平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

文字の大きさ
上 下
50 / 69

第50話 まるで、誰かが手助けでもしているかのようですね……

しおりを挟む
「だいぶ修復されていますね……」

 大空洞に入るなり、ミュラがそんなことをつぶやく。

 だからジップオレは、念のためミュラに聞いた。

「修復されているって、ダンジョンのことか?」

「ええ、そうです。あれだけあった戦闘の爪痕が、おおよそなくなっています」

 その戦闘の当事者はオレなのだが、この大空洞がどれほどの惨状になっていたのかは覚えていない。というより、土埃に雷撃に結界にと滅茶苦茶な状況で視界ゼロに等しかったし、そもそも周囲の被害なんて気に掛けている余裕なかったしな。

 そんなことを思い出していたら、ミュラが言葉を続けた。

「そしてこの回復速度は異常です。まるで、誰かが手助けでもしているかのようですね……」

 ダンジョンは、壁・床・天井などが壊れた場合、自然と直る仕組みになっている。

 そもそも、ダンジョンの構造が刻々と変化しているわけだから、修復能力があったところで誰も疑問には思わないわけだが、その能力は『ダンジョンは生きている』と囁かれている原因の一つでもあった。

 ダンジョン自体が魔力を帯びているんだから、自己修復できても不思議じゃないだろうけれども、だからといってダンジョンが生物なのか否かは微妙なところだな。オレとしては、ダンジョン生物論は避けて欲しいところなのだが。

 なぜって、生物の腹の中にいるかのようで気持ち悪いしなぁ。

 だからオレはミュラに言った。

「多頭雷龍が死んだときに、大量の魔力が発散されて、その大半は未回収だったわけだろ? だとしたらその魔力がダンジョン修復に影響を及ぼしたんじゃないか?」

「魔力を修復に使うには、魔法を使わねばなりません。つまり魔法的な処置が行われたのならダンジョン生物論もあながち間違いではないということになります」

「そ、そうか……」

 ダンジョン生物論を否定したくて言ったのに、むしろ肯定する証拠を増やしてしまったようで、オレは思わず顔をしかめていると、ミュラはカリンに顔を向けた。

「ですが今は、ダンジョンの性質を調査するときではありません。カリン、魔獣の反応はどうですか?」

 オレの腕にしがみついたままのカリンは首を横に振る。

「この付近には魔獣の一匹もいないね。上層魔獣がいた場所で、しかも大戦闘が行われたあとだから、魔獣もビビって寄りつかないのかも」

「そうですか。ではまずは、三組に分かれて大空洞内を調べましょう」

 その後しばらく、オレたちは大空洞内を探索して回るも、取り立ててめぼしい発見は得られなかった。

 例えば、何か魔力的な歪みみたいなのがあって、そこが上層への近道になっているなら話は早いのだが、そんな分かりやすい状況はまるでなかったわけだ。

 そうしてオレたちは、少しの落胆を味わいながらも、多頭雷龍が死んだクレーターを調べたが……結果は同じだった。

 やがて全員がクレーターの中心へと集まってきて、ゲオルクが口を開く。

「異常な感じは特にしないな。みんなはどうだ?」

 ゲオルクの問いかけに、全員が「違和感なし」と返答する。その後にユーティが言った。

「このクレーター自体、当初の半分くらいのサイズになってる気がする。もし何かしらの痕跡があったとしても、修復の過程でもう消えてしまったのかも」

 そのユーティの発言に、ミュラが肩を落とした。

「確かにその可能性もありますね……」

「悪いな、オレの回復に付き合わせたせいで」

 なんとなく申し訳なくなってオレが頭を下げると、ミュラは無表情なまま言ってきた。

「ジップのせいではありません。あなたの回復を待つよう指示したのはわたしですし、急いだところで、何も見つけられなかった可能性のほうが高いと思います」

 ミュラのその慰めに、ゲオルクも頷いてくれる。

「そうだぞ。そもそも上層魔獣が戦った場所に、ジップ抜きで来たくないしな」

 そんなゲオルクに、オレは苦笑を向けた。

「おいおい、都市内随一の盾使いが何を言ってるんだよ」

「バカ言え。上層魔獣を前にしたら、オレの盾なんて紙切れと一緒だよ」

 ゲオルクはお手上げのポーズをしてみせた。

 そんな感じでしばらくは雑談になる。その間にミュラが、カリンと少し会話をしていた。

 そして雑談が収まったところで、ミュラが全員に向かって言った。

「では残りの調査対象は、あの大穴ということになりますが……」

 全員の顔が天井に向けられる。

 そう──残された調査対象と言えば、多頭雷龍が落ちてきた天井の大穴くらいだった。

 この大穴だけは、まだ塞がれておらず、天井に暗闇をうがっている。オレたちが魔法で作っている光も届かないほど高い天井なので、大穴の先がどうなっているのかは……飛び込んでみるしかなさそうだった。

 だからオレはミュラに言った。

「そうしたら、ちょっと大穴に入って様子を見てこようか?」

「………………」

 オレの提案にミュラは顔をうつむける。そんなミュラにゲオルクが、にわかに慌てて言った。

「おいおいミュラ、いくらなんでも、そんなことはさせられないだろうが」

 まぁ……普通に考えれば、上層まで繋がっているかもしれない大穴に飛び込むなんて自殺行為だ。

 とはいえ、ミュラがカリンを連れてきたということは、大穴を調査することも視野に入れてのことなのだろう。先ほどの雑談中に、大穴周辺の索敵結果を聞いていたに違いない。

 だからオレは、迷っているであろうミュラに確認する。

「各階層の大穴付近に、魔獣はいると思うか?」

「……魔獣はいないでしょう。この場と同様、魔獣達は怯えて近寄らないのだと思います」

 ミュラのその断定に、ゲオルクもユーティも「なぜ?」とは聞かなかった。ミュラかカリンのどちらかが固有魔法で状況把握していることを分かっているのだろう。

 だからオレは、勤めて明るく言った。

「なら、やっぱり大穴を調べよう。万が一にでもヤバイ魔獣がいたら、すぐに引き返してくるから」

 そういうオレに、カリンは心配そうな眼差しを向けてくる。

「分かってると思うけど……そんなに上層まで行かないでよ?」

「もちろん分かってるさ」

 カリンの索敵上限は十階層までだから、それ以上先の状況は分からない。だから危険は一気に増大するし、オレとしても今は大人しくしていたいしな。

「それじゃあ、ちょっと見てくるよ。小一時間くらいで一度帰ってくる」

 そうしてオレは、飛行魔法を使って大穴へと入った。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

そして俺は召喚士に

ふぃる
ファンタジー
新生活で待ち受けていたものは、ファンタジーだった。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...