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第45話 なんのことカナ!?
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カリンさんはぽんっと手を打ったあと、オレに向かって言った。
「もし上層への近道が出来たのなら、そこにジップ君を突貫させようよ!」
「………………はい?」
オレは、嫌な予感を覚えて聞き返す。
「どういう意味ですか?」
「だって、これまでジップ君のレベルが停滞していたのは、この辺の魔獣が弱すぎたからでしょ? でも上層へ行くには物資が足りない。だけど上層への近道が出来たのなら、その限りじゃなくない?」
「ふむ……なるほど?」
「だからジップ君をその近道に突貫させるんだよ! そんでガンガン戦ってもらうの! そうすれば多大な犠牲を出す必要もなくなるし、フリストル市も守れるし、みんな幸せ!」
「いや……オレ一人が不幸じゃないですかね?」
「強くなれるんだからいいじゃない!」
このヒト……どことなくレニに似ているような……基本的に他人任せなところとか。
カリンさんはさらに言い募る。
「それにひょっとしたら、地上に出られるかもよ!? しかも固有魔法持ちのジップ君がハチャメチャに戦えば魔人より強くなれるかも!」
魔人のレベルは99を優に超えるという話だから、いったいどれほどに強くなればいいのかさっぱり分からないが……
結局のところ、人類最大の問題は魔人なのだ。上層魔獣などその前座に過ぎない。
戦争の理論では、小国は超大国に勝てずとも、戦ったら痛い思いをすると思わせれば、それが抑止力になるという。密かに核でも保有していればなおよい。
この理屈を、そのまま異世界に転用するならば、オレが核兵器並みに強くなればいいということになる。そうすれば例え魔人に目を付けられても、そう簡単に攻撃してこようとは思わないだろう。あちらとしては、負けることはなくても手痛い思いをすることにはなるのだから。
そう考えると、オレという核兵器をどれだけ密かに開発できるか、ということになるわけだが……
「上層で暴れたら、それこそ目を付けられると思うがなぁ……」
人類がダンジョン深くに潜ってから約300年、未だ上層まで辿り着いた人間はいない。魔人が魔法で探索でも仕掛けていたら、上層に辿り着いた時点で、まず間違いなく見つかるだろう。
そうなると、下層へと降りてきた上層魔獣を討伐していくとか。
ただまぁいずれの場合も、上層への道が開けていた場合の話だ。
オレと同じ結論に達したらしいミュラさんが言った。
「多頭雷龍と戦った現場を改めて調査する必要がありそうですね」
ミュラさんの意見にオレも頷く。
「そのようですね。怪しいのは、多頭雷龍が降りてきた天井の穴でしょうけれども……」
「ええ。その穴を念入りに調べる必要がありそうです。ですのでジップの回復を待ってから、調査隊を編成しましょう」
オレの同行が必須なのは、上層魔獣と出くわしたとき、抗う術がないからだ。ミュラさんとしてはすぐにでも調査をしたいのだろうが、こればかりは仕方がない。
ミュラさんが話を続けた。
「調査隊メンバーは、ジップとわたし、それと事情を知るゲオルクとユーティにも同行してもらいます。そして──」
つぎにミュラさんは、意外な名前をあげる。
「──カリン、あなたにも同行してもらいますよ?」
「へ? わたし……?」
カリンさんはいっときぽかんとしていたが、やがて大きくのけぞった。
「ななななんでわたし!? 冒険者でもなんでもないのに!」
「なぜも何も、あなたの能力が必要だからですよ」
「なんのことカナ!?」
「わたしが忘れたとでも思っているのですか? 今は非常時なのですから、あなたの固有魔法を存分に使ってもらいますよ」
その台詞に、オレは目を丸くした。
「もし上層への近道が出来たのなら、そこにジップ君を突貫させようよ!」
「………………はい?」
オレは、嫌な予感を覚えて聞き返す。
「どういう意味ですか?」
「だって、これまでジップ君のレベルが停滞していたのは、この辺の魔獣が弱すぎたからでしょ? でも上層へ行くには物資が足りない。だけど上層への近道が出来たのなら、その限りじゃなくない?」
「ふむ……なるほど?」
「だからジップ君をその近道に突貫させるんだよ! そんでガンガン戦ってもらうの! そうすれば多大な犠牲を出す必要もなくなるし、フリストル市も守れるし、みんな幸せ!」
「いや……オレ一人が不幸じゃないですかね?」
「強くなれるんだからいいじゃない!」
このヒト……どことなくレニに似ているような……基本的に他人任せなところとか。
カリンさんはさらに言い募る。
「それにひょっとしたら、地上に出られるかもよ!? しかも固有魔法持ちのジップ君がハチャメチャに戦えば魔人より強くなれるかも!」
魔人のレベルは99を優に超えるという話だから、いったいどれほどに強くなればいいのかさっぱり分からないが……
結局のところ、人類最大の問題は魔人なのだ。上層魔獣などその前座に過ぎない。
戦争の理論では、小国は超大国に勝てずとも、戦ったら痛い思いをすると思わせれば、それが抑止力になるという。密かに核でも保有していればなおよい。
この理屈を、そのまま異世界に転用するならば、オレが核兵器並みに強くなればいいということになる。そうすれば例え魔人に目を付けられても、そう簡単に攻撃してこようとは思わないだろう。あちらとしては、負けることはなくても手痛い思いをすることにはなるのだから。
そう考えると、オレという核兵器をどれだけ密かに開発できるか、ということになるわけだが……
「上層で暴れたら、それこそ目を付けられると思うがなぁ……」
人類がダンジョン深くに潜ってから約300年、未だ上層まで辿り着いた人間はいない。魔人が魔法で探索でも仕掛けていたら、上層に辿り着いた時点で、まず間違いなく見つかるだろう。
そうなると、下層へと降りてきた上層魔獣を討伐していくとか。
ただまぁいずれの場合も、上層への道が開けていた場合の話だ。
オレと同じ結論に達したらしいミュラさんが言った。
「多頭雷龍と戦った現場を改めて調査する必要がありそうですね」
ミュラさんの意見にオレも頷く。
「そのようですね。怪しいのは、多頭雷龍が降りてきた天井の穴でしょうけれども……」
「ええ。その穴を念入りに調べる必要がありそうです。ですのでジップの回復を待ってから、調査隊を編成しましょう」
オレの同行が必須なのは、上層魔獣と出くわしたとき、抗う術がないからだ。ミュラさんとしてはすぐにでも調査をしたいのだろうが、こればかりは仕方がない。
ミュラさんが話を続けた。
「調査隊メンバーは、ジップとわたし、それと事情を知るゲオルクとユーティにも同行してもらいます。そして──」
つぎにミュラさんは、意外な名前をあげる。
「──カリン、あなたにも同行してもらいますよ?」
「へ? わたし……?」
カリンさんはいっときぽかんとしていたが、やがて大きくのけぞった。
「ななななんでわたし!? 冒険者でもなんでもないのに!」
「なぜも何も、あなたの能力が必要だからですよ」
「なんのことカナ!?」
「わたしが忘れたとでも思っているのですか? 今は非常時なのですから、あなたの固有魔法を存分に使ってもらいますよ」
その台詞に、オレは目を丸くした。
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