平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

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第65話 あなたはどう感じましたか?

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「くそ……! 二人が攫われるなんて!」

 ユーティが転移した場所までジップオレは駆け寄るも後の祭りだった。レニとレベッカがこの場にいた痕跡は何もない。

 残機達の自爆攻撃によって、ユーティを地面に撃墜したまではよかったのだが……まさか二人を攫おうとするとは思わなかった。

 地面に落ちたユーティは、低空飛行で二人を守る結界に突貫。準本体一人ではユーティの勢いを止めることも出来ず、あえなく倒されたあとに二人は攫われてしまう。

 ユーティの狙いはあくまでもオレだと思っていたから、誘拐だなんて思いも寄らなかったのだ。

 いや……本来ならば予想しておくべきだった。

 ユーティの狙いとは、オレ自身ではなく、オレを上層に連れて行くことだったのだから。その目的までは分からないが。

 であるならばレニとレベッカを攫うのでもよかったのだ。そうすれば、オレは二人を助けるため、否が応でも指定された場所──つまり上層に行かざるを得ないのだから。

 むしろなぜ、これまでこの方法を取ろうとしなかったのかのほうが疑問に思えてくる。おそらくは正体を隠すためなのだろうが……

 召喚魔法同様、転移魔法も人間には扱えない。それは、チートを授かったオレであっても同様だ。

 どうやらこのダンジョン内では、移動系魔法は著しく制限されているようなのだ。もしかしたら、魔人達がダンジョン全体に魔法を掛けて、人間の地上再進出を防いでいるのかもしれない。

 だからなのか、移動系魔法は、人間には扱えなくても魔人は扱えると言われている。

 つまりユーティが、誘拐などという手に今まで打って出てこなかったのは、自分の正体を隠していたかったからなのだろう。転移魔法を使えば、一発で魔人だとバレるのだから。召喚魔法をギリギリまで使わなかったのも同じ理由だろう。

 だとしたら、どうしてユーティは正体を隠していたのか。

 そしてオレを上層まで連れて行き、一体何をさせたいのか。

 結局のところ、今この場でどれほど推察しようとも答えは出てこない。手がかりが少なすぎるのだ。

「こうなったら、一刻も早く上層に向かわないと……」

 オレがそんなことをつぶやきながら残機を回収すると、背後から声を掛けられる。ミュラだった。

「ジップ、待ちなさい。なんの準備もナシに上層へ向かうつもりですか?」

 オレは振り返ってミュラを見る。

「二人が上層に連れ去られたんだ。もはや猶予はない」

「だとしても、単身で上層に向かうなど自殺行為です」

「だがユーティは魔人だった! だったらレニとレベッカが危ない……!」

「わたしには、あの二人にユーティが危害を加えるようには思えません」

「……どういうことだよ?」

 予想外のことを言われ、オレは眉をひそめる。

 ミュラは、落ち着いた様子で言ってきた。

「さきほどユーティと戦って、あなたはどう感じましたか?」

「どう……とは?」

「魔人の力があれば、こんな都市を滅ぼすなど造作も無いはず。でも彼女はそれをしませんでした」

「………………」

 それはオレも感じていたことだった。多頭雷龍一匹を都市のド真ん中に召喚すれば、都市を滅ぼすことなど簡単だったのだから。

 戦闘中の疑問を思い出していると、ミュラが話を続けた。

「つまりユーティは、少なくとも人間を根絶やしにする気はないのでしょう」

「だからといって、レニとレベッカに危害を加えない保証はないだろ」

「もちろん保証はありません。ですが確率で言えば、危害を加える確率は低いでしょう。そもそも手段を選ばないのであれば、ユーティはいかにようにも出来たはず。都市に潜伏していたのですからね」

「それは……確かにそうだが……」

「なのに最後の最後まで、ユーティは今回のような強硬手段は取らなかった。最終的には取ってしまいましたが、そこには何かしらの事情があると見るべきです」

「やむを得ない何かしらの事情があって誘拐したが、ユーティの本質はそこまで非道ではないということか?」

「ええ、そうです」

 ユーティが非道な性格であった場合、もっと早く事を起こしていただろう。わざわざオレを説得して、さらには戦う必要なんてなかったはずだ。

 その本性を隠しておかねばならない事情があるのかもしれないが……そちらのほうが信憑性に欠ける。やむを得ない事情で強硬手段に打って出たことのほうがまだ信じられる。

 圧倒的な力を持つユーティが、オレたちをあざむく必要はないのだから。

 だとしたら、二人はそこまで酷い扱いは受けないのかもしれない。だが──

「──だが、捕らわれているからには、不自由な身であることに変わりはないだろ。だったら一刻も早く助けないと」

「もちろんそうですし、そもそもわたしは、上層へ行くなとは言っていませんよ」

「え……?」

「我々に『あなたのバックアップをさせてください』とお願いしているのです」

「お願い?」

 ミュラの言葉に、オレは首を傾げるしかないのだった。
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