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第36話 レニ……ごめんなさい……!
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「なんで!? なんでジップを置いていくの!?」
レニの悲痛な叫びが聞こえてくるも、レベッカたちはそれを無視してひた走る。
全身の血流は激しく脈打ち、全速力の影響もあって息も上がっていたけれど、でも、それでもわたしは足を止めなかった。
「ねぇお願い! 止まって! このままじゃジップが……!」
レニの訴えは誰も聞き入れず、わたしたちは黙々と走るしかない。わたしは奥歯を噛みしめながら、張り裂けそうになる感情をなんとか抑えた。
「逃げるならわたしを下ろして! ジップと一緒に戦う!」
レニが思いもよらないことを言ってくるので、わたしは、涙に濡れるレニの顔を見た。
「ダメよ! わたしたちじゃ、ジップの足手まといにしかならない!」
「いくらジップだって、あんなバケモノには敵わないよ!」
「だからといってレニが戻ってどうなるの!?」
「最期までジップと一緒にいたいの!」
「………ッ!」
わたしが言葉を詰まらせると、レニを抱えるゲオルクさんが言った。
「大丈夫だ! アイツは固有魔法を持っている! きっと何か策があるんだ!」
しかしレニは引き下がらない。
「固有魔法がなんだというの!? あんなバケモノ相手に、どんな魔法が有効だっていうのよ!」
「それは分からないが……だが何か凌げる策はあるはずだ! だからジップが時間を稼いでくれているうちに、オレたちは都市に戻って体制を立て直す。その後、冒険者総出であれを討つんだよ!」
「その前にジップが死んじゃうよ!!」
「お、おい! 暴れるな!?」
ゲオルクさんに抱えられていたレニが暴れ出す。
大空洞からは逃げられて、今はダンジョン通路内を走っているが、十分な距離が取れたとはいえない。多頭雷龍の攻撃範囲を考えたら、この狭い通路にまで雷撃が入り込んでくる可能性だってある。
ゲオルクさんが、決死の思いで張り巡らせている防御結界を一歩でも出れば、即死するかもしれないのだ。
「レニ……ごめんなさい……!」
だからわたしは、魔力吸収をレニに放つ。
「なっ……なん……で……?」
レニは、縋るような目でわたしを見てきたけれど、すぐに頭を下げた。体は動かなくなり、人形のようにだらりとなる。
魔力が足りなくなったときに備えてと、ジップから教えてもらった魔法を、まさかレニに向かって使うことになるとは思わなかった……
ゲオルクさんが、レニを抱え直しながら言ってくる。
「レベッカ、悪いな」
「いえ……大丈夫です……」
わたしだって……本当は戻りたい……!
けど今のわたしやレニが戻ったって、おそらく、ジップの元に辿り着く前に、流れ弾にあたって即死するのは目に見えている!
それでジップの策が台無しにでもなったら、死んでも死にきれないから……!
だからわたしは、拳を握りしめて走る速度を上げた。
「急ぎましょう! 早くギルドに戻って部隊編成しないと!」
そうしてわたしたちは、すれ違う冒険者たちにも声を掛けながら、ダンジョン内をひた走った。
レニの悲痛な叫びが聞こえてくるも、レベッカたちはそれを無視してひた走る。
全身の血流は激しく脈打ち、全速力の影響もあって息も上がっていたけれど、でも、それでもわたしは足を止めなかった。
「ねぇお願い! 止まって! このままじゃジップが……!」
レニの訴えは誰も聞き入れず、わたしたちは黙々と走るしかない。わたしは奥歯を噛みしめながら、張り裂けそうになる感情をなんとか抑えた。
「逃げるならわたしを下ろして! ジップと一緒に戦う!」
レニが思いもよらないことを言ってくるので、わたしは、涙に濡れるレニの顔を見た。
「ダメよ! わたしたちじゃ、ジップの足手まといにしかならない!」
「いくらジップだって、あんなバケモノには敵わないよ!」
「だからといってレニが戻ってどうなるの!?」
「最期までジップと一緒にいたいの!」
「………ッ!」
わたしが言葉を詰まらせると、レニを抱えるゲオルクさんが言った。
「大丈夫だ! アイツは固有魔法を持っている! きっと何か策があるんだ!」
しかしレニは引き下がらない。
「固有魔法がなんだというの!? あんなバケモノ相手に、どんな魔法が有効だっていうのよ!」
「それは分からないが……だが何か凌げる策はあるはずだ! だからジップが時間を稼いでくれているうちに、オレたちは都市に戻って体制を立て直す。その後、冒険者総出であれを討つんだよ!」
「その前にジップが死んじゃうよ!!」
「お、おい! 暴れるな!?」
ゲオルクさんに抱えられていたレニが暴れ出す。
大空洞からは逃げられて、今はダンジョン通路内を走っているが、十分な距離が取れたとはいえない。多頭雷龍の攻撃範囲を考えたら、この狭い通路にまで雷撃が入り込んでくる可能性だってある。
ゲオルクさんが、決死の思いで張り巡らせている防御結界を一歩でも出れば、即死するかもしれないのだ。
「レニ……ごめんなさい……!」
だからわたしは、魔力吸収をレニに放つ。
「なっ……なん……で……?」
レニは、縋るような目でわたしを見てきたけれど、すぐに頭を下げた。体は動かなくなり、人形のようにだらりとなる。
魔力が足りなくなったときに備えてと、ジップから教えてもらった魔法を、まさかレニに向かって使うことになるとは思わなかった……
ゲオルクさんが、レニを抱え直しながら言ってくる。
「レベッカ、悪いな」
「いえ……大丈夫です……」
わたしだって……本当は戻りたい……!
けど今のわたしやレニが戻ったって、おそらく、ジップの元に辿り着く前に、流れ弾にあたって即死するのは目に見えている!
それでジップの策が台無しにでもなったら、死んでも死にきれないから……!
だからわたしは、拳を握りしめて走る速度を上げた。
「急ぎましょう! 早くギルドに戻って部隊編成しないと!」
そうしてわたしたちは、すれ違う冒険者たちにも声を掛けながら、ダンジョン内をひた走った。
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