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旅立ちは青空の下ではなく
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ゾゾ長老の館に行ってから5日経って、ついに明日が旅立ちの日になった。
部屋がある2階の窓の外には、満月と星空がきらめく。タイトス観測所は、廃村になり真っ暗な土地の高台にポツンとある。
何度も旅の計画を確かめる。
まずアレイオスから船に乗って、隣のゴリアテ国の港街ヤゴナにいく。そのあと陸路で、その隣のマルキド国にある大地の裂け目を目指す。
アレイオスでは、3年ぶりにカリンに会う予定になっている。
カリンの旅立ちの日が思い出される。
エタンが身分証、パスポートのようなものを用意してくれた。ロム・ピッケルの名前は諸国に知れ渡っているので、ユウマ・ピッケルに変えてもらった。ユウマは、元の世界の名前だし、違和感がない。公的なものなので、ロム・ピッケルではないと言う嘘の証明にもなる。この身分証が今日やっと届いて、明日出発が決まった。
草舟のブーツも足に馴染むようになってきた。
明日は、晴れる。春の陽気で暖かいだろう。
朝食に好物のクロックムッシュを作ってもらう約束をプルーンがしてくれた。
見送りはエタン、パンセナ、ゾゾ長老、召使いのプルーンだけ。
どんな言葉を伝えたらいいんだろう。言葉にできない感謝を。
あぁ、ソワソワして眠れない。部屋をうろうろと歩く。
「よく考えたら、アレイオスに行くどころか、村を出るのも初めてだし、楽しみだ。。。なっ!あれ?!」
地面がひっくり返るような強い揺れ!窓ガラスが割れて、本棚が倒れる!
立つことも、何かを掴むこともできずに床に転がる。震度5?いやもっとか?
「ひっ!!」
たまたま掴んだものが杖だった。なんの支えもない!
ゴゴゴ!
地鳴りと一緒にさらに強い揺れが!
窓を突き破って、2階から家から飛び出す!
「うわぁぁ!!!」
意外に地面が近い?館が崩れているんだ!
月明かりの草むらに投げ出された。
「いててて」
でも、怪我はしていない。
暗くて周りがよくわからない。皆、無事だろうか?
「暗いわね。ファイポ!」
パンセナが無詠唱で灯りをつける。大きめの灯りがついて、月明かりしかない辺りを照らす。
「ピッケル?!大丈夫?エタンは、どこ?」
「旦那様!ピッケル坊ちゃん!あぁ!なんてことでしょう!」
「僕は、大丈夫だ。大地震だな。皆、怪我はないか?」
良かった。パンセナもエタンもプルーンも無事で。
タイトス観測所の館が倒壊して、一階がぺしゃんこだ。全員無事は、奇跡と言ってもいい。
ランプの火から燃え広がったのか、館が炎上して、バチバチと音を立てる。焦げた嫌な匂いがする。
「ゾゾ長老はご無事でしょうか?死の森が燃えています!」
プルーンがおろおろとしている。エタンがたいまつを手にして、先導する。
「様子を見に行こう!みんな一緒に行動するんだ!」
バリンッ、ガガガッ!!
体長20メートルを超える蜘蛛が巨大な足で燃える館を踏み潰して現れた。
バリバリバリ!!
でかい!なんて大きさだ!一目で敵わないことが分かる。エタンが迷わず判断を下す。
「な。なんだあれは!見たことがない魔獣だ!なぜここに?もう、逃げるしかない!」
ダメだ。大蜘蛛がこっちに気づいている。背中を向けたら、やられる。
「父さん、みんなを連れて先にゾゾ長老の館に!
