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ピッケルと冒険者ギルド

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「街だ!大きいな」

 昼近くになって、やっとリノスに着いた。
 ナミが意外そうだ。

「あら?そんなに発展したの?昔は辺境の村だったのにね。
 私が作ったオアシスのおかげかしら?」

 嘘だろ。
 砂漠の中にこんな大きな街があるんて。アレイオスより大きい。高い城壁で守られて、真ん中にはオアシスがある街。これがリノス?

 砂丘から望遠鏡で見下ろして、リノスの様子を確認する。
 かなり大勢の人が生活している。様々なお店がありそうだ。
 こちら側に門がない、ぐるりと反対側に回る必要がある。

 昨日の夜、カリンと筆談した。カリンは、巨人の力に目覚め始めたらしい。草木の精霊たちにヴィラナという生きた植物を作る魔法を教わったと、はしゃいでいた。羨ましい。
 カリンがいる地域では、土と水、炎、の魔法を使える人はいないから、マツモトに行ったら重宝されるだろうということだ。

 巨人の力を手に入れて、一番弱い兵士と同じくらいの力になったらしい。
 朝になったら、パバリ王の紹介状をもらって、マツモトの冒険者ギルドに登録に行くと言っていた。

 ルーマンによると僕のいる地域のほとんどの人は、草木、水、炎の魔法を使えない。

 そもそも時空の魔法は、どこの地域でも存在が知られていないし、魂の魔法に至っては、本来なら魂の精霊しか使うことができないものだそうだ。

 リノスにも冒険者ギルドは、あるだろうか。
 仮に存在したとして、僕の実力で登録できるだろうか?

 カリンと筆談して、お互い冒険者ギルドに登録して、冒険者になって情報収集をしようということになっている。
 ラカンとガンダルとヤードルの情報を集めるんだ。ケルベウス弟も。世界を救う方法にも近づけるはず。
 情報は、とても大切だ。

「ナミ、ちょっと黙っててね」

「何よ!」

「僕はただでさえ何者か証明できないんだ。卵まで怪しまれたら。
ナミが取り上げられてしまった嫌だし」

「はいはい。分かったわよ。ついでに寝るわ。おやすみなさい」

 色々考えながら、リノスの正門を見つけた。鉄の兜をつけて武装した屈強な門番が2人いる。
 きっと言葉は、大丈夫。加護が助けてくれるだろう。
 しかし、ドキドキする。そもそもリノスに入れるんだろうか。門番がチェックするのは、何か?
 門番を納得させるものを持っている可能性が低いよな。
 リノスにとって未知の国からきたんだから。言語も違うし、通貨も違うだろう。せっかく作ってもらった身分証だって。。。
 カリンがもらったパバリ王の紹介状が羨ましい。
 パバリ王がマツモトでどう認知されているかは、わからない。でも、紹介状を書くくらいだ、きっと信用があるんだろう。
 そう。僕に足りないのは、信用と情報だ。

 ザッ

 ふぅ。腹をくくって、行くしかないな。頼れるものは、度胸だ。それしかない。

 門番の目がギラリと光る。黒いヒゲの偉丈夫からは、街を守るという強い使命感が伝わってくる。
 どっしりと目の前に立ちはだかって、不審者を入れない構えだ。

 なんとか悪い人間でないことを示さないと。

「お前、よそ者だな。ここは水龍のオアシスの街、リノスだ。通行証は、持っているか?」

 きたきた。そうだよね。通行証いるよね。ポシェタから身分証などの束を出す。ダメもとでプリンパル国発行の身分証を見せる。

「こ、これが僕の身分証だよ」

 バシッと乱暴に身分証をもぎ取られた。表も裏も念入りに調べられる。

「読めない文字だ。正式に発行されたものではありそうだがな。
 これでここを通すのことは、できない。
 ん?もう一つ手に持ってる札を見せろ」

 身分証と一緒に出てきたゾゾ派の木札のこと?

