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アシュリとの約束
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「え?!アシュリ、もうすぐ王都カラメルに帰ってしまうの?」
今日は、昼からゾゾ長老の館でアシュリとカリンと魔法書の勉強をしにきている。
ここには伝統学派の魔法だけではなくて、ゾゾ長老が収集したさまざまな魔法が納されている。怪しげな骨格標本や使途不明の収集物も。さながら異端の博物図書館だ。ゾゾ長老が書いた魔法書もある。
ダヨダヨ川近くに立つ館の周りは薄暗い林になっていて、魔女の館と呼ばれていた。
ゾゾ長老の館の見た目の恐ろしさから一転して、中は華やかで明るい内装だ。
ゾゾ長老の天井の高い館の壁中が本棚になって、魔法書が収められている。
キキリだけじゃなく、得体の知れない匂いが混ざった匂い。。。
奥の部屋でゾゾ長老とアシュリが何か魔法の実験をしていた。
白いシャツを着たカリンと2人で魔法書を読んでいるが、地肌が透けるくらい薄手のシルクのシャツからカリンの胸がチラチラ見えて集中できない。
カリンからアシュリがそろそろ王都カラメルのククル魔法院に帰ると聞いて、気が動転してしまった。
「あっ!」
木の大きなテーブルに置いていたコップを倒して水をこぼしてしまった。
カリンがサッと魔法書を持ち上げて、濡れない場所に避難させる。
「ちょっと、落ち着きなさいよ。なによ、ピッケル。
知らなかったの?アシュリは、ゾゾ長老と共同で古代魔法の研究していて、一時的に村に来ていたの。
そのついでにあたしとピッケルに魔法を教えてくれていたのよ」
アシュリがゾゾ長老の家に居候して共同研究しているのは知っていたけど。。。
ソワソワしながら濡れたテーブルを布巾で拭いて、コップに水を入れ直す。
「じゃあ、これから修行の続きはどうしたらいいの?アシュリがいないなんて」
僕は、あからさまに動揺してしまった。大好きなアシュリが遠くに行ってしまう。
「なによ、ピッケル。そんなにアシュリが好きなわけ?」
「何いってんだよ!せ、先生として尊敬してるだけだよ!」
ガタンとまたコップを倒して水をこぼして、カリンをビショ濡れにしてしまった。
「もう!何やってんのよ!何度も!」
「ごめん。。。」
またテーブルを布巾で拭き取る。カリンの服が濡れて、肌が透けてみえる。つい胸元に目がいってしまう。
「なにをジロジロ見てるのよ!変態!」
「ち、違うよ!」
違わないけど。
アシュリが奥の部屋から帰ってきて、ほのぽのと平和に微笑む。
「まぁまぁ、落ち着いて。基本的な修行のやり方は、もう教えています。あとは、毎日コツコツと続けることです。
パンセナをお手本にすれば、うまくいきます。パンセナは魔草作りの名人ですから」
「いつ。。。までいるの?」
「そうですね。研究の論文は出来上がっているので、できれば早くククル魔法院で発表したいところです。
でも、来週のポッコロ祭まではパスカル村にいようと思っています。村の皆さんにお別れの挨拶もしたいですし」
来週。。。そんな。。。もうすぐじゃないか。ポッコロ祭は、近隣の村々が合同で開催する守り神ポッコロ様に今年の豊作をお祈りする春のお祭り。
「アシュリ、あたし、いつかきっと王都カラメルのククル魔法院に行って、アシュリみたいに魔法の研究をする。新しい魔法を見つけるのが、あたしの夢なの」
「カリン、夢がきっとあなたを導いてくれるわ。チャンスがあったら迷わず掴みなさい。自力で這い上がっておいで。
私の夢は、いつも言っているけど、全ての病気を癒す万能薬を魔法でつくることよ。
ククル魔法院で、待ってるわ」
カリンにはそんな夢があったんだ。僕には何か夢があるだろうか。夢というより、目標。そうだ、僕にはやらなければならないことがある。
アシュリが今度は僕に尋ねる。
「ピッケル、あなたの夢は?」
「僕は、世界を救うんだ。。。まだ、何の力もないけど。それに、自分のことをもっとよく知りたい」
カリンがからかうように僕を見る。
「あら、ピッケル。そんなことを考えていたのね。あたし、知らなかった。弱っちいくせに」
「いや、まだ全然何もできてないんだけど。。。」
アシュリがまっすぐ僕の目を見る。
「あなたならやり遂げるわ。
どうしたらできるかを考えること。たゆまぬ努力を続けることよ。お互い約束しましょう。カリンもね」
アシュリが僕とカリンの頭の上に手を乗せる。
心臓がドキドキして、手のひらから汗が滲む。
「は、はい!もちろんです」
僕とカリンが声を合わせて答えた。
部屋の奥からゾゾ長老も出てきた。
「ヒッヒッヒ!若者たちよ。大きな志を持つのじゃ。
できるできないじゃない。
どうなりたいか、どんな力を得たいか、自分で決める、それが人生じゃ」
アシュリがニコニコしながら頷いて、ゾゾ長老に尋ねる。
「ゾゾ長老の夢はなんですか?」
「わしの夢は、たくさんあるぞ!
