平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

文字の大きさ
上 下
48 / 69

第48話 レニとレベッカに囲まれるように歩きながら

しおりを挟む
 ジップオレは、レニとレベッカの手厚い看病を受けながら──

 ──レニが作った手料理は、酸っぱすぎたり辛すぎたりでちょいとフォークが進まなかったり、レニが洗った着替えは破けてしまったり、レニが病室の整理整頓をしたら余計に散らかったり──

 ──本当に看病されていたのか、それとも子供にお手伝いを教えようとした結果に余計手間が掛かる感じだったのかは分からないが、そんな混乱をものともせず、オレは回復していった。

 ちなみに……

 洗濯や掃除については、レニとレベッカが交代制でやってくれていたから、レニが失敗するのも仕方がないのだが、料理については、レベッカが付き添いながら教えていたのにもかかわらず、なんであんな味付けになったしまったのか……

 疑問に思ったオレは探りを入れたところ、レニが白状した。

「隠し味を入れた方が、もっと美味しくなるかと思って……」

 そーゆーのは、料理が上達してからやってほしい……(涙)

 レベッカの目を盗んで──例えばレベッカが食材を取りに台所を出たり、料理をちょっと寝かせていたりの隙をついて、レニは、台所にあった未知の調味料や香辛料をドバドバ入れていたという。そもそも、ドバドバ入れたら隠し味にもならないと思うが。

 だから食えないほどにまずくはないのだが、絶妙に変な風味がしたわけか。

 最初はオレも、せっかく作ってくれたのだから文句を言わずに食べていたんだが、それが何度も続くと、さすがにおかしいと思って聞いてみたわけだ。

 そういったわけでレベッカの監督をより強化した結果、まともな料理が食えるようになった。ちょっと焦げていたり、形がいびつだったりはご愛敬といったところだろう。

 まぁなんにしても、あのレニが、料理をするだなんてなぁ……

 オレはそれだけで感無量になっていたわけだが。

 もしかして、オレが怪我をしたり寝込んだりするほどに、レニは成長するんじゃないか?

 だとしたら、オレが今までやっていたことって……たんにレニを怠け者にさせるだけだったとか……

 そんな、ちょっと恐ろしい現実に気づくも、だからといって今後も怪我や病気をしまくりたいとはさすがに思えなかったので、その考えは引っ込めることにしておく。

 そうして六月も上旬が終わる頃、オレは晴れて退院することが出来た。

「ふぅ……やっぱり、自分の力で動けるってのは快適だなぁ」

 退院日にも二人は来てくれたので、オレは、レニとレベッカに囲まれるように歩きながら病院を後にする。

 たまにすれ違う冒険者や知人に「ようジップ、退院できたんだな」とか「今回は災難だったなぁ」とか声を掛けられながら、オレたちは街中を歩いて行った。

 日本なら、これから地道なリハビリをしなければならないところだが、異世界人に転生したオレは、魔力のおかげでバッチリ全治した。これからすぐにでもダンジョンに繰り出せることだろう。

 そんなオレは、街を歩きながら二人に言った。

「レベッカもレニも悪かったな。ぜんぜんダンジョンに出向けなくて」

 オレがそういうと、レベッカが笑っていってくる。

「構わないわ。多頭雷龍の出現で、探索階層の制限が出ていたから、どのみちダンジョンに出てもやることなかったし」

 そうなのだ。ギルドマスターのミュラさんは、ここ数週間ほど、ダンジョン探索の制限を掛けていて、ベテラン冒険者と言えども、ダンジョンの奥へ進むことは禁止されていた。

 多頭雷龍などというデタラメな魔獣が都市近郊に出現したわけだから、冒険者としても、調査完了して安全が確保されるまでは、ダンジョンの奥へ進みたいとも思わないだろうしな。

 だからベテラン冒険者は、都市周辺の魔獣を討伐する程度になる。それはそれで街の安全を守れるからいいのだが、そうなると、そこで研修のようなことをしていた新人冒険者はやることがなくなってしまうわけだ。

 だから最近の新人冒険者は、都市内でもっぱら自主練に励んでいるという。

 数週間くらいならまだしも、これが数カ月、半年、一年と続くようだと新人冒険者は収入を得られず困ってしまうだろう。日本で例えるなら、就職氷河期で若者が就職出来ない感じだろうか。

 ちなみにオレたちパーティの場合は、多頭雷龍を討伐したわけだから、その報酬で向こう数年間は遊んで暮らせるほどに貯金が出来た。

 表向きは、多頭雷龍は同士討ちということになっているが、換金対象になるのはあくまでも魔力だから、多頭雷龍の死後に放出された魔力を、オレの吸収晶は、ある程度を自動吸収していたのだ。

 オレが気絶したせいで、多頭雷龍が放つ魔力のほとんどは吸収できなかったにもかかわらず、それでも、オレたち三人が向こう数年は遊んで暮らせるほどの魔力量になったのだから凄まじい。

 ちなみにオレたちパーティは、討伐で得た報酬から、毎月決まった額をメンバーに支払う固定給制にしていた。つまりパーティを会社に見立てたわけだ。そして余った金は会社であるパーティの内部留保としておく。