ここは僕が食い止める!」
パンセナがパニックになっている。
「ダメよ!ピッケル!あんな巨大な魔獣に敵うわけない!」
「時間稼ぎだけでもしないと、全滅だって!僕に任せて!」
「く、ピッケル!分かった!必ず来い!お前の幸運に賭ける」
「ゾゾ長老の館に向かう時、空にファイガスを1回打つから」
「わかった。ピッケル!生きて合流しよう!空を見ておく!」
「絶対無理はしないで!」
無理をしなきゃいけない時がある。それが今だ。
エタンとパンセナとプルーンが、丘を駆け降りていく。
「やってやる。もう、逃げてばかりの僕じゃないんだ」
僕は、大蜘蛛に対峙する。杖を握り締める。1日1回の大技だ。なによりも、初めて使う。ぶっつけ本番だ。
「ファイガス!」
無詠唱で、充分な火力を出せた。これなら大熊だって焼き殺せたはず!上出来!
でも、目の前にいるのは大熊より桁違いに巨大だ。直撃した炎の攻撃が全く効いている気配がない。燃える館を踏みつけるくらいだ、炎は効かないってことか。
「もう少し効いてもいいのに!」
そんな不満を言っても仕方がないことくらい、分かってる。
大蜘蛛がひょいひょいと大岩を投げてきた。
「おっとと!なんて力だ!」
草舟のブーツのおかげで素早く避けれる。というか草舟のブーツが無ければ直撃していた。
大蜘蛛が地面を突き刺し、巨大な体を使って襲っくる。当たれば即死の攻撃をなんとか避けるしかない。
「これはどうだ!水の刃!!」
火も通らないし、水魔法も通らない。この大蜘蛛、相当硬い。水の刃が大蜘蛛にぶつかって、ただ砕け散る。
この大蜘蛛、大きいだけじゃなく、魔獣としても炎犬よりかなり上位に違いない。
でも、これで大蜘蛛を倒せないことが分かった。
あ、やばい、身体に白い糸が絡みつく。こいつ、糸まで吐くのか。気がつくと、地面が蜘蛛の糸でびっしりになっている。しかも、水を弾く。
まずい。このままじゃ、やられる。間に合うか。裏手の魔草畑にファイが5株あったはず!
蜘蛛の糸が足に絡みついて、うまく歩けない。館の瓦礫に隠れながら慎重に進む。
よかった。裏手には、火が燃え広がっていない。
大蜘蛛の巨体が近づいてくる。
なんとか館の裏にある魔草畑にいくと、ファイ3株が無事だった。2株はダメだ。瓦礫に埋もれて取り出せない。
「た、助かった!これでまずは。。。
ファイポ!」
身体に巻き付いた糸をファイポで燃やしていく。
「よかった。この糸、燃えやすいぞ」
やっぱり、ファイポの灯りで居場所がバレた。
大蜘蛛は口から大量から糸を放ってきた。
ファイポならファイ1株でかなりの回数出せる。
撒き散らされる糸を燃やしながら、なんとかくぐり抜ける。
「これじゃ、ファイもいずれ切れる。でも、もう時間は稼げたな」
大蜘蛛が、足で地面やタイトス観測所の瓦礫を突き刺してくる。
ガラガラッ!
タイトス観測所の瓦礫が飛び散って危険すぎる。足も危ないが、瓦礫が頭に当たったら、終わってしまう。
まず、タイトス観測所から離れよう。
大蜘蛛がゆっくりとこっちに迫ってくる。動きは早くないけど、巨大な分、一気に迫ってくる。
試しに足を絡め取ってみるか!草舟の腕輪に魔力を込める。
「こうだ!ウイプナ!」
草木の魔法を使って大蜘蛛の足を絡め取る。辛うじて作戦が効いたみたいだ!
大蜘蛛の足に太いツルが巻き付いて、大蜘蛛の動きを止めた。
4年前、死の森で、ポッコロ様が炎犬の足止めをするときに使った魔法!
「グァァァ!!」
大蜘蛛が咆哮すると激しく動き回り、太いツルを引きちぎる。
あ、素早い動きもできるんだ。もう手がない。デタラメな強さだ。
最後に、もうひとあがきするか!
「最後にこれはどうだ!ファイガス!」
一旦距離を取りつつ、ファイガスを大蜘蛛ではなく、地面に敷き詰められた糸に向ける。
よし、うまくいった!
