上 下
33 / 69

第33話 ジップと×××しちゃダメって

しおりを挟む
「あうう……久しぶりのダンジョン……やっぱり不気味……」

「ほらレニ。あなたの魔力はもう十分なんだから、しゃんとしなさい」

「で、でもでも……やっぱりしがみついてていい? レベッカママ……」

「だからママはやめて。手は繋いであげるから」

 う、う~~~ん……レベッカわたしって、なんだか本当にレニのママになりつつあるような……

 もちろん、レニの世話をすること自体はイヤでもなんでもないし、むしろ「この子、かわいいな~。こんな娘がいてもいいかな~」なんて思ったりしているのだけれど……あっ!

 そんなことを思っているから、ますますわたしがママ役に適合しているんじゃないかしら!?

 だからわたしは正門空洞を歩きながら、レニの耳元で囁いた。前を進むジップには聞こえないように。

(ねぇレニ。あなた、本当にそれでいいの?)

(いいって、何が?)

(わたしとジップの養女になるって話)

(もちろんいいに決まってるよ)

 なんの躊躇ためらいもなくレニが言ってくるものだから、わたしは拍子抜けをしてしまう。

 レニって、ジップの事が好きだったんじゃ……その、恋愛的な意味で。

 学生だったころ、ジップには聞いてみたことがある。

 しかしジップは「アイツは、オレの将来性が目当てであって恋愛感情はないと思うが……」とのことだったけれど……

 そのときは、ジップが鈍いから、レニの感情に気づいていないと思ったけど、ひょっとしてジップの言うとおりなのかしら?

 だとしたら……もしかするともしかして……わたしにもチャンスある?

(ねぇレニ、本当によく考えてみて? それって、わたしとジップが結婚するってことになるのよ?)

(そうだよ? 二人が結婚しないと、わたしの養子縁組は出来ないし)

(そ、そうよね……つまり、わたしとジップが……でも例えば、その……こ、子供とか出来ちゃってもいいの……!?)

(え?)

 わたしは、勢い余って妙な例えをしてしまう……!

 するとレニの目が丸くなった。

 さ、さすがに今の話は言い過ぎたかしら……あくまでも例えとはいえ……

 頬が熱くなるのを感じていると、しかしレニは楽しそうに言ってきた。

「いいね! ジップとレベッカの子供!」

「ちょ、ちょっと!?」

 大声でそんなことを言うものだから、ジップとゲオルクさんが振り向いてくる。たぶん後続のユーティにも聞こえてしまっただろう。

 ジップが呆れ顔で──でも顔はにわかに赤くなっていたけれど──言ってくる。

「おまいら……これからダンジョン攻略だってのになんの話してんだよ……」

「ち、違うわよ!? なんにも話してないから!」

「いやでも今──」

「気のせい! 気のせいだから!!」

 わたしはとにかく気のせいで押し切ると、ジップは「まぁいいけど……正門空洞を抜けたら気を引き締めろよ」と言いながら前を向いた。

 わたしは再びレニの耳元で、しかし口調は強めに非難する。

(レニ! 大声で恥ずかしいことを言わないで!)

(え……? 子供が出来るって恥ずかしいことなの?)

(あ、いや……そういうわけじゃないけど……)

(レベッカとジップの子供なら、すごく可愛くて、将来も有望だと思うけど)

(ま、まぁ……そうだといいなって思わなくもないというか……)

(あ、もしかしてそうすると、わたしはお姉ちゃんってことに!?)

(書類上はそうだけれども……子供にとっては、もはや母親が二人にしか見えないでしょうね……)

(それでもいいよ。うふふ……楽しみだなぁ二人の子供。わたし、出来れば女の子がいいな♪)

(い、いや……ちょっと待ってよ……)

 も、もしかしてこのコ………………

 ………………子供が出来る過程を知らないのかしら?

 でも考えてみれば、レニが話す相手って、これまではジップくらいしかいなかったわけで、奥手なジップが、そーゆー過程をレニに説明しているとも思えない。

 もし説明していたら……とりあえずジップを締め上げるけど。

 だとしたら、養女になるとか無邪気に言っているのも分かる気がする。

 ジップは「将来性が目当てだから恋愛感情はない」と言ってたけれど、レニは、恋愛感情がないのではなくて知らない──もしくは自覚がまだないってことなんじゃないかしら?

(ねぇレニ……よ~~~く考えてみて? 例えば、わたしとジップが仲良く街を歩いていたら、どんな気分になる?)

(え? それはもちろん、わたしも連れて行ってほしい。娘なんだし)

(そ、そう……でも連れて行くのはダメって言ったら?)

(………………レベッカは、わたしのこと嫌いなの?)

 すぐさま涙目になるレニに、わたしは慌てて首を横に振った。

(ち、違うのよ……! そうじゃなくて……あ、そうそう。家族だとしても、親と子では、一緒に行動できないことがあるのよ。レニのご両親だって、レニとずっと一緒にいるわけじゃないでしょう?)

(そう言われてみれば……そうだね。例えば寝室は、パパとママは一緒なのに、わたしだけ別だし……)

(そ、そうそう。だからねレニ。わたしたちの娘になったからといって、ずっとジップと一緒にいられるわけじゃないのよ?)

(…………そう、なんだ)

(ええ、そうなの。だから養女になることはよくよく考えたほうが──)

 と、そこまで言いかけたところで、わたしはふと気づく。

 『レベッカはママ』というレニの認識はやっぱり改めさせたくて、わたしは説明してきたけれど……

 でもそのためには、レニの恋愛感情を自覚させる必要があるわけで……

 そうなったら……えっと……どうなるの?

 もしかしてわたし……自分で自分の首を絞める真似をしてなくない?

 だったらこのまま、レニは無垢なままでいてくれたほうがいいんじゃ──

 ──ううん、違う。

 やっぱりそんなの、フェアじゃない。

 それでわたしがジップを独占してしまったら、わたしはきっと後悔する。レニの顔をまともに見られなくなる。

 だからわたしは、決着を付けなくちゃならない。

 でも……こんな、ダンジョンに向かう途中で言う話でもないわよね。

 だからわたしは、日を改めて、レニと二人っきりになって話そうと決めたタイミングで、レニが聞いてきた。不思議そうな顔つきで。

(レベッカ、どうしたの?)

(あ……ごめん。なんでもないわ。そろそろ分岐ポイントだし、この話は後日でいい?)

(いいけど……結局レベッカは、つまりダメっていいたいの?)

(ダメって、何が?)

(養女であるわたしは、ジップとえっちしちゃダメって)

「あなた分かってるじゃない!? 何もかも!!」

 わたしの悲鳴は、正門空洞に大きく反響してしまうのだった……
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...