不死の研究や古代の魔法の復活、世界に広がって研究を続けているゾゾ派による世界征服!ヒッヒッヒ!」
せ、世界征服!?
「あとは、そうじゃな。今年こそ、ポッコロ祭のブブンパ大会で、エタンを倒す!」
ポッコロ祭のメインイベントは、将棋に似たブブンパというボードゲーム大会だ。
エタンは、パスカル村にきた9年前から無敗。3年前からトーナメントの優勝者がハンデ付きのエタンに挑むことができる形に落ち着いた。それでも誰もエタンに勝ったものはいない。
ゾゾ長老の館での勉強会が終わって外にでると、もう夕暮れ時になっていた。
屋敷の庭には無数の動物の骨が置いてあり、頭蓋骨が並べられている。不気味すぎる。
ゾゾ長老が戸口まで見送ってくれた。
「気をつけてな。ダヨダヨ川には絶対に近づくなよ。川の反対側から炎犬に焼かれるぞ。ヒッヒッヒ!」
分かれ道でカリンが手を振る。
「じゃあね!ピッケル、おやすみなさい」
1人でとぼとぼと歩いてロム家の館まで丘を登っていく。
アシュリに魔法を学べるのもあと少しの時間しかないのか。もっと一緒にいたかったな。
修行もカリンの方が進んでいるし、何もいいところをアシュリに見せられていない。
魔力耐性や魔力のスピードを上げる修行を毎日コツコツ続けてはいるけど。。。
「ただいま」
ロム家の館につくと、プルーンが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、ピッケル坊っちゃま。
夕飯前にお風呂に入りましょうか」
。。。む!
プルーンとのお風呂タイム!これは気持ちを切り替えて臨まなければ。
荷物を部屋に置いて、魔法の勉強道具を片付ける。
「ふー」
ここは深呼吸をして平常心に。プルーンとお風呂に入る時に、やらしい目でみたりしないように気をつけないと。
ドキドキしながら風呂場に向かう。
脱衣所で服を脱いでいると、出し抜けにプルーンが瑞々しい裸に薄い布を巻いて、湯けむりと一緒に風呂場から出てきた。
ひっ!セクシーすぎる!!
「湯加減を確かめてまいりました。一緒にお風呂に入りましょう」
思わず、ポーッと見惚れてしまった。
「まぁ!」
プルーンがちょっと引きつった笑顔で僕を見ている。あれ?!