辺り一面が火の海になった。おかげで大蜘蛛が僕を見失っているらしい。
部屋がある2階の窓の外には、満月と星空がきらめく。タイトス観測所は、廃村になり真っ暗な土地の高台にポツンとある。
何度も旅の計画を確かめる。
まずアレイオスから船に乗って、隣のゴリアテ国の港街ヤゴナにいく。そのあと陸路で、その隣のマルキド国にある大地の裂け目を目指す。
アレイオスでは、3年ぶりにカリンに会う予定になっている。
カリンの旅立ちの日が思い出される。
エタンが身分証、パスポートのようなものを用意してくれた。ロム・ピッケルの名前は諸国に知れ渡っているので、ユウマ・ピッケルに変えてもらった。ユウマは、元の世界の名前だし、違和感がない。公的なものなので、ロム・ピッケルではないと言う嘘の証明にもなる。この身分証が今日やっと届いて、明日出発が決まった。
草舟のブーツも足に馴染むようになってきた。
明日は、晴れる。春の陽気で暖かいだろう。
朝食に好物のクロックムッシュを作ってもらう約束をプルーンがしてくれた。
見送りはエタン、パンセナ、ゾゾ長老、召使いのプルーンだけ。
どんな言葉を伝えたらいいんだろう。言葉にできない感謝を。
あぁ、ソワソワして眠れない。部屋をうろうろと歩く。
「よく考えたら、アレイオスに行くどころか、村を出るのも初めてだし、楽しみだ。。。なっ!あれ?!」
地面がひっくり返るような強い揺れ!窓ガラスが割れて、本棚が倒れる!
立つことも、何かを掴むこともできずに床に転がる。震度5?いやもっとか?
「ひっ!!」
たまたま掴んだものが杖だった。なんの支えもない!
ゴゴゴ!
地鳴りと一緒にさらに強い揺れが!
窓を突き破って、2階から家から飛び出す!
「うわぁぁ!!!」
意外に地面が近い?館が崩れているんだ!
月明かりの草むらに投げ出された。
「いててて」
でも、怪我はしていない。
暗くて周りがよくわからない。皆、無事だろうか?
「暗いわね。ファイポ!」
パンセナが無詠唱で灯りをつける。大きめの灯りがついて、月明かりしかない辺りを照らす。
「ピッケル?!大丈夫?エタンは、どこ?」
「旦那様!ピッケル坊ちゃん!あぁ!なんてことでしょう!」
「僕は、大丈夫だ。大地震だな。皆、怪我はないか?」
良かった。パンセナもエタンもプルーンも無事で。
タイトス観測所の館が倒壊して、一階がぺしゃんこだ。全員無事は、奇跡と言ってもいい。
ランプの火から燃え広がったのか、館が炎上して、バチバチと音を立てる。焦げた嫌な匂いがする。
「ゾゾ長老はご無事でしょうか?死の森が燃えています!」
プルーンがおろおろとしている。エタンがたいまつを手にして、先導する。
「様子を見に行こう!みんな一緒に行動するんだ!」
バリンッ、ガガガッ!!
体長20メートルを超える蜘蛛が巨大な足で燃える館を踏み潰して現れた。
バリバリバリ!!
でかい!なんて大きさだ!一目で敵わないことが分かる。エタンが迷わず判断を下す。
「な。なんだあれは!見たことがない魔獣だ!なぜここに?もう、逃げるしかない!」
ダメだ。大蜘蛛がこっちに気づいている。背中を向けたら、やられる。
「父さん、みんなを連れて先にゾゾ長老の館に!
