平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

文字の大きさ
上 下
51 / 69

第51話 疑念の原因を突き止めなかったことを大いに後悔することになる

しおりを挟む
 ジップオレが大穴を調べた結論としては──大穴にも異変はなかった、ということだった。

 もっとも、大穴が空いたこと自体が異変中の異変ではあるのだが。

 それに調査といっても、大穴は三階層先でもう塞がっていたのだ。その辺の階層なら、ベテラン冒険者でも到達しているし、だから大した発見も得られなかった。

 つまり分かったことと言えば、異常なまでの修復速度ということくらいか。ミュラの半眼が大きく見開かれるほどには異常事態だしな。階層を貫通するほどの損傷だなんて、修復まで数年は掛かってもおかしくはないだろうに。

 まったくもって不可思議な修復速度ではあるが、でもそのおかげで、多頭雷龍以外の上層魔獣が落っこちてこなかったわけだ。それは不幸中の幸いと言えるだろう。

 何しろ、多頭雷龍のようなバケモノが何匹も何十匹も落ちてきたら、オレでもさすがに討伐なんて無理だったからなぁ。まったくもって考えたくもないよ……

「ジップ、天井まででいいので、わたしを大穴付近に近づけてください」

 大穴を調べたオレの見解を聞いた後、ミュラがそんなことを言ってくる。

「構わないが……ミュラって飛行魔法が使えないのか?」

「使えますが、大穴付近で調査魔法を使いたいのです」

「ああ、そういうことか」

 ミュラほどの魔導師であっても、魔法を同時に発現することは出来ない。というより魔法の同時発現は人間では出来ず、オレの裏ワザをもってしても不可能だ。まぁオレの場合、残機があるから同時発現しているようなものではあるが。

 ということでオレがミュラを抱っこすべく近づこうとしたら、その間にユーティが割って入った。

「飛行魔法はわたしが使う」

「え……どうして?」

「どうしても」

「……?」

 なぜかご機嫌斜めっぽいユーティに、オレは首を傾げる。

「でもオレが護衛した方がいいから、ユーティまで行く必要は──」

「わたしが行く」

「いやあの……」

「それとも何? ジップはそんなにミュラと密着したいの?」

「い、いや別に、そんな意図は微塵もないが……」

「ならいいでしょ」

「まぁ……別にいいけど……」

 なんだか釈然としない気分でいると、今度はカリンが言ってきた。

「はいはーい! じゃあジップ君はわたしを抱っこして!」

「……はぁ?」

「わたしも、大穴付近で調査したいからね!」

 さっきまで、ダンジョンにいること自体怖がっていたのに、どういう風の吹き回しなのか──オレがさらに首を傾げていると、今度は明らかにムッとした感じでユーティがカリンに言った。

「なら、あなたはわたしが背負う」

「いやいや、そんなの大変でしょう?」

「大変じゃない」

「いやいやいや、そうなったらいざというとき戦えないでしょ?」

「いざというときはあなたを落とすから問題ない」

「イヤだよそんなの!?」

 などというやりとりをボンヤリ見ていたら、ぽんっと肩に手が置かれた。

「お前さんも、なかなかに大変だな」

「えーと……どういう意味だ?」

 ゲオルクの意味深な発言に、オレは首を九十度傾げたい気分になる。

 するとゲオルクが呆れ顔になった。

「お前さん……よく鈍感だと言われるだろう?」

「言われた記憶はないが?」

「ああ……だからこそか……」

 なぜゲオルクが納得しているのかまったく分からないが、カリンとミュラの言い合いがちょっとヒートアップしてきたので、オレは止めに入った。

「ああもう、やめやめ! そうしたらカリンは、ゲオルクが連れて行けばいいだろう?」

「なんでそうなるの!?」

 オレの完璧な解決策に、カリンがなぜか悲鳴を上げる。

「なんでって、むしろなんでユーティ一人に任せるのか分からん。それに、いざというときを考えるなら、オレの手が空いていたほうがいいだろ。自分でいうのもなんだけど」

「それは……そうだけど……」

 どうしてかカリンは納得していないのだが、オレの隙のない意見に、反論できる余地などないのだ。

 あとゲオルクが、なぜか傷心の雰囲気を醸し出して背中を丸めているんだが……どうしてだ?

「カリン、いい加減にしなさい」

 口先を尖らせているカリンに、ミュラが叱責する。

「遊びで来ているのではないのですよ?」

 するとカリンも負けじと言い返した。

「そもそも、ミュラがジップを指名しなければよかったじゃん」

「………………この中で、一番腕が立つのはジップなのですから、指名するのは当然です」

「そーかなー? そのジップ自身が言うとおり、彼の手を空ける手が最善だったんじゃないかなー?」

「何を言いたいのですか、何をっ」

 またぞろ言い合いが始まりそうだったので、今度はミュラとカリンを止めに入る。

「はいはい、そこまでだそこまで! ほんと、ここで言い合いをしていても仕方がないんだから、さっさと行くぞ」

 そんなわけで、ミュラはユーティが抱え、カリンはゲオルクがおんぶする。そしてオレは単身で周囲を警戒しながら浮かび上がる。

 大空洞天井まで来ると、ミュラは大穴の壁面に向けて魔法を放った。あの魔法は──魔力を計測する魔法だな。

 オレは不思議に思ってミュラに聞いた。

「ミュラ、壁面に向かってそんな魔法を使って、何をしているんだ?」

 ダンジョンに向かって魔力測定したところで、この壁面にどのくらいの魔力が含有しているかくらいしか分からないと思うが。

 オレのその疑問に、ミュラが無表情のまま答えてきた。

「もしも、この大穴が魔法によって穿うがたれたものだとしたら、その残滓が残っているかもしれません」

「ああ……なるほど。そういうことか」

 日本に例えるなら、ミュラは、犯行現場で指紋採取みたいなことをしていることになる。とはいえ、この場合の犯人はすでに分かっているはずだが……

 だからオレは、さらなる疑問をミュラにぶつけた。

「でもさ、この大穴を穿ったのは多頭雷龍だろ? それを今さら調べたところでどうなるんだ?」

 調査魔法を終えたらしいミュラは、真剣な表情をオレに向けてくる──が、ユーティにお姫様抱っこされている状態なので、なんとなく締まらない……

 しかしミュラは、そんな状態にも関わらずシビアな口調で言った。

「ええ……そうですね。ですが念のための調査です」

 なんとなく端切れの悪いその言いように、オレはやはり疑念を持つも……具体的にそれがなんなのかまでは分からない。

 だからとりあえず、魔力測定の結果を聞いた。

「で、魔力残滓は残っていたのか?」

「いえ……やはり時間が経ちすぎたのでしょう。ダンジョンの魔力しか検知できませんでした」

「そうか……」

 そうしてこの場では、オレの疑念は払拭されないまま調査終了となる。

 だが後日、この疑念の原因を突き止めなかったことを大いに後悔することになるのだが……この時のオレは知るよしもなかった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...