 それを提案したのはオレで、当初、レベッカが「それだとジップが損するでしょう?」と言われたのだが、そもそも、オレ個人が収入に困るようなことは、裏ワザのおかげであり得ない。しかしレベッカが納得しなかったので、オレの固定給を多めにするということで承諾してもらった。

 そんなわけで、多頭雷龍の魔力から得られた貯金は、レニには内緒に出来ている。よく考えれば、まだ大した討伐も出来ていないのに、固定給が支払われること自体がおかしいのだが、レニはそういうことにまで気が回らないしな。

 そんな感じで内緒にしておかないと、またぞろレニが「働きたくない」だの「食っちゃ寝したい」だの言い出しかねないからなぁ……最近は、せっかくいい方向に進み始めているのだから、なおさら内緒にしておきたいところだ。

 とまぁ、オレたちの懐事情は温かいのだが、冒険に出られない新人冒険者はまったく違うだろう。

 だからオレは、明日から早速調査クエストに出る予定だった。

「わたしも、調査クエストに加わりたかったわ……」

 オレが、明日朝イチで調査クエストに出ることを二人に話していたら、レベッカがそんなことを言ってきた。今回は、レベッカとレニは留守番だ。

 だからオレは、レベッカに苦笑を送る。

「また上層魔獣に出くわしたら、今度は逃げ切れるかも分からないからな。辛抱して待っててくれ」

「それは分かってるけど……けどジップも、本当に気をつけてね? もう無理はしないで」

「ああ、もちろんだ」

 とはいえ、上層魔獣に出くわした場合、唯一対抗出来るのはオレだけだろうからな。無理をしなくていい状況というものが思い浮かばない。

 しかしオレは、そんな本音は飲み込んで明るく言った。

「オレが療養している間、上層魔獣に出くわした例はなかったわけだから、もう大丈夫だと思う。念のための調査ってわけだ」

 そんな説明にレベッカと、さらにレニは不安げな表情だったが──オレの楽観的な意見に頷くしかないといった感じだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす
ファンタジー
テクノブレイクで死んでしまった35才独身のおっさん、カンダ・ハジメ。自分が異世界に飛ばされたと思ったが、実はそこは死後の世界だった!その死後の世界では、死んだ時の幸福度によって天国か地獄に行くかが決められる。最高に気持ちいい死に方で死んだハジメは過去最高の幸福度を叩き出してしまい、天国側と敵対する地獄側を倒すために一緒に戦ってくれと頼まれ―― そんなこんなで天国と地獄の戦に巻き込まれたハジメのセカンドライフが始まる。 小説家になろうでも同じ内容で投稿してます! https://ncode.syosetu.com/n8610es/

異世界コンビニ

榎木ユウ
ファンタジー
書籍化していただきました「異世界コンビニ」のオマケです。 なろうさん連載当時、拍手に掲載していたものなので1話1話は短いです。 書籍と連載で異なる部分は割愛・改稿しております。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
アデル・オルラド、30歳。 彼は、22歳の頃に、前世の記憶を取り戻した。 約1000年前、アデルは『魔術学』の権威ある教授だったのだ。 現代において『魔術』は完全に廃れていた。 『魔術』とは、魔術式や魔術サークルなどを駆使して発動する魔法の一種だ。 血筋が大きく影響する『属性魔法』とは違い、その構造式や紋様を正確に理解していれば、所持魔力がなくとも使うことができる。 そのため1000年前においては、日常生活から戦闘、ものづくりまで広く使われていたのだが…… どういうわけか現代では、学問として指導されることもなくなり、『劣化魔法』『雑用魔法』扱い。 『属性魔法』のみが隆盛を迎えていた。 そんななか、記憶を取り戻したアデルは1000年前の『喪失魔術』を活かして、一度は王立第一魔法学校の教授にまで上り詰める。 しかし、『魔術学』の隆盛を恐れた他の教授の陰謀により、地位を追われ、王都をも追放されてしまったのだ。 「今後、魔術を使えば、お前の知人にも危害が及ぶ」 と脅されて、魔術の使用も禁じられたアデル。 所持魔力は0。 属性魔法をいっさい使えない彼に、なかなか働き口は見つからず、田舎の学校でブラック労働に従事していたが…… 低級ダンジョンに突如として現れた高ランクの魔物・ヒュドラを倒すため、久方ぶりに魔術を使ったところ、人生の歯車が再び動き出した。 かつて研究室生として指導をしていた生徒、リーナ・リナルディが、彼のもとを訪れたのだ。 「ずっと探しておりました、先生」 追放から五年。 成長した彼女は、王立魔法学校の理事にまでなっていた。 そして、彼女は言う。 「先生を連れ戻しに来ました。あなたには再度、王立第一魔法学校の講師になっていただきたいのです」 、と。 こうしてアデルは今度こそ『魔術学』を再興するために、再び魔法学校へと舞い戻る。 次々と成果を上げて成りあがるアデル。 前回彼を追放した『属性魔法』の教授陣は、再びアデルを貶めんと画策するが…… むしろ『魔術学』の有用性と、アデルの実力を世に知らしめることとなるのであった。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...