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1章

女神

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 スピカが咄嗟に口を出す。

「アスタロトをコフィに?!なんて無責任な親!無茶振り!あんな最悪な悪魔、どうしろっていうのよ!」

 さっき両親に愛されているとか、言っていたくせに。でも、たしかに、どういうことなんだろう。

「我輩は、アスタロトのことをよく知っています。
 その悪魔は、かつて豊穣の神だったのです。
しかし、信奉していた民を他の神に奪われ、荒ぶり悲しんでいるところに魔が差して、悪魔に成り下がった悲しい女神」

 あんなに邪悪な悪魔が、昔、豊穣の神だったなんて、信じられない。

「かつて、アスタロトが豊穣の神だったと伝承されている村があると聞きます。シリアのリノスという村だったかと。水深300mにある海中の村アビスから海流に乗っていけるはず。訪ねてみるといいでしょう」

 リノス、聞いたことがない村だ。アビス村は、パバリ師匠から何度も聞いていた。昔は、多くの人がアビス村で交差するジェット海流にのって、世界中を旅していたらしい。今では村を訪れるものもいない幻の村。
 スピカがピーちゃんに聞く。

「アビス村はどこに?ピーちゃんが案内してくれるの?一緒に行こう!」

 ピーちゃんは、ゆっくりと首を横に振る。

「我輩の役割はここまでです。アビス村は、森を出た道をまっすぐ行った岬から潜れば、村に繋がる海流に乗ってすぐです。
 水耐性の2人なら溺れることもないでしょう。
 おっと、忘れるところでした。コフィ、あなたの両親からあなたに渡すものを預かっていますよ」
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