い!この熱さは、世界そのものから、宇宙からあたしに注がれている。
あたしの赤い光がゴルゴダビッシュの顔を赤く照らす。
「なんということだ。本物だというのか?」
ゴルゴダビッシュが驚いて、目を見開く。
あたしの熱気が会場中を覆うほどになったのを感じる。
ゴルゴダビッシュは自らの全てをかけてその一撃を受け止めようとしている。
戦斧を構え、両腕と身体に水の装甲を集中させた。
「上等ね」
あたしの身体全体がギラギラと赤く輝き、炎のようなエネルギーを纏う。赤いエネルギーが闘技場の屋根よりも高く、火柱のように噴き出した。
あたしのこの手が真っ赤に燃える。勝利を掴めと、ユピテルが叫ぶ。爆裂するエネルギーを感じる。
「いっっけぇぇぇ!!!爆裂拳!!!」
世界がゆっくりと流れるのを感じる。ほとんど止まった時間の中で、あたしだけが素早く動ける世界。
一気に踏み込んで、ゴルゴダビッシュに迫る。あたしの一歩一歩が鉄の舞台に亀裂を作って、足跡になった。
あたしの拳がゴルゴダビッシュが構える戦斧と激突する瞬間、太陽より眩しい光が爆破する。
ピキィィン
ゆっくりとした時間が、急速に元通りの時間の流れに加速する。
爆発の轟音が会場中に響き渡る。炎が舞い散り、光と影が交錯する。
あたしの持てるエネルギー全てを、拳のただ一点に集中させた。
ゴルゴダビッシュの戦斧は、その熱量に耐えきれず、溶け出し、砕け散る。
身体の前面を守っていた水の装甲は、一瞬で霧散した。
戦斧は、呆然と立ち尽くすゴルゴダビッシュの両腕もろとも消し飛んでしまった。
ゴルゴダビッシュの足元で鉄の舞台の一部が裂けて、赤く溶解している。
はぁ、はぁ。
「終わりね」
ゴルゴダビッシュは、驚愕と絶望の表情を浮かべ、その大きな体が揺れ、ひざまづいた。
「ぐぉぅ」
観客たちは驚愕し、静まり返ったままだ。
「殺せ。哀れみは、巨人の恥だ。赤い目の巨人に殺されたなら誇りだ。
王たる資格、確かに認めよう」
「ゴルゴダビッシュ、あたしもお前の勇気を認めるわ。
お前があたしに王の資格を認めたなら、あたしがお前に求めるのは死ではない。
お前は、まだ戦える。あたしと一緒に生きるのよ」
「両腕を失った戦士が何の役に立つ」
あたしは、残る力を振り絞ってキュアをかけた。もう魔力も空っぽだ。
ゴルゴダビッシュが驚きながら復活した両腕を確かめる。
「俺の王になってくれるのなら、全てを捧げる覚悟がある」
「その覚悟、受け取るわ。あたしは、世界制覇して歴史を股にかける計画があるの」
あたしは、ひざまづくゴルゴダビッシュに右手を差し伸べる。
ゴルゴダビッシュが大きな手を伸ばして、あたしの手をしっかりと両手で握った。
「我が王よ。この命、捧げられる偉大な王を探していた」
「あたしと一緒に見たことがない世界を作るのよ。困難も多いわ」
あたしは、ゴルゴダビッシュを腕を引っぱって、身体を起こす。
ゴルゴダビッシュがゆっくりと巨大な身体を立ち上げた。
「望むところだ」
ゴルゴダビッシュがあたしの身体を両手で柔らかく掴んで、自分の肩の上に乗せて座らせた。
あたしが空高く右手を上げると、試合終了のドラが鳴り響いた。
会場は、大歓声に包まれた。
「カリン!カリン!カリン!」
あたしの名を呼ぶ声が止まない。
もうだめだ。もう力が残ってない。
ギリギリの勝利。あたしが勝者だ。
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