プルーンが固まっている。
「。。。」
気まずい沈黙。
思いがけず勃起している僕の一物の膨らみを見て、プルーンがドン引きしている。
そして、まるで変態を軽蔑するような目を一瞬して、笑顔に戻す。
「き、今日からは、お一人でお風呂に入ってみましょうね!」
そりゃそうなる。
「う、うん。大丈夫、もう1人でできるよ」
終わった。。。
こうしてプルーンと一緒にお風呂に入る至福の時間から卒業することになってしまった。
つい、いやらしい目で見てしまう僕にも薄々気づいていたのかもしれない。
元の世界から数えたら40才だもんな。自業自得だ。やれやれだ。
今日は、昼からゾゾ長老の館でアシュリとカリンと魔法書の勉強をしにきている。
ここには伝統学派の魔法だけではなくて、ゾゾ長老が収集したさまざまな魔法が納されている。怪しげな骨格標本や使途不明の収集物も。さながら異端の博物図書館だ。ゾゾ長老が書いた魔法書もある。
ダヨダヨ川近くに立つ館の周りは薄暗い林になっていて、魔女の館と呼ばれていた。
ゾゾ長老の館の見た目の恐ろしさから一転して、中は華やかで明るい内装だ。
ゾゾ長老の天井の高い館の壁中が本棚になって、魔法書が収められている。
キキリだけじゃなく、得体の知れない匂いが混ざった匂い。。。
奥の部屋でゾゾ長老とアシュリが何か魔法の実験をしていた。
白いシャツを着たカリンと2人で魔法書を読んでいるが、地肌が透けるくらい薄手のシルクのシャツからカリンの胸がチラチラ見えて集中できない。
カリンからアシュリがそろそろ王都カラメルのククル魔法院に帰ると聞いて、気が動転してしまった。
「あっ!」
木の大きなテーブルに置いていたコップを倒して水をこぼしてしまった。
カリンがサッと魔法書を持ち上げて、濡れない場所に避難させる。
「ちょっと、落ち着きなさいよ。なによ、ピッケル。
知らなかったの?アシュリは、ゾゾ長老と共同で古代魔法の研究していて、一時的に村に来ていたの。
そのついでにあたしとピッケルに魔法を教えてくれていたのよ」
アシュリがゾゾ長老の家に居候して共同研究しているのは知っていたけど。。。
ソワソワしながら濡れたテーブルを布巾で拭いて、コップに水を入れ直す。
「じゃあ、これから修行の続きはどうしたらいいの?アシュリがいないなんて」
僕は、あからさまに動揺してしまった。大好きなアシュリが遠くに行ってしまう。
「なによ、ピッケル。そんなにアシュリが好きなわけ?」
「何いってんだよ!せ、先生として尊敬してるだけだよ!」
ガタンとまたコップを倒して水をこぼして、カリンをビショ濡れにしてしまった。
「もう!何やってんのよ!何度も!」
「ごめん。。。」
またテーブルを布巾で拭き取る。カリンの服が濡れて、肌が透けてみえる。つい胸元に目がいってしまう。
「なにをジロジロ見てるのよ!変態!」
「ち、違うよ!」
違わないけど。
アシュリが奥の部屋から帰ってきて、ほのぽのと平和に微笑む。
「まぁまぁ、落ち着いて。基本的な修行のやり方は、もう教えています。あとは、毎日コツコツと続けることです。
パンセナをお手本にすれば、うまくいきます。パンセナは魔草作りの名人ですから」
「いつ。。。までいるの?」
「そうですね。研究の論文は出来上がっているので、できれば早くククル魔法院で発表したいところです。
でも、来週のポッコロ祭まではパスカル村にいようと思っています。村の皆さんにお別れの挨拶もしたいですし」
来週。。。そんな。。。もうすぐじゃないか。ポッコロ祭は、近隣の村々が合同で開催する守り神ポッコロ様に今年の豊作をお祈りする春のお祭り。
「アシュリ、あたし、いつかきっと王都カラメルのククル魔法院に行って、アシュリみたいに魔法の研究をする。新しい魔法を見つけるのが、あたしの夢なの」
「カリン、夢がきっとあなたを導いてくれるわ。チャンスがあったら迷わず掴みなさい。自力で這い上がっておいで。
私の夢は、いつも言っているけど、全ての病気を癒す万能薬を魔法でつくることよ。
ククル魔法院で、待ってるわ」
カリンにはそんな夢があったんだ。僕には何か夢があるだろうか。夢というより、目標。そうだ、僕にはやらなければならないことがある。
アシュリが今度は僕に尋ねる。
「ピッケル、あなたの夢は?」
「僕は、世界を救うんだ。。。まだ、何の力もないけど。それに、自分のことをもっとよく知りたい」
カリンがからかうように僕を見る。
「あら、ピッケル。そんなことを考えていたのね。あたし、知らなかった。弱っちいくせに」
「いや、まだ全然何もできてないんだけど。。。」
アシュリがまっすぐ僕の目を見る。
「あなたならやり遂げるわ。
どうしたらできるかを考えること。たゆまぬ努力を続けることよ。お互い約束しましょう。カリンもね」
アシュリが僕とカリンの頭の上に手を乗せる。
心臓がドキドキして、手のひらから汗が滲む。
「は、はい!もちろんです」
僕とカリンが声を合わせて答えた。
部屋の奥からゾゾ長老も出てきた。
「ヒッヒッヒ!若者たちよ。大きな志を持つのじゃ。
できるできないじゃない。
どうなりたいか、どんな力を得たいか、自分で決める、それが人生じゃ」
アシュリがニコニコしながら頷いて、ゾゾ長老に尋ねる。
「ゾゾ長老の夢はなんですか?」
「わしの夢は、たくさんあるぞ!
不死の研究や古代の魔法の復活、世界に広がって研究を続けているゾゾ派による世界征服!ヒッヒッヒ!」
せ、世界征服!?
「あとは、そうじゃな。今年こそ、ポッコロ祭のブブンパ大会で、エタンを倒す!」
ポッコロ祭のメインイベントは、将棋に似たブブンパというボードゲーム大会だ。
エタンは、パスカル村にきた9年前から無敗。3年前からトーナメントの優勝者がハンデ付きのエタンに挑むことができる形に落ち着いた。それでも誰もエタンに勝ったものはいない。
ゾゾ長老の館での勉強会が終わって外にでると、もう夕暮れ時になっていた。
屋敷の庭には無数の動物の骨が置いてあり、頭蓋骨が並べられている。不気味すぎる。
ゾゾ長老が戸口まで見送ってくれた。
「気をつけてな。ダヨダヨ川には絶対に近づくなよ。川の反対側から炎犬に焼かれるぞ。ヒッヒッヒ!」
分かれ道でカリンが手を振る。
「じゃあね!ピッケル、おやすみなさい」
1人でとぼとぼと歩いてロム家の館まで丘を登っていく。
アシュリに魔法を学べるのもあと少しの時間しかないのか。もっと一緒にいたかったな。
修行もカリンの方が進んでいるし、何もいいところをアシュリに見せられていない。
魔力耐性や魔力のスピードを上げる修行を毎日コツコツ続けてはいるけど。。。
「ただいま」
ロム家の館につくと、プルーンが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、ピッケル坊っちゃま。
夕飯前にお風呂に入りましょうか」
。。。む!
プルーンとのお風呂タイム!これは気持ちを切り替えて臨まなければ。
荷物を部屋に置いて、魔法の勉強道具を片付ける。
「ふー」
ここは深呼吸をして平常心に。プルーンとお風呂に入る時に、やらしい目でみたりしないように気をつけないと。
ドキドキしながら風呂場に向かう。
脱衣所で服を脱いでいると、出し抜けにプルーンが瑞々しい裸に薄い布を巻いて、湯けむりと一緒に風呂場から出てきた。
ひっ!セクシーすぎる!!
「湯加減を確かめてまいりました。一緒にお風呂に入りましょう」
思わず、ポーッと見惚れてしまった。
「まぁ!」
プルーンがちょっと引きつった笑顔で僕を見ている。あれ?!
プルーンが固まっている。
「。。。」
気まずい沈黙。
思いがけず勃起している僕の一物の膨らみを見て、プルーンがドン引きしている。
そして、まるで変態を軽蔑するような目を一瞬して、笑顔に戻す。
「き、今日からは、お一人でお風呂に入ってみましょうね!」
そりゃそうなる。
「う、うん。大丈夫、もう1人でできるよ」
終わった。。。
こうしてプルーンと一緒にお風呂に入る至福の時間から卒業することになってしまった。
つい、いやらしい目で見てしまう僕にも薄々気づいていたのかもしれない。
元の世界から数えたら40才だもんな。自業自得だ。やれやれだ。
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