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ゴーレムの夢と記憶

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 あれ?
 なんだろう。

 やけに低い目線だ。目の前に何にもの足が見える。

 やばい。
 カリンやポンチョさんのスカートの中が見える!

 わわ!

 あれ?声が出ない。

 巨人のようなカリンに掴まれて、真っ赤な大きい瞳でジロジロと見られる。

 ええ?
 どういうこと?夢を見てるのか?
 これは、ミニゴーレムの記憶?だから声を出せないのか。夢にしては、設定に忠実だ。

 サッと場面が切り替わる。

 目の前に大きなカニグモが砂浜をノシノシ歩いている。

 これは?カニグモとミニゴーレムを戦わせた時の?

「ねぇ、ピッケル、アシュリとなにあった?明日の見送りに来ないってきいたわ。さっき、アシュリの部屋に行って挨拶してきた」

「う、うん。僕も挨拶すませたよ」

カリンと僕の会話が聞こえる。

「そう。ならよかった。ねぇ、ミニゴーレムをあのカニグモと戦わせてみたら?ミニゴーレムのこともっとよく知りたい」

「え?うん。そうだね。やってみる」

その時、【行け!】という強烈なメッセージが頭の中を貫いた。

 よし!

 カニグモに立ち向かう。
 レゴレを使って、ミニゴーレムの人形を4つ作る。あっという間にV字の隊形を作っていく。V字の頂点に僕がいる。

 それからまた、場面が変わる。今度はなんだ?

 総督府の廊下を歩いている。
 長い廊下がミニゴーレムの視点から見ると更に長く感じる。

 よじ登るようにして、階段を登る。踊り場をせっせと歩いて、また階段をよじ登る。

 どこに向かっているんだろう。
 これはいつなんだろう?
 だんだんミニゴーレムの身体と僕の意識のズレがなくなっていく。

 目の前には、見覚えのある扉がある。
アシュリの部屋だ。

 本当は、アシュリに伝えたいことがあったんだ。
 僕は、なんて馬鹿なことをしてしまったんだろう。
 アシュリが教えてくれた色々なことへの感謝や、精霊に教わったことの素晴らしさをアシュリと分かち合って、喜び合いたかったのに。

 ミニゴーレムの小さな砂を固めた腕の先端で、アシュリの部屋の扉を叩く。

 あっ!!

 扉に小さな傷がついてしまった。声を出せたら、廊下に声が響いていたかな。

 慌てて、ミニゴーレムの腕で傷を撫でるように触った。
 ミニゴーレムの角張った腕の先端で更に木材の扉に傷をつけてしまった。
3本の白い筋がくっきりと傷として残る。

 これ以上触っても、傷が増えるだけだ。そういえば、今は砂のミニゴーレムなんだな。砂浜から総督府まで歩いて来たんだろうか。

 トボトボとアシュリの部屋の前を離れて長い廊下を歩く。

 歩きがてら地下まで行こう。

 迷路のような岩の切れ目を歩いて、古代博物館までたどり着く。
 ミニゴーレムの小さな身体では、何倍も時間がかかる。

 博物館の中は、真っ暗だ。
 流石にゾゾ長も部屋に戻って寝ているのかな。

 ミニゴーレムの手の先からファイポを出して周りを照らす。背中に炎犬の小骨が刺さっているからファイポが使えるんだ。

 小さな身体から見上げる博物館の展示物の迫力がすごい。
 魔獣の剥製がど迫力で怖い。

 ドキドキしながら、奥に進んで行く。
 薄暗い中に巨大な骨格標本や怪しく光魔石が並ぶ。

 怖すぎる。夜の理科室より怖い。

 奥には、司書のゴーレムが座っている。目が赤く光っているだけで動かない。

 こいつも不気味だ。

 どうやったら、動くんだろう。何が足りないんだろう。今いきなり動き出されても、恐ろしすぎるけど。

 司書のゴーレムの台座にもたれて座る。
 この司書のゴーレムは、一万年も何のために誰のためにここで眠っていたんだろう。。。

 また、景色が変わる。

 はっ!

 見慣れた天井。

 汗だくで身体を起こす。手を見ると、人間の手だ。手で、身体を確かめる。柔らかい。

 人間の身体だ。

「あー。。。」

 声も出る。

 あぁ。夢だったのか。
 変な夢だった。ベッドの下を見ると、ミニゴーレムのために作ったベッドでスヤスヤと石のミニゴーレムが寝ている。

 なんだ、ここにいるじゃないか。

 あれ?

 夢に見た時のミニゴーレムは、砂のミニゴーレムだったかな。

 まぁいいや。
 夢に見るくらい、ミニゴーレムを作れたことが嬉しかったんだな。

 明日は、朝から空から降って来た女の子について、ゾゾ長老と話し合いだ。

 一体あの女の子は何者なんだろう。どうして、僕の名前を知っているんだろう。

 身体がだるくて眠い。

 まだまだ夜明けまで時間がある。もう少し、眠ろう。

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