ここは僕が食い止める!」
パンセナがパニックになっている。
「ダメよ!ピッケル!あんな巨大な魔獣に敵うわけない!」
「時間稼ぎだけでもしないと、全滅だって!僕に任せて!」
「く、ピッケル!分かった!必ず来い!お前の幸運に賭ける」
「ゾゾ長老の館に向かう時、空にファイガスを1回打つから」
「わかった。ピッケル!生きて合流しよう!空を見ておく!」
「絶対無理はしないで!」
無理をしなきゃいけない時がある。それが今だ。
エタンとパンセナとプルーンが、丘を駆け降りていく。
「やってやる。もう、逃げてばかりの僕じゃないんだ」
僕は、大蜘蛛に対峙する。杖を握り締める。1日1回の大技だ。なによりも、初めて使う。ぶっつけ本番だ。
「ファイガス!」
無詠唱で、充分な火力を出せた。これなら大熊だって焼き殺せたはず!上出来!
でも、目の前にいるのは大熊より桁違いに巨大だ。直撃した炎の攻撃が全く効いている気配がない。燃える館を踏みつけるくらいだ、炎は効かないってことか。
「もう少し効いてもいいのに!」
そんな不満を言っても仕方がないことくらい、分かってる。
大蜘蛛がひょいひょいと大岩を投げてきた。
「おっとと!なんて力だ!」
草舟のブーツのおかげで素早く避けれる。というか草舟のブーツが無ければ直撃していた。
大蜘蛛が地面を突き刺し、巨大な体を使って襲っくる。当たれば即死の攻撃をなんとか避けるしかない。
「これはどうだ!水の刃!!」
火も通らないし、水魔法も通らない。この大蜘蛛、相当硬い。水の刃が大蜘蛛にぶつかって、ただ砕け散る。
この大蜘蛛、大きいだけじゃなく、魔獣としても炎犬よりかなり上位に違いない。
でも、これで大蜘蛛を倒せないことが分かった。
あ、やばい、身体に白い糸が絡みつく。こいつ、糸まで吐くのか。気がつくと、地面が蜘蛛の糸でびっしりになっている。しかも、水を弾く。
まずい。このままじゃ、やられる。間に合うか。裏手の魔草畑にファイが5株あったはず!
蜘蛛の糸が足に絡みついて、うまく歩けない。館の瓦礫に隠れながら慎重に進む。
よかった。裏手には、火が燃え広がっていない。
大蜘蛛の巨体が近づいてくる。
なんとか館の裏にある魔草畑にいくと、ファイ3株が無事だった。2株はダメだ。瓦礫に埋もれて取り出せない。
「た、助かった!これでまずは。。。
ファイポ!」
身体に巻き付いた糸をファイポで燃やしていく。
「よかった。この糸、燃えやすいぞ」
やっぱり、ファイポの灯りで居場所がバレた。
大蜘蛛は口から大量から糸を放ってきた。
ファイポならファイ1株でかなりの回数出せる。
撒き散らされる糸を燃やしながら、なんとかくぐり抜ける。
「これじゃ、ファイもいずれ切れる。でも、もう時間は稼げたな」
大蜘蛛が、足で地面やタイトス観測所の瓦礫を突き刺してくる。
ガラガラッ!
タイトス観測所の瓦礫が飛び散って危険すぎる。足も危ないが、瓦礫が頭に当たったら、終わってしまう。
まず、タイトス観測所から離れよう。
大蜘蛛がゆっくりとこっちに迫ってくる。動きは早くないけど、巨大な分、一気に迫ってくる。
試しに足を絡め取ってみるか!草舟の腕輪に魔力を込める。
「こうだ!ウイプナ!」
草木の魔法を使って大蜘蛛の足を絡め取る。辛うじて作戦が効いたみたいだ!
大蜘蛛の足に太いツルが巻き付いて、大蜘蛛の動きを止めた。
4年前、死の森で、ポッコロ様が炎犬の足止めをするときに使った魔法!
「グァァァ!!」
大蜘蛛が咆哮すると激しく動き回り、太いツルを引きちぎる。
あ、素早い動きもできるんだ。もう手がない。デタラメな強さだ。
最後に、もうひとあがきするか!
「最後にこれはどうだ!ファイガス!」
一旦距離を取りつつ、ファイガスを大蜘蛛ではなく、地面に敷き詰められた糸に向ける。
よし、うまくいった!
辺り一面が火の海になった。おかげで大蜘蛛が僕を見失っているらしい。
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