「こ、これのこと?」


「木札。こんなもの見たことがないな。だが、この印は、間違いなく冒険者ギルドの印だ。お前、冒険者か?」

「ぼ、冒険者になりたくてきたんだ。その木札は、ゾゾ派の身分証なんだけど。。。」

「ゾゾ。。。やっぱり冒険者ギルドと関係していそうだな」

 ゾゾ長老を知ってる?!
 いやいや、こんな場所にゾゾ派のネットワークが伸びているはずがない。

「よし。来い。
 俺がお前を冒険者ギルドに連れて行ってやる。ちょうど昼休憩の交代が来たところだ。
 ナイゼル、あとは頼んだよ」

 小柄な若い猫耳族の門番がやってきた。

「ガブル番長、お疲れ様でした」

「おう。
 お前、名前を教えろ。俺はガブル。門番の取りまとめ役だ。ガブルでいい」

「ガブル、ありがとう。
僕は、ピッケル。でも、どうして?」

「まぁ、気まぐれかな。ピッケル、お前、あの砂漠からきただろう?」

「う、うん」

「やっぱりか。このシリア砂漠は、死の砂漠。おまけにシリア砂漠の先には何もない。
追い返してもいいが、あまりに怪しくてな」

「うっ」

「だが、どう見ても弱そうだし、悪人にも見えない」

「うう」

「冒険者ギルドに連れていけば、正体も分かるってもんよ。悪いが念のため縄で縛らせてもらうぜ。いいか?」

 縄か。もう罪人みたいだな。

「わ、分かった。それでいい」

「安心しな、見えない縄にしてやるよ、
ミラーチェ」

 ミラーチェ?聞いたことがない魔法だ。
 ガブルの手がキラキラと光る。光の魔法なんだろうか。
 光の魔法は、僕とカリンの身体には馴染まないとルーマンに言われていた。無理矢理やろうとすれば、無駄に魔力を消耗して命の危険があると。残念だ。魔法にも身体に合う合わないがあるらしい。

 縄で縛られている感覚はない。
 でも、何かしらの拘束を受けているんだろう。魔力が押さえつけられて、身体が少し重い。
 もとより暴れるつもりも、逃げるつもりもない。
 冒険者ギルドに道案内と護衛つきで辿り着けると思えば、むしろありがたい。

「よし、行くぞ。こっちだ」

 ガブルは、リノスの人から人気があるみたいだ。子供からは好かれているし、街の老若男女、色んな人から話しかけられていた。
 リノスの街にいるのは、猫耳の獣人かエルフ、巨体の人種、様々だ。人類の姿は見えない。

