平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

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第34話 何か……くる……

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 結局レニわたしは、レベッカママが何を気にしているのか、よく分からなかったんだけど……

 正門空洞を過ぎてからは、考えるどころじゃなくなっていた。

「ひぃーーー!」

氷矢グラチェス・サジータ!」

「きゃーーー!」

雷撃トニトゥルーム・ヒット!」

「んにょーーー!?」

炎爆フラマ・フレア!!」

 ジップたちは、わたしが思っていた以上にダンジョンの奥へと進出していて、だから魔獣とのエンカウントも頻発した。

 そしてスライムだったりゴブリンだったりの魔獣が現れる度に、ジップとゲオルクさんとが牽制して、レベッカが魔獣を仕留めていく。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 だからわたしは、もはや満身創痍──の気分で地べたに四つん這いになった。

「レニ、大丈夫?」

 今し方、オークを倒したレベッカが、しゃがんでわたしの背中を撫でてくれるも、わたしは大丈夫じゃない。

「も、もう……ダメ……」

「おい、お前は何もやってないだろ?」

 すると頭上から、ジップの呆れた声が聞こえてきたので、わたしは顔をあげてジップを睨んだ。

「こんな奥まで来るだなんて聞いてなかったもん!」

「奥って……そりゃあ一ヵ月も活動してんだから、いくつか上の階層くらいには来るだろ」

「他のパーティは、まだ都市周辺の階層じゃない!」

「まぁそれは、レベッカが優秀なせいだな」

「どうしてママは優秀なの!?」

「いやわたしを責められても……あとママって言わない約束でしょ?」

 わたしはママ……もといレベッカを睨むも、困った顔を返してくるばかりだった。

 するとゲオルクさんが言ってきた。

「まぁそろそろ昼だし、この先に開けた場所があるからそこで休憩を取るか。レニもそこまでがんばれるか?」

「は、はひっ……がんばります……」

 急に話しかけられたものだから、わたしは飛び上がるとレベッカの背後に隠れた。それを見たジップが「ぜんぜん元気じゃん」と言ってくるが、そういう問題じゃないのだ。

 もともと強いジップには分からないでしょうけれども、わたしみたいな貧弱な人間が魔獣とエンカウントすれば、それ自体で体力気力が削がれていくんだから……!

 などとジップに言おうものなら、またぞろ小言をいわれることは目に見えていたので、わたしは黙って歩くことにした。

 しばらくすると、ゲオルクさんが言った通り巨大な空洞に出た。だからわたしは思わずつぶやく。

「うわぁ……広い……」

 天井の高さは、フリストル市と同じくらいあるかもしれない。広さも訓練場の数十倍はある。これほど見晴らしがいいなら、魔獣の接敵にもすぐ気づけるだろう。わたしたち以外の冒険者はいないから、なおさら広く感じる。

 だからゲオルクさんは、その巨大空洞を少し進んだところで足を止めた。

「よし、この辺で昼にするか」

 するとジップがわたしに言ってくる。

「そうしたらレニ、防御結界を張ってみようか」

「え、ええ……?」

 いきなり無理難題なことを言われ、わたしは数歩後ずさる。しかしジップは容赦してくれない。

「魔力吸収訓練をしている間に、防御魔法の詠唱練習しとけって言ったろ? 戦闘中はまだ無理だとしても、今なら魔獣もいないんだから出来るはずだ」

「休憩中、ずっと結界を張り続けろと?」

「そうだよ」

「それじゃあ疲れるし、休憩にならない……」

「四の五の言わずに、や・れ」

「うう……」

 やむを得ず、わたしは呪文を唱え始めて、一分ほどで結界魔法を発現させた。

「ぬぐぐぐぐ……」

「お、おいレニ……息はしろよ? 息をとめてたって魔法は強くならんぞ」

「ででででも……体に力が入って……上手く呼吸できない……!」

 学校の授業でもそうだったけど、わたしは、魔法発現をすると体が強張ってしまうのだ。呼吸も詰まるほどに。

「ほらレニ、ヒッヒッフ~~~、のリズムよ?」

 レベッカが、隣で一緒に呼吸のリズムを作ってくれる。それに合わせてわたしは、ヒッヒッフ~~~と息をしていたら──

 ──パチン!

