平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

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第66話 どのみち人智を超えてるぜ、ダンジョンって場所はよ……

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 今すぐにでもダンジョンに向かいたいジップオレだったが、ミュラに止められて、渋々ながらもフリストル市に戻ってきた。

 ミュラの意見としては、今日明日急いだところで大差ないし、今後の計画を錬った方が早く上層にたどり着けるとのことだった。もちろん言われるまでもなくオレだってそう思うが……しかしそれで焦りがなくなるかはまた別の話だ。

 だからオレは、焦る気持ちを抑えてフリストル市に入ると──盛大な歓声によって迎えられた。

 オレは、ミュラや警備隊と一緒に、まるで凱旋のように大通りを歩く羽目になり……なんとなく居心地の悪さを感じていたら、向こうから興奮しきったカリンが走ってきた。

「すごいよジップ君! あれほどの魔獣を一人で撃退しちゃうなんて!」

「ああ……もうみんな知ってるのか?」

「もちろんだよ! みんな、ジップ君に感謝してるよ! だから街はもうお祭り騒ぎだよ!」

「なるほどな……」

「とにもかくにもお疲れ様。それにしても、多頭雷龍を一人で討伐した強さは伊達じゃないね、ほんと」

 などとカリンが耳打ちしてくる。そんな彼女に、オレは苦笑を返すしかなかった。

 道中でカリンに聞いたところによると、都市の被害はゼロだった。

 魔人襲来をいきなり告げられて、都市は厳戒態勢になったそうだ。ダンジョンへの道は封鎖され、あまたの冒険者で物理魔法の両結界が張り巡らされ、魔人と魔獣の侵攻を固唾を飲んで待っていたという。

 しかしいくら待っても魔獣の一匹も来ないから、隠密行動に長けた冒険者数人を偵察に向かわせてみれば、オレが一人で、というか大勢で魔獣と戦っていることを目撃。偵察隊はそれをすぐさま都市に伝えた。

 ということはオレの固有魔法も盛大にバレてしまったのだろうな。少なくとも冒険者達には。まぁ指揮官に任命されたカリンとしては、状況把握は急務だったろうし、偵察は当然のことだろう。

 それに、もはや固有魔法がバレたところで支障ないしな。もとより都市を一人で出て行くつもりだったし、魔人であるユーティにもバレているわけだし。

 それにミュラがバックアップを申し出てくれている以上、都市追放の憂き目にも遭わないだろう。固有魔法を使いまくったというのに、街のみんなも、こうして歓迎してくれているわけだし。

 ということでオレは、凱旋パレードのような感じで街を歩いていき、やがてギルド本部へと辿り着く。

 本部に入るとミュラが言った。

「すぐに作戦会議を始めましょう」

 するとカリンが口先を尖らせる。

「え~、せっかく魔人を撃退したんだし、今日はパーッと飲もうよ」

 ギルド併設の酒場では、すでに宴会が始まっていたので、それを羨ましそうにカリンは眺めていた。

 しかしミュラは首を横に振る。

「急ぎ、検討しなければならないことがあるのです」

「仕方ないなぁ……わたしたちの他に誰か呼ぶかい?」

「そうですね……ジップのパーティ指導者だったゲオルクを呼んで頂けますか。それと、同級生のケーニィにも来てもらいましょう」

「分かったけど、そういえばレニとレベッカは?」

「まさにそのことで、作戦会議をしなければならないのですよ」

「なるほど……そういうこと、ね」

 事情を察してくれたカリンは、祝賀ムードを霧散させて真剣な表情になると、ゲオルクとケーニィを呼びに向かった。

 その後しばらくして、ギルド長室に五人のメンバーが集まる。ミュラ、カリン、ゲオルク、ケーニィ、そしてオレの五人だ。

 その面子を前にして口火を切ったのはミュラだった。

「もはや隠し立てする必要もなくなりましたので先に言っておきますと、ジップは固有魔法持ちです」

「え……?」

 この面子で、そのことを予想していなかったのはケーニィだけだったのだろう。だからケーニィは目を丸くしてオレを見た。

「お前、そうだったの?」

「まぁ……そういうことだ」

「どうりで、成績がずば抜けていたわけだ……」

 ケーニィが状況を飲み込むのを待ってから、ミュラが話を続ける。

「ジップ、固有魔法の内容を説明してもいいですね?」

「ああ、ギルド長が説明するんだったら是非もないさ」

 ケーニィは元より、ゲオルクも固有魔法の内容までは知らないから、ミュラが一から残機無限の説明を始める。

 その説明を聞くにつれ、ケーニィは呆れ顔になっていき、ゲオルクもあっけにとられていた。

 そのゲオルクが、唖然としながらもオレに聞いてくる。

「なるほどな……たとえば多頭雷龍を討伐したときは、高レベル冒険者を大量に生み出したって訳か?」

「ああ、それで天の火を連発して倒したんだ」

「ちなみにだが、何百人くらいで倒したんだ?」

「う~ん、桁が違うな。ざっと10万体だ」

「10万……!?」

 それを聞いたゲオルクは絶句する。

 その驚きは、オレが10万体も残機を出せることと、そこまでしないと多頭雷龍は倒せないということ、その両方に言葉を失ったのだろう。

 しかしゲオルクは、すぐに我を取り戻して頭を振った。

「やれやれ……どのみち人智を超えてるぜ、ダンジョンって場所はよ……」

 そんなゲオルクのぼやきに答えるかのようにミュラが言った。

「だからこそ、我々はジップを当てにしなければなりません」

 そうしてミュラは真摯な眼差しでオレを見つめてきた。
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