平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……

佐々木直也

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第26話 女の子がオシャレしてるのに、褒め言葉のひとつも言えないのかな? キミは

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 どうにかレベッカの誤解を解き、オレとレベッカで、レニの相手をなんやかんやとしてから、さらにはレニを寝かしつけ──

 ──なんだかレニの思惑通り、レベッカとオレがレニの世話をし始めている気がしなくもないが、それはともかく。

 夕方になった時分に、オレはフリストル市を一望できる丘の上公園にやってきた。

 今日の夕方に、ユーティと会う約束をしていたのだ。話したいことがあるとのことで。

 最初は、飯でも食いながら話を聞こうかと思ったのだが……ユーティの用件はなんとなく分かっていた。少なくともデートとかじゃないのは確かだし。

 だからオレは、早めに切り上げたくて、かつ、ユーティと二人で会っていることを知人に知られたくなくて、市街地から離れた公園を指定した。

 そんなわけでオレがフリストル市を眺めながらユーティを待っていると、背後に人の気配がした。

「……お待たせ」

 素っ気ない言葉を聞いて、オレは振り返る。

 するとそこには、私服姿のユーティがいた。

 待ち合わせをしたのだからユーティがいることは分かっていたのだが、それでもオレは思わず気後れする。

「お、おう……オレも今きたところだから……」

 何しろオレは、飾り気のない冒険者姿のユーティしか知らないわけで、オシャレしてきた彼女に気後れを感じても致し方ない……と思う。

 それにしても……青いワンピースに、黒のストッキング姿なのは、ちょっと反則ではなかろうか? 太もものラインがめっちゃ際立っているし、体の凹凸だって妙に強調されているし。さらには、ブカブカに見えるデザインのブーツによって、脚の細さが強調されている。

 そんな私服にストールを一枚掛けて、小さめのショルダーバッグを肩から提げていた。

 ………………きっと、このあとデートにでも行くのだろう、うん。

「どうかした?」

 ユーティが小首を傾げてオレを覗き込んでくるものだから、オレは思わず立ちくらみを感じた……こいつ、狙ってやっているのではあるまいな? サラサラの髪の毛が、まるで計算され尽くしたかのように風に流れてるし。

 オレは正味50数年ほど男をやっているわけだが、しかし今は18歳の若造なわけで、だから年上のお姉さんの魅力に参りそうになっていた……私服だけで。

 しかも、どうしてか懐かしさを感じるし……オレの前世では、こんな美人と会話したこともないのだが。

 懐かしさというか、マンガやアニメで見た憧れということか?

「おーい?」

「あ、ああ……ごめん。ユーティの私服姿を初めて見たもんだから……」

「…………ふぅん」

 思わず本音を言ってしまうも、ユーティはさほど気にした様子もなく、オレの隣に並ぶと、夕焼けに染まった街を眺める。

 フリストル市の最高標高に位置するこの公園は、ビルで言えば10階分くらいの高さになるだろう。だから、色とりどりの建物が並ぶ都市の端まで見渡せることが出来た。

 この都市で、唯一開放感がある場所でオレは気に入っているが、今はあまりひとけはない。

「それで?」

 不意にユーティに何かを問われて、オレは「え……?」と眉をひそめる。

 するとユーティは、頬を少し膨らませた。

「女の子がオシャレしてるのに、褒め言葉のひとつも言えないのかな? キミは」

「え、あ、いや……ユーティがそういうことを求めてるとは思わなくて……」

「わたしがどうかじゃなくて、褒めるのが礼儀」

「そ、そういうもんか……じゃ、じゃあその……よく似合ってると思うぞ?」

「はぁ……ジップって、こういう方面はぜんぜんダメなんだね」

「経験が少ないもんで……」

 いくら残機を増やそうとも、本体のオレが女子に声も掛けられないようでは、経験がまるで共有できないからなぁ……

 まぁフリストル市の場合、多くの人間に面が割れているから、見知らぬ女性にナンパなんて出来るはずもないが。

 などと心の中で言い訳をしていたらユーティが言ってきた。

「まぁいいよ。今日はそういう話をしに来たんじゃないから」

 ユーティは、真面目な顔になるとオレを見上げる。

 だがユーティが話し出す前に、オレの方から切り出した。

「最初に言っておくが、パーティからレニを追放しろとか、そういう話なら聞かないぞ」

「………………」

 オレに先制攻撃をされたのが不服なのか、ユーティは少し不機嫌そうな顔になる。

「そういう話をするつもりはなかったけれど……」

「……そうなのか?」

「……でも、あの子は明らかに、ジップの足手まといじゃない」

「そんなことは言われなくても分かってる。だがこちらにも色々と事情があってな。レニを放っておくわけにはいかないんだよ」

「事情って何?」

「それは……色々あるんだよ。家族みたいなものなんだから」

 レニを一人前の冒険者にしなければならない直接的な事情は、もちろんない。というかレニを一人前にする必要性もあまりない。

 だから事情というのは、レニを引きこもりにさせては心身の健康によろしくない、ということになる。

 などとユーティに言ったら「なら街の仕事でもさせればいいでしょう?」と言われそうなので黙っておいたが。オレがついていないと、なんの仕事も出来ないことは自明だし。

 それにレニをパーティから外したところで、今のオレにはやることがないのだ。裏ワザによって、攻略可能なダンジョン階層はすべて攻略済みなのだから。

 だがもちろん、裏ワザのことを言えるはずもないので、オレは、これ以上突っ込まれないように話題を変えた。

「レニのことじゃないとしたら、なんの用件なんだ?」

「………………」

 ユーティは、オレの目をじっと見つめてから言ってきた。

「ジップ──わたしたちのパーティに入って」
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