 水龍と金色のネックレスをした男の石像が置かれた広場を通りがかった時、猫耳の老夫人がガブルにリンゴを渡した。

「ガブル、引越しの手伝い、ありがとな」

「おう。また困ったらなんでも言ってくれ」

 エルフの子供たちがガブルを見るなり集まってくる。

「ガブル、また一緒に遊んでよ!」

「まだ、一仕事残ってるんだ。また後で鬼ごっこしてやるよ」

「わーい!ガブル、約束ね!」

 街は賑わい、美味しそうな食べ物の匂いが満ちている。
 肉を売る店、アクセサリーや魔道具を売る店など。

 楽器を演奏して、輪になって舞を踊ったり、歌っている人たちもいる。
 なんだか切ないけど、素敵な旋律だ。

「君が去ってから
声は、風に散りさった。悲しみが枯れた木を濡らせ
どうして君と踊れないの
涙は、海を目指し、地を這い、闇に沈むよ」

「この歌。。。」

 アシュリが教えてくれた歌だ。旋律もちゃんとあったんだな。
 アシュリに教えてあげないと。きっと喜ぶだろう。

「なんだ、ピッケル。この歌を知ってるのか?古い歌でな。リノスでは子供が踊って遊んだり、結婚やお祝いの宴でみんなで踊ったりするぞ」

「こんなに悲しい歌詞なのに?」

「ガッハッハ!そうかな?」

 ガブルの足が大きな扉の前で止まった。

「おい、ピッケル。ここだ。ここが冒険者ギルドだ」

 石造の立派な建物だ。でも、これがレゴレでできていることがわかる。よく練られている。
 扉は、鉄かな。これもレゴレ。鉄もレゴレで作れるんだな。僕にはまだできないけど。
 街を見渡すと、木材がほとんど使われていない。植物性は、貴重なんだろうか。草木の魔法を使える人がほとんどいないというのは、本当らしい。

 ガブルが冒険者ギルドの扉に手をかける。手がまたキラキラと光る。光の魔法か?

「デロッグ」

 ギギギッと重たい扉が開く。

「ピッケル、入れ」

 ガブルについて冒険者ギルドの建物に入る。

 中にはあまり人がいない。
 昼だからだろうか。それでも屈強そうな戦士やローブをきた魔法使い、何組もの冒険者がいる。

 猫耳の受付嬢がガブルに声をかける。

「ガブル、珍しいわね。こんな時間に、こんなところに。
 それに何?その弱そうな男の子。顔はかわいいけど。うふふ」

「ニーチェ、色目づかいはやめときな。こいつは身元不詳の不審者だ。どうやらシリア砂漠を越えてきたらしい」

 ふ、不審者。そうだよな。

「はぁっ?シリア砂漠を?
 無理でしょう!そんなの。
 で、何者?通行証はどうなっているの?」

「こいつはピッケル。身分証も通行証も持っていない」

「ダメでしょう。そんな不審者をリノスに入れては。
 あぁ、でも砂漠を越えてきたのが怪しすぎるわね。
 それで冒険者ギルドに?
 ここは、厄介者を預ける場所じゃないんだけど!」

「まぁ、そういうな。
 ちょっと何者かを調べて欲しいだけだ」

「まぁ。いいわ。ピッケル、この水晶玉に手を当てて。
 これには、魔力や魔法の種類、人種、身体能力、職業、前科や勲章などを確認したり、登録する光の魔法がかけてある。
 装備品の能力向上を反映することはできないけど。
 これであなたが何者か、分かるはずよ」

 水晶玉。光の魔法。
 どうやらここは光の魔法が発展しているようだ。

 どう評価されるんだろう。
 分からないけど、試してみるしかない。

 青く光る水晶玉の中にはキラキラと金色の輝きが満ちている。
 かなり高度な魔法がかけられているようだ。

「おい、ピッケル。早くしな。俺は、早く昼飯を食いに行きたいんだ」

 わわわ。よし、やるしかない。

 手を魔法玉に置く。

 魔法玉がキラキラと光を強くする。

「種族」
・人類

「魔法」
・魔力 A
・スピード F
・属性 草木E、水F、土E、魂F、時空F

「武術」
・剣F

「基礎ステータス」
・パワー E
・知力 C
・素早さ F
・体力 E
・幸運 測定不能

「職業」
・便利屋
・農夫

「前科・勲章」
ドラゴン殺し
魔王の末裔

「スキル」
未登録


「ニーチェ、どうだ?こいつは、何者だ?強いのか?」

「んー。強くは、無いわね。
 魔力量だけ、かなりあるわね。
 でも、魔法のスピードがお粗末ね。
剣技もいまいちだし、戦闘には、まだ不向きね。
 幸運が測定不能って、初めて見たわ。
 登録テストが必要だけど、総合すると最下級のF級冒険者ってところかしら。登録テストで頑張ればE級なら可能性ありね。
 職業は、便利屋か農夫。珍しいわ。
 変なのは魔法の種類ね。草木、水、土、魂、時空?!
 土以外は、珍しすぎる。草木とか水とかって、魔獣しか使えないわよ。
 魂とか、時空は、そもそも意味不明だわ。未知の魔法」

 べ、便利屋?!農夫。。。そんな職業に判明されたのか。最下級のFランク。。。炎は杖をポシェタに入れていたから表示されなかったのかも。

「おいおい。つまり、こいつは魔獣なのか?」

「違うわ。魔王の末裔とは書いてあるけど、種族は、なんとびっくり、人類よ。魔大陸では、絶滅した種族。。。
 魔王コフィが人類だったって伝承は、本当だったってことなの?
 それにしてもドラゴン殺しって前科なのかしら、勲章なのかしら。
 それにあなた、どこからきたの?どこかで人類が生き延びているの?」

 魔王のコフィの血が、少しとはいえ僕に流れているんだな。
 人類は、魔大陸ではとっくに絶滅していたんだな。魔王のコフィの移住は、英断だったのかもしれない。
 それにしてもドラゴン殺しのインパクトがすごい。

「え、うん。すごく遠い場所だけど」

「おいおい。まさか人類かよ。レア種族だな。研究者に高く売れそうだ。とくに魔王コフィの研究者とかにな」

 ひっ!売られる?なにか実験に使われるの?

「たしかに、高く売れるでしょうね。
でも、どうして砂漠から?」

「魔獣の魔法で転移させられて、気がついたら砂漠の真っ只中に。
 仲間と世界を救うための情報を集めて旅をしていたんだ。みんな世界中に散り散りになってしまった。
 僕は、砂漠を4日歩いて、リノスに辿り着いたんだ」

「シリア砂漠を4日も?!
魔法があるとはいえ。。。砂漠では、水の魔法も使えないはずだぜ。
 そうだニーチェ、こいつの木の札を見てやってくれ」

 ゾゾ派の身分証をニーチェに見せる。

「これは!ギルドの紋章!」

「そうだろ?でも、なんでピッケルがこんなものを持ってるんだ?」

 ニーチェが木札を水晶玉にかざす。

「ピッケル、これをどうしたの?
 それにこの紋章に刻まれている魔法は、ゾゾ家の特別な魔法!」

 ゾゾ家を知ってる?

「そう。これは曽祖母のゾゾ・ミショルからもらいました」

「ゾゾ・ミショル?ゾゾ会長の親族かしら。
 あとで、血液サンプルをもらうわね。血縁を調べる別の水晶玉で詳しく調べてみるわ。
 これは、ギルドマスターのプチンに判断してもらう必要があるわね」

 なんか、大変なことになってきたな。

「おいおい、プチンまで出てくるのかよ。俺の昼飯食べる時間がなくなるぜ。それにガキどもと遊んでやる約束をしてるんだ」

「今からプチンに使いを出すわ。ちょっと待っていて。
 ガブルは、もういいわよ。お昼ご飯食べてきたら?
 ピッケルは、冒険者ギルドで預かるわ」

「おう。助かるぜ。あとは頼んだ。デミラーチェ!」

 ふっと、身体が軽くなる。ガブルのかけた拘束が解けたみたいだ。

「ピッケル、じゃあな。俺は、お前が気に入ったぜ。
 過酷な死の砂漠を4日歩いてきたやつを、他に知らねぇ。
 ここでは砂漠を生き抜いたやつは尊敬される。
 仕事とはいえ、拘束して悪かったな」

「ガブル、ありがとう。おかげで冒険者ギルドに来れた。
 ここからは、自分でなんとかするよ」

「おう。落ち着いたら飯でも奢るぜ。またな」

 ガブルか扉にデロッグをかけて、外に出ていく。自動で鍵かかる魔法がかけれた扉を開錠する魔法なのかな。
 つまり、僕は、冒険者ギルドから勝手に出れないというわけだ。

 ふぅ。

 まだ信用は得られていないけど、街には入れたな。
 これからどうなることやら。
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