 まるで風船が破裂するかのような音を立てて、わたしの結界は掻き消えてしまった。

「あ、あれ……?」

 息をしたら結界が消えた、というよりは、誰かに壊された感じがしたのだけれど……

 わたしは振り向くと、後衛にいたユーティさんが剣を収めたところだった。

「ちょっと薙いだだけで消える結界じゃ、使い物にならないよ」

「ひっ!」

 ユーティさんに睨まれて、わたしはジップの背後に隠れる。

 あ、あのひと……すごく怖い……!

 前から気づいていたけど、絶対わたしを目の敵にしてる!

 わたしはジップの背中でガクブルってると、ジップが言ってくれた。

「いや、お前の剣で斬りつけたら、どんな新人だって結界は維持できないだろ」

「そんなに強く斬りつけたわけじゃない。ちょっと小突いた程度」

「まぁ……だとしても、レニはまだ初心者中の初心者なんだから」

 そうだそうだ、わたしはか弱いんだぞ!

 ユーティさんが怖いから、わたしは内心でジップに拍手喝采を送る。

 しかしユーティさんは反論してきた。

「そんな初心者を、ダンジョンに連れてきていいの?」

 そうだそうだ! どうしてわたしなんてダンジョンに連れてきたの!

 ユーティさんは怖いけど、いいことを言うので拍手喝采を送った。やっぱり内心で。

 するとジップがさらに反論する。

「これも訓練の一環だからな。そもそも、レニの事は任せてほしいって言ったろ?」

「………………分かった。もういい」

 ユーティさんはちょっとむくれた感じになって、背を向けてしまった。

 すると今度はゲオルクさんが、わたしとジップに言ってきた。

「ま、気にするな。アイツは融通が利かないが、悪気があるわけじゃないからさ」

「ええ、分かってますよ」

 いや、わたしは分かっていないんですけど。

 悪気がないなら、睨まないでほしいんですけど……!?

 だけどわたしは、その悲痛な叫びを誰にも届けられず、ジップには結界の張り直しを命じられ、ヒッヒッフ~~~と息を出し入れして張り直す。

 防御結界に集中する結果、満足に手も動かせられなくなったので、お弁当はレベッカに食べさせてもらう羽目になった。

 そんな感じで昼を食べ終えてから、腹ごなしの時間にと雑談をしていたら、ジップが急に眉をひそめる。

「何か……くる……」

「え?」

 隣にいたわたしはジップの顔を見た。

「何かって……?」

 しかしジップは答えず、遙か向こうの天井を見入っている。

「ゲオルクさん……!」

「ああ、まずいな」

 ゲオルクさんが立ち上がると、かすかな振動が感じられるようになった。

 ダンジョンで震動って……え? どゆこと……? この空洞全体が揺れている?

 戸惑うわたしに、ジップの鋭い声が向けられる。

「レニ、結界を解除! あと立ち上がれ!」

「は、はひ!?」

 気づけばすでに、メンバー全員が立ち上がって周囲を警戒している。

 わたしもワタワタと立ち上がり、結界を解除すると、ゲオルクさんが防御結界を改めて張り巡らせた。色といい形といい、わたしの結界がシャボン玉に思えるほど屈強な結界だ!

「な、何が起こっているの……!?」

 ダンジョンの揺れはますます大きくなり、わたしは立っていられなくなってフラつき始める。レベッカがわたしを支えてくれるが、その直後、ゲオルクさんが声を上げた。

「前方直上100メートル付近に魔獣反応! 天井から来るぞ!」

 ズドン!!

 そのゲオルクさんの声を掻き消して、天井が爆発する!

「ひやぁ!?」

 わたしは思わず悲鳴を上げたが轟音に押し負けた!

 その爆発した天井から降ってくる土砂と土煙の中に、何かがいる……

 だがその姿が確認される前に、おぞましい雄叫びが空洞内いっぱいに炸裂した……!
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