歌物語

令和二年（西曆二〇二〇年）八月

廣島ニ原子爆彈ノ投下セラレタリ

昭和二十年八月六日午前八時十五分米軍ハ廣島市ニ於テ初ノ原子爆彈ヲ投下シ無辜ナル人々ヲシテ老幼男女ノ區別ナク殘酷ニシテ死ニ至ラシメタリ假令生殘リタリト雖モ壯絕言語ニ絕シ筆舌ニ盡スベカラザル苦痛ヲ永キニ及ビ之ニ加フ命ヲ奪ハレタル者十六萬人被曝シタル者五十六萬人ナリ熱線爆風ニ由ル傷創正視スルニ耐ヘズ放射能ヲ以テ廣島市ヲ穢シ爆風ヨリ逃ルルヲ得タル者ヲモ殺戮シタリ
是人類相互ニ爲スベキノ所業ナリヤ斷乎否ナリ是外觀上ハ人ナリト雖モ人倫ニ悖リテ尙恥ヂザル畜生ノ如キノ所業ナリ或者ハ是戰爭終結ニ際シ大日本帝國ヲシテ降伏セシムルヲ奬ムベク爲シタルモノナリトシ以テ原子爆彈ヲ投下セシハ正當ナリトス此ノ論論スベクモナキハ昭カナリト雖モ敢テ之ヲ論ゼムトス原子爆彈ヲ投下スルガ如キハ如何ナル狀況萬已ムヲ得ズト雖モ絕對ニ之ヲ爲スコトアラザルベシ是萬人ノ認ムベキ所ナリト信ズ核爆彈ヲ初メトスル核兵器ノ齎スハ破滅ノミナルコト毫モ疑フベカラズ若シ核兵器ノ存續シ更ニ投下セラルルガ如キハ人倫ニ悖ルノミナラズ延テハ人類ヲシテ滅亡セシムベシ依ツテ核兵器ハ迅速且永久ニ芟除セザルベカラザルナリ
右表明ス

靈魂ニ安寧アラムコトヲ期シテ拙作ヲ揭グ
一、
靈魂れいこんに今いま再ふたたびの誓ちかひせむかくの如ごときはもはや起おこさじ
二、
戰爭たゝかひの悲慘ひ　さんさ傳つたふる廣島ひろしまを永ながく遺のこして平和へいわ